2013年1月15日火曜日

北海道の(超簡易)電力需要分析

 昨年夏には東京電力の需給分析を行った。北海道電力については、同様のデータが入手可能なので、分析してみる。東京電力についてはnonuke2011: 電力需給2009-11について  (2011/7/14現在のデータに基づく) を参照。


1.データ
下記の二つのデータを用いて、北海道電力の需給状況をみてみる。
(1)北海道電力 過去の電力使用状況データ   
 2009年以降の365日×24時間毎の需給実績
 1976年以降の各地の365日×24時間毎 の気象データ
(2)については札幌を指定。24時間毎のデータも入手可能だが、指定するのが面倒なので、1日毎のデータを用いる。
(1)(2)とも2009/7/1-2012/10の期間を分析対象とする。


2.概況
 上記期間での各年の最大需要電力量(ピーク電力需要量 万kW)は下記の通り。

 北海道電力の場合、以下のように冬期の夕方に生じている。
2009/12/21 17:00  Mon     565.6 
2010/2/5 17:00  Fri       568.6 
2011/1/12 17:00  Wed     578.8 
2012/2/2 17:00   Thu    568.4 


 これに対して、東電では下記のように夏の昼間に生じている。北電の電力需要量は東電の1/10程度である。

 2009/7/30 Thu 14:00       5450
 2010/7/23 Fri   14:00       5999
 2011/2/14 Mon 17:00       5150


・需要量の多い時間帯
 上述の最大需要発生日について、時間帯別の需要量をまとめた。北電では、15-18時ごろにピークがあることがわかる。東京電力については、昼間にピークがあり、北電と比べるとボトムとピークで需要量が2倍程度異なっている。これに対して北電はピークはあるものの、東電と比べるとボトムとピークの差は小さくなっている。これは、夜間でも暖房維持などのために利用されているためと考えられる。
図 各年のピーク電力量を記録した日の時刻別電力需要量(北海道電力:冬期)


図 各年のピーク電力量を記録した日の時刻別電力需要量(東京電力:夏期)


 ・気温と電力需要
 北海道電力について、3年間の気温と電力需要の関係をプロットした。明らかに気温が下がると需要量が増加していることがわかる。→暖房に電気を用いるのは無駄
 原発では発生した熱の4割程度しか電気に変換できない。つまり、6割の熱は捨てている。送電によるロスもある。火力発電所でも65%程度の効率。熱と電気の供給を組み合わせたコジェネなどを推進すべき。
図 気温(赤)と電力需要(黒)の関係(北海道電力)

 各日について、最高気温と最高需要電力量をプロット、年によって色分けした。各年とも15度を境にしたV字カーブ。夏は冷房、冬は暖房用に電力が消費されていることが推察できる。
 北電についてみると、高温度側については、需給電力量が低くなっており節電がきいていることがわかる。一方、低温側については低下しておらず、節電されていないことがわかる。
参考までに東電も示した。北電と比べるとカーブが急であることがわかる。

図 最高気温と最高需給電力量(北海道電力)




図 最高気温と最高需給電力量(東京電力:2011年は7月までのデータ)


3.北電冬期の電力需要量の推定
 上記のように夏と冬では電力の消費パターンが異なるので、2009,10,11年の11月から2月のデータを用いて、各日の最大需要電力を説明するモデルを推定する。前述のように電力量は1時間毎の値が得られているが、気象データについては1日の平均、最高などしか入手していない。このため、各日の最大電力を従属変数とする。現在、供給量が十分かが問題なので、ピーク電力量の規定要因を分析することには重要な意味がある。

・各種の要因が作用すると考えられるが、入手もしくは予想値を設定しやすい変数を用いることとする。
 気象データ  最低気温、風速、積雪量
 暦データ   年、月、曜日 2011/3/11後 ダミー変数
 
・結果
 モデルのあてはまりは、修正R2=0.847と単純なモデルにしては良好。下が推定結果。統計的に0でない(0という帰無仮説が棄却された)係数には*がついている。
 最低気温が1度下がると電力需要量は3.38万kW増加する(最低気温はマイナスなので、マイナスの係数を乗じると需要量は+)。
 積雪が1cm増加すると1.00万kW増加。
 3/11の震災以降平均して電力需要は8.88万kW減少している。
 1月を基準とすると、2月は需要量が6.8万kW増加。
 日曜を基準にすると、平日は需要量が増加。特に木曜は32万kW増加。
 時間帯では16時が+64万kw。
  参考までに東電は1度気温が上がると電力需要量は90.75万kW増加。

表 最大需要電力量についての回帰分析の結果

  推定値 標準誤差 t値 p値 有意水準
切片 426.18 7.62 55.90 0.00 ***
最低気温 -3.38 0.20 -17.28 0.00 ***
積雪量 1.10 0.14 7.97 0.00 ***
2011/3/11以降ダミー -8.88 2.61 -3.40 0.00 ***
2010年ダミー[2009年基準) 2.29 1.56 1.48 0.14
2011年 4.98 2.26 2.21 0.03 **
2012年 7.55 3.34 2.26 0.02 **
2月ダミー(1月基準) 6.78 2.08 3.26 0.00 ***
3月 -12.34 2.32 -5.31 0.00 ***
10月 -21.97 3.43 -6.41 0.00 ***
11月 -14.73 2.82 -5.23 0.00 ***
12月 0.12 2.32 0.05 0.96  
月曜ダミー(日曜基準) 28.98 2.26 12.81 0.00 ***
火曜 30.10 2.28 13.20 0.00 ***
水曜 30.53 2.31 13.21 0.00 ***
木曜 32.13 2.28 14.06 0.00 ***
金曜 27.63 2.30 12.04 0.00 ***
土曜 12.85 2.17 5.91 0.00 ***
18時(1:00基準) 40.36 7.59 5.32 0.00 ***
17時 53.03 7.60 6.98 0.00 ***
16時 64.95 8.79 7.39 0.00 ***
2時 57.32 7.96 7.20 0.00 ***
3時 57.66 8.72 6.61 0.00 ***
R2 0.852
Adjusted R2 0.847


・このモデルからの最大需要量の予測
 このデータでの最低気温-10。7度。最大積雪量32cm。需要が最も大きくなる2月の木曜16時を想定して、上の推定式を用いると600万kW。上述の実績値を上回る値となった。
 夏は冷房需要なので、最高気温と最大電力が一致するが、冬の場合は最低気温は夜間(みんな就寝中)であり、電力需要が一致しないのでずれがあると考えられる。
 ここでは1日単位で分析したが、24時間データを使えば、より妥当な予測ができるはずである。

参考)2013年1月15日の実績などは下記の通り。
 http://denkiyoho.hepco.co.jp/forecast.html
2013年1月15日(火)のでんき予報。節電にご協力いただき、ありがとうございます。皆さまのご協力により、電気の供給は、比較的安定した状況となりそうです。