2021年4月7日水曜日



  『科学』 2021年4月号

濱岡 豊「COVID-19 対策の諸問題(3) これまでの施策の定量的評価

サポートページ

 白黒だったグラフのカラー版、関連研究の表、脚注のURL、参考文献。草稿からなので、校正されていませんが公開します。引用される際は論文を参照して下さい。


図 タイトル、注や出所などは同論文をご参照下さい。







脚注類

連番が失われています。URLのみ利用下さい。

[1] https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16920.html

[1] このサイトではCovid-19に関して、210ヵ国の陽性者数、死亡者数、90ヵ国の検査データを公開している

https://raw.githubusercontent.com/owid/covid-19-data/master/public/data/owid-covid-data.csv

日本の検査データについては欠損値が多いため厚労省のオープンデータページから取得した。

[1] 感染者の一部が検査によって陽性者として見いだされる。以下、検査によって見いだされた者を「陽性者」、そのうち厚労省のデータについては「患者」、モデルや概念におけるこれらを包含するすべてを「感染者」と呼ぶ。

[1]グラフをみると直線状の関係がある。縦横軸とも常用対数を取っているので、log10(死亡者数)=βlog10(陽性者数)という関係があることになる。

[1] WHO2月末に公表した中国でのCovid19報告書では輸入症例が生じている国に対して、症例の発見、検査、隔離を優先すべきであること、感染連鎖を把握するためにサーベイランスを拡張することなどを推奨したWHO(2020),p.21。またWHO事務総長のTedros氏もOVID-19対策として検査、隔離、追跡調査の重要性を指摘してきた。WHOの疫学Bonita, Beaglehole and Kjellström(2006), p.152.でも「サーベイランスは,疫学的活動にとって不可欠」であり、「個別もしくは集団発生症例を検出する。」「発生した症例の公衆衛生学的影響と動向を見積もる。」「疾病の原因となる要因を検査・測定する。」「予防対策,介入戦略,保健政策の変更などの効果やインパクトをモニターし評価する。」「必要な医療的対策を計画し提供する。」ために実施されるとしている。

[1] スエーデン、ドイツ、中国なども興味深いが、このサイトでは日次の検査データ公開されていない。

[1] 経路判明、不明は2020327日以降公開。ここでの陽性者数はこれ以降の人数。

[1] 「事務連絡:新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領」の改定について

https://www.mhlw.go.jp/content/000717197.pdf

[1] 下記の記事では「複数の保健所によると、昨年12月ごろからの感染者増で、事実上追い切れないケースが続出。23区のある保健所の所長は前から濃淡は付けている。通知によって変わったことはない。保健所によってはすでに全然やっていなかったようだ』」としている。なお、同記事では、都のモニタリング会議メンバーを務める国立国際医療研究センターの大曲氏の追跡調査を縮小すれば、全体の感染者に占める不明者の割合は上がるはずという解説を紹介している。移動度の高い若者などを対象からはずし高齢者施設などに限定すれば経路不明率は低下するはずであり、実際そうなっている。

東京新聞「東京のコロナ感染者急減、積極的疫学調査縮小したから?専門家は「無関係」

202127 」 https://www.tokyo-np.co.jp/article/84483

[1] NHK 感染経路調査は対象再拡大へ

https://www3.nhk.or.jp/shutoken-news/20210227/1000060906.html

[1] 厚労省「新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/cocoa_00138.html

[1] 新型コロナウイルス接触確認アプリ(COCOA)の陽性者登録のお願いについて (再周知) 令和2 12  16 日 

https://www.mhlw.go.jp/content/000706763.pdf

[1] Appleのデータは20201月から公開されているが、Googleは同215日以降のデータのみが公開されている。Appleは乗り換え、ドライブ、ウオーキング別にモビリティデータを公開しているうち乗り換えのデータを用いることとした。

[1] RのライブラリerersystemfitARで推定した。道具変数としては3つの式における外生変数を用いた。

[1] そもそも、プロ野球の観戦者に感染リスクを高める可能性がある実験を行うのであるから、倫理審査を受けてから行うべきである。神奈川県および横浜ベイスターズに問い合わせたところ、「感染しないための技術が実用的に普及することを確認する『技術実証』であり倫理審査は必要ないと判断しているとのことであったが、詭弁である。

[1] 新型コロナウイルス感染症対策専門家会議による「新型コロナウイルス感染症対策の状況分析・提言」2020年4月1日版では次のように述べている。

「世界各国で、『ロックダウン』が講じられる中、市民の行動変容とクラスター早期発見・早期対応に力点を置いた 日本の取組(「日本モデル 」) に世界の注目が集まっている。新型コロナウイルス感染症対策専門家会議(2020b),p.11」。このように、「ロックダウンをせず」「市民の行動変容に依存し」「クラスターを重視する」こと日本の取り組みの特徴としている


参考文献リスト

Bonita, R., R. Beaglehole, and T. Kjellström (2006), Basic Epidemiology 2nd Edition.: 木原雅子、木原正博監訳『WHOの標準疫学』三煌社, 2008http://whqlibdoc.who.int/publications/2006/9241547073_jpn.pdf.

 

Ferretti, Luca, Chris Wymant, Michelle Kendall, Lele Zhao, Anel Nurtay, Lucie Abeler-Dörner, Michael Parker, David Bonsall, and Christophe Fraser (2020), "Quantifying Sars-Cov-2 Transmission Suggests Epidemic Control with Digital Contact Tracing," Science, eabb6936.

 

Linton, N. M., T. Kobayashi, Y. Yang, K. Hayashi, A. R. Akhmetzhanov, S. M. Jung, B. Yuan, R. Kinoshita, and H. Nishiura (2020), "Incubation Period and Other Epidemiological Characteristics of 2019 Novel Coronavirus Infections with Right Truncation: A Statistical Analysis of Publicly Available Case Data," J Clin Med, 9 (2).

 

WHO (2020), The Report of the Who China Joint Mission on Covid-19 Final Report: WHO https://www.who.int/docs/default-source/coronaviruse/who-china-joint-mission-on-covid-19-final-report.pdf accessed 2020/02/29.

 

国立感染症研究所・感染症疫学センター (2021), "新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要領(202118日版)," https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/corona/COVID19-02-210108.pdf.

 

濱岡豊 (2020a), "Covid-19 対策の諸問題(1) 日本の特異性," 科学, 90 (10), 877-86.

 

---- (2020b), "Covid-19 対策の諸問題(2) 積極的疫学調査という名の消極的な調査への批判的検討," 科学, 90 (11), 978-98.