ラベル パブコメ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル パブコメ の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2021年10月4日月曜日

エネルギー基本計画(案)に対する意見の募集(~2021/10/4)へのコメント

 半角カナは受け付けないというので、すべて全角に変換して投稿。

 上記のリンク先から、すべてのpdfをクリックして、最下部をチェックしないと投稿画面にいけないことに注意。

 

エネルギー基本計画(案)には、以下のような問題があり、特に原子力の部分については書き直す必要があある。策定過程自体が偏った委員、議論による。まずは、これまでの誤りを認めた上で、謙虚に政策立案体制を組み直し、正しい科学的認識に基づいて議論すべきである。

 

以下、冒頭にある数字は記載されている行番号である。

 

1.これまでの政策の誤りを自覚、認めて改めるべき


 

4193 「7.国民各層とのコミュニケーションの充実  の章は、


4195 (1)エネルギーに関する国民各層の理解の増進

4259 (2)政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実 

 

 からなっている。前者については、国民の理解が不足しているから教えるという立場である。しかし、国民は原子力の安全性、費用の高さ、推進してきた政府、官庁、事業者などには技術的、人格的信頼がないことを正しく理解し、その結果として多くの世論調査が示すように原子力に反対する者が多数となっている。

 このことをまったく理解しておらず、あたかも自らの方が正しいとする姿勢自体が誤りである。まずは、これまでの下記のような政策の失敗を認めることからはじめるべきである。

 

 市場性を無視した原子力推進

津波の予見性を無視するなど甘い規制が大きな要因である福島核災害

成立しない核燃料サイクル

放射性廃棄物の蓄積

原発の推進により太陽光発電パネル、半導体など、競争力をもっていた産業の衰退を招いた。

地方に原発立地、補助金を与えることによって、地方の自律性を失わせ、原発なしでは成り立たない地方経済を固定化した。

 

4259 (2)政策立案プロセスの透明化と双方向的なコミュニケーションの充実 

 においてはもっともらしいことが述べられているが、例えばこの基本計画を策定する委員会の委員構成は明らかに原発推進側に偏っている。エネルギー、原子力関連の委員はいずれもそうである。推進、反対側をバランスよく入れた委員構成とすべきである。

汚染水については、海洋放出の方法の詳細は議論せず、いきなり閣議決定。その後の計画では事故前の基準を下回ることを強調しているが、実績としては事故前の10倍の汚染水を放出するようである。さらに、そのような多量の放出をおこなっても30年間はかかる。相変わらず、このような重要な情報を秘匿した不公正な議論が行われている。過去に繰り返されてきた原発推進者による偏った議論の結末である本計画は破棄すべきである。

 

 このように過去の反省に基づかず、推進者に偏った委員によって提案された本計画(案)は、稼働率70%とこの10年の原発の実績からまったくかい離した仮定でコスト計算されている。さらに過去に失敗してきたオメガ計画、高速増殖炉、核燃料サイクル、さらには核廃棄物の生成という点では、これまでの原発とまったく同じ問題のあるSMRなどの開発も述べられている。

 実現性のない計画であり、これまでの反省をおこなうところからやり直すべきである。

 

 

 

2.福島の現状を踏まえた計画にすべき

 福島に関しては、下記のように実現性のない廃炉40年計画にこだわっている。

 

230  12月 廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議決定)に基づき、2041年から2051 年の廃止措置完了を目標

283  さらに、汚染水からトリチウム以外の核種を環境放出の際の規制基準以下まで浄  化処理したALPS処理水については、 

 

 福島第二原発の廃止ですら40年かかるのであり、あと30年間で福島第一を廃炉にはできない。圧力容器には影響のなかったTMIですら廃炉までに30年以上かかった。デブリの取り出しも、技術的には不可能であるし、万が一取り出したとしても格納する場所もない。実現不可能で無駄な努力はやめて現場での長期保管に切り替えるべきである。

汚染水の放出の検討の際には、あと数年で敷地がなくなるとしたが、その後の計画によると事故前の実績を超える量を放出しても30年かかる。短期での解決は無理であるコトを前提にすれば、周辺の民有地の買収、長期貯蔵タンクの設置などの方が現実的である。

 

 

3.原子力の限界はあきらか。ただちにやめるべき。

下記のように、いつまでも原子力に執着している。

 

758経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限 り原発依存度を低減する。 

 

 福島核災害後、原発による電力の供給割合は大きく低下し、2014年はゼロであった。その前後は1%程度、直近でも6%程度である。この間も経済成長はプラスであった。このように原発なしでも経済的には問題ないことは日本で経験済みである。

 

2169  原子力事業者は、高いレベルの原子力技術・人材を維持し、今後増加する廃炉を 円滑に進めつつ、東京電力福島第一原子力発電所事故の発生を契機とした規制強化 

 

とあるが、原子力人材の劣化は 1980年代以降の課題である。それ以降、改善されず質の低い人材によって担われてきた。原子力工学科の人気は低下し、廃止されてきたことからも明らかである。このような人材の長期的な劣化が福島原発災害の遠因であり、その後の対応もできなかったという直接的な原因でもある。日本の原子力業界の人材の質の低さを自覚した撤退戦略を描くべきである。

 

2132  原子力事業者は、二度と原子力事故は起こさないとの強い意思を持ち、原子力の リスクを適切にマネジメントするための体制を整備するとともに、確率論的リスク 

 

意思だけでは現実の事故には対応できないことは明らかである。その後の東電は福島第一に限定しても、つながっていない排気筒、こわれた地震計の放置、ALPS装置の排気フィルタほぼ全壊のまま稼働など、ずさんな運営を行っており、原発を稼働させる能力はない。

 

1183 5熱

1186 燃料転換などにより、更に熱を効率的に利用する必要がある。熱の利用は、個人・

1187 家族の生活スタイルや地域の熱源の賦存の状況によって、様々な形態が考えられる

 

これはいわゆるコジェネのことだが、原発のような遠隔立地電源は熱は単に捨てるしかなく、非合理的な電源である。

 

このように経済的、人材的、事業者や政府の能力、意図の観点から見ても原子力を進めることはリスクしか無い。これ以上、核廃棄物を生じさせないためにも、さらには前述のような見込みのない無駄な研究開発、投資をおこなわないためにも、ただちに原発を放棄すべきである。

 

 

4.資源消尽型の社会からの脱却、海流発電開発など、海に囲まれた日本の強みを活かした再エネの振興

 

 下記の節では、せっかく低温で固化されたメタンを取り出して燃焼、CO2を発生させることが述べられている。これは愚策である。さらに、鉱物資源についても述べられているが、エネルギー基本計画とはあまり関係がないトピックである。JOGMECの存在意義を強調するためである。計画から削除するだけでなく資源消尽型の社会から脱却すべきである。特に、海洋等におけるエネルギー の節はあるが、日本で極めて有望なポテンシャルがあるる潮力発電をまったく無視している。潮力を利用した発電こそ開発すべきである。

 

2675  (9)エネルギー安定供給とカーボンニュートラル時代を見据えたエネルギー・鉱 物資源確保の推進 

 

2859 水素・アンモニアの原料としての利用も視野に、引き続きメタンハイドレートを含む国内資源開発を推進することが重要である。このため、メタンハイドレートについては、「海洋基本計画」(2018年5月閣議決定)に基づき策定さ

 

2817 6鉱物資源の確保

2818 鉱物資源は、あらゆる工業製品の原材料として、国民生活及び経済活動を支える

2819 重要な資源であり、カーボンニュートラルに向けて需要の増加が見込まれる再生可

 

 

5.過度の中国脅威論、政策の失敗の責任転嫁

 

 下記のように中国の脅威を強調しているが、中国が台頭する前、太陽光パネルは日本企業が高いシェアをもっていた。それが競争力を失ったのは、原発にこだわって、太陽光の導入制度を整備しなかった政府、特に経産省の失策である。原発にこだわった東芝は不正会計を重ね、半導体や医療機器という強みと将来性のある分野を売却するに至った。現在は日本のメーカーの競争力がある蓄電池も、他国と比べて再生エネルギーへの注力が遅れている日本での導入は遅れており、競争力が失われる可能性が高い。

 

 440  一方で、太陽光パネルやEVを支える蓄電、デジタル化技術、原子力といった脱炭素化を担う技術分野での中国の台頭は著しい。我が国の太陽光パネルの自国企業による供給は、ここ数年で大きく低下し中国に依存する状況になってきている。 

452  深める中国の存在感が、域内の動きと絡まりながら、地政学的・地経学的な緊張状 態が継続している。

 

 これまでの産業政策の失敗を正しく認めるべきであり、他国のせいにすべきではない。

 

 

6. 細かい点

 以下のように細かい点でも認識の誤りが多い。基本計画自体やり直すべきである。

 

1096 原子力は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたっ

 →燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、これを制御できないため福島核災害がしょうじた。現在の技術水準では、このような巨大なエネルギーを制御することは困難であり、ただちに放棄するとすべき。

 

1097 て国内保有燃料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れ

→ウランは輸入。燃料加工も海外に依存しており、国内生産は維持されていない。再処理もできていない。この行は削除すべき。

 

 

1098 た安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時に

1099 は温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、長期的なエネル

1100 ギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。

→運転コストは稼働率70%というあり得ない設定である。実績にみあった数値とすれば高くなる。運転コストが低廉であるという記述は削除。

 運転中の温室ガスの排出はないかもしれないが、燃料の掘削などLCAでみれば温室ガスは発生している。さらに、運転にともなって放射性廃棄物が排出されていることを記述すべき。

 

1186 燃料転換などにより、更に熱を効率的に利用する必要がある。熱の利用は、個人・

1187 家族の生活スタイルや地域の熱源の賦存の状況によって、様々な形態が考えられる

1188 ことから、生活スタイルや地域の実情に応じた、柔軟な対応が可能となる取組が重

1189 要である。

→原発のような遠隔立地電源はコジェネにはまったく適しておらず、この点でも非合理的な電源である。

 

1582  る。また、再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、再生可能エネルギー賦課金は2 021年度において既に2.7兆円に達すると想定されるなど、今後、国民負担を 

→原発も電源交付金、研究開発、廃炉費用の電気料金への組み込み、福島の事故補償など様々な形で国民が負担していることを明示すべき。

 

 

2110 進してきた政府・事業者に対する不信感・反発が存在し、原子力に対する社会的な信頼は十分に獲得されていない。こうした中で、東京電力柏崎刈羽原子力発電所において発生した核物質防護に関する一連の事案を始め、国民の信頼を損なうような事案が発生した。

 

→汚染水については、海洋放出の方法の詳細は議論せず、いきなり閣議決定。その後の計画では事故前の基準を下回ることを強調しているが、実績としては事故前の10倍の汚染水を放出するようである。さらに、そのような多量の放出をおこなっても30年間はかかる。これらの重要な情報を秘匿した議論自体が無効であり、上述のように過去に繰り返されてきた原発推進者による、偏った議論の結末である。汚染水のみならず、圧力容器には影響のなかったTMIですら廃炉までに30年以上かかった。

 

 

2222 3対策を将来へ先送りせず、着実に進める取組

2223 これまで原子力を利用してきた結果、現在、約19,000トンの使用済燃料が

2224 存在し、管理容量の約8割に達している。原子力利用に伴い確実に発生するもので

→解決の目途もたたず、地元の分裂を生むのみである。

 まずはさらなる廃棄物を発生させないよう、原子力の稼働を停止すべきである。

 

 

 

2155  かつ円滑な対応、現場技術力の維持・向上を進める。加えて、原子力事業者自ら 

2156  が、立地地域との信頼関係の構築に向けて、日頃から地域に根差したリスクコミュ 

2157  ニケーションを積み重ねていくとともに、国も前面に立ち、科学的知見やデータ等 

2158  に基づき、エネルギーをめぐる状況や原子力を取り巻く課題等について丁寧な説明 

 

2395 に、各地域のオピニオンリーダーや多様なステークホルダーとの丁寧な対話活動を

2396 展開するなど、効果的な理解活動を推進する。福島第一原発の廃炉についても、廃

→これらの活動は、原子力を一方的に押しつけるPAになっており双方向のコミュニケーションではない、ただちにやめるべき。

 

 

2310 (ウ)放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発

2325 (b)核燃料サイクル政策の推進

→高速炉や、加速器を用いた核種変換など数十年の時間と数兆円の費用を投入してきたが、失敗したきた。その繰り返しは避けるべきである。

 

2378 4国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築

2379 (a)東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた広聴・広報

2380 東京電力福島第一原子力発電所事故から10年が経過した今もなお、国民の間に

2381 ある原子力に対する不信・不安は払拭できておらず、エネルギーに関わる行政・事

2382 業者に対する信頼は依然として低い。また、行政に対し

→避難計画は政府で審査のようなことをしているが、米国のように規制庁の審査対象とすべきである。問題があれば、NY近辺に設置されたが廃炉とされた例のように稼働は認めない。さらに、福島事故では広範囲に影響が及んだ。周辺150km以内の自治体の住民投票を行い、半数以上の賛成多数を得なければ設置できない方式とすべきである。

 

2434 IAEA等の場を活用し、国際社会との対話を強化し、迅

→IAEAに対して日本は51億円の分担金,12億円の拠出金(H28)を費やしている、いわゆる利益相反者である。このことを明示すべきである。https://www.mofa.go.jp/mofaj/ms/fa/page24_000750.html

そのような組織に汚染水の監視や被ばく量、事故の評価などの報告をさせても信頼は得られない。

 

 

3542  具体的には、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2021年7月)におけ 

3543  る経済再生ケースの経済成長率、国立社会保障・人口問題研究所による最新の人口 

3544  推計(中位推計)、主要業種の活動量の推計等を踏まえ、追加的な省エネルギー対策 

3545  を実施する前の需要を推計した上で、産業部門、業務部門、家庭部門、運輸部門に 

3546  おいて、技術的にも可能で現実的な省エネルギー対策として考えられ得る限りのも 

3547  のをそれぞれ積み上げ、最終エネルギー消費で6,200万kl程度の省エネルギ 

3548  ーを実施することによって、2030年度のエネルギー需要は280百万kl程度 

3549  を見込む。 

→需要を論じているが、どのようにして供給を見込んだのか説明がない。実績から見て原子力は課題に見積もられている。

 

3577 力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規

3578 制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合に

3579 は、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進め、国も前面に立ち、立地自治体

3580 等関係者の理解と協力を得るよう取り組み、電源構成ではこれまでのエネルギーミ

3581 ックスで示した20~22%程度を見込む 14。

→これまでに稼働したのは10基のみ。

  実現性のない数値を挙げても無意味である。

7基が許可されたが、東海第二、柏崎など稼働できそうもないものが大半である。

https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/nuclear/001/pdf/001_02_001.pdf

非現実的な数値である。

 

 

3674  <「グリーン成長戦略」における成長が期待される14分野> 

→潮力発電の開発を記述すべきである。

 

3910  画するとともに、国内においても、水素製造を含めた多様な産業利用が見込まれ、 

3911  固有の安全性を有する高温ガス炉をはじめ、安全性等に優れた炉の追求など、将来 

→水素は高温ガス炉以外でも精算可能である。放射性物質を発生させる原発への依存はやめるべきであり、高温ガス炉の記述は削除すべきである。

 

918  具体的な研究開発を進めるに当たっては小型モジュール炉や溶融塩炉を含む革新 

3919  的な原子炉開発を進める米国や欧州の取組も踏まえつつ、国は長期的な開発ビジョ 

→SMRも放射性物質の発生低減にはなんのメリットもない。

 

 

3921  場による選択を行うなど、戦略的柔軟性を確保して進める。また、核融合エネルギ 

3922  ーの実現に向け、国際協力で進められているトカマク方式のITER計画や幅広い 

3923  アプローチ活動については、サイトでの建設や機器の製作が進展しており、引き続 

→ITERは原型炉であり、発電機能はもたない。さらに、これまでの

 

3933  8半導体・情報通信産業 

3934  情報の利活用、デジタル化が急速に進展する中、カーボンニュートラルは、製 

3935  造・サービス・輸送・インフラなど、あらゆる分野で電化・デジタル化が進んだ社 

→エネルギー基本計画との関連が薄い。削除すべき。

 

 

193 7.国民各層とのコミュニケーションの充実 4194 

4195 (1)エネルギーに関する国民各層の理解の増進 4196 

→国民は正しく理解している。現状の理解が足りないのは政府、国である。

 正しい情報、理解に基づく政策を立案する市民参加型の政策立案体制の構築をまずは目指すべきである。

 そのためには、まずは原子力関係者に偏った各種委員の構成をみなおすべきである。

 

 

2432 (c)世界の原子力平和的利用と核不拡散・核セキュリティへの貢献

 日本が原発をやめることが最大の貢献。上述のように核兵器禁止条約に署名すべき。

 

 

以上

2020年7月31日金曜日

福島第一原発からの汚染水(多核種除去設備等処理水)の取扱いに関する意見


パブコメ 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する書面での意見募集に投稿した内容。

半角カナは受け付けられないので、すべてを全角に変換して投稿した。


福島第一原発からの汚染水(多核種除去設備等処理水)の取扱いに関する意見

 

2020/7/31

濱岡 豊

hamaoka@fbc.keio.ac.jp

1.総論

 以下の理由により「海洋放出案は不適切であり、タンクの設置による長期管理が現実的である。」

 以下、その理由をコメントする。括弧内のページは多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(2020)の該当ページである。

2.各論

1)現実的な期間の設定

 議論の前提として、「冷温停止を達成した2011 12 月から30 年~40 年で廃止措置を完了することを目標としており(p.12)」「中間貯蔵開始後30 年以内に、福島県外での最終処分を完了するための必要な措置を講ずることを前提(p.12)」にみられるように、40年間を目標としている。しかし、東京電力は福島第二原子力発電所の廃止ですら1基あたり30年間かかると想定している[1]

 原発災害から約10年経過したが、溶融燃料の取り出し、保管方法など技術的、社会的に未解決であり、40年間で解決できる可能性は皆無である。チェルノブイリでは100年間は閉じ込めるNew Safe Confinementを構築した。福島原発についても100年レベルを想定した実現性のある計画に見直すべきである。

 「こうした状況に鑑みれば、タンク保管の継続については、設置効率を高めてきた標準タンクを用いて、敷地の中で行っていくほかなく、現行計画以上のタンク増設の余地は限定的であると言わざるを得ない(p.13)」のように、タンクの増設が不可能ともされているが、仮に100年間を想定した場合、原発周辺の土地利用については、国等による購入もしくは長期借り上などが現実的となり、土地利用の自由度も高くなる。 40年間という無責任な目標に基づく性急な議論ではなく、現実的で責任のある議論を行うべきである。

2)前提としての放射性物質と量、コストの確定

 「ALPS はトリチウム以外の 62 種類の放射性物質を告示濃度未満まで浄化する能力を有しているが(p.3)」とあるが、62種類では14Cなど重要な核種が無視されている[2]。ロンドン条約に関しては295核種について検討された[3]

 さらに、汚染水処理後も濃度基準を超える処理水が保管されているが、それらの試験的な再処理を9月から行うことが730日になって発表された。残留する放射性物質の種類、量を確定させなければ、それの保管、排出、費用を議論できるはずもない。

 

3)放射性物質排出の総量管理:事故前以前のレベルに抑制すべき。

 「トリチウムは、原子力発電所を運転することに伴い国内外の原子力発電所でも発生している(p.15)。」のように、他の原発などからの放出量が多いことを言い訳にしているが論外である。福島第一原子力発電所の事故前の放射性液体廃棄物の放出実績をみるとCsCoIなどは検出されず、3のみで5.9×109Bqであった(平成22年度 第1四半期)。年間放出管理目標値についても3のみ設定されており2.2×1013 Bqであった[4]

 福島原発事故によって主要な放射性物質だけでも133Xe:11000 PBq131I:160 PBq、 134Cs:18 PBq137Cs:15PBq などが放出された[5]P(ペタ)1015乗であり、ここで議論している兆=1012乗の1000倍である。それだけの環境負荷を与えただけでなく、その後も福島原発からは年間5Bq程度が放出されている[6]

 「なお、水蒸気放出に係るトリチウムの放出管理の基準値は定められていなかった。また、福島第一原発事故後、2012 11 月に、福島第一原発が特定原子力施設に指定され、号機から4号機の放出管理目標値や放出管理の基準値は定められていない。(p.19)」とあるが、基準を設定しこれら含めて総量管理すべきである。

 福島原発からはトリチウム以外に多くの核種が放出されているのであり、トリチウムの年間排出量は、事故前の年間排出量よりも低い水準に保つべきである。それを上限とすると、長期間かけた海洋放出は非現実的である。

4)風評ではなく実害と捉えるべき

 「風評被害は、安全が関わる社会問題(事件・事故・環境汚染・災害・不況)が報道され、本来 『安全』とされる食品・商品・土地・企業を人々が危険視し、消費や観光をやめることによって引き起こされる経済的被害であると考えられ、放射線の影響による直接の「事実上の損害」とは 区別して考えられる。(p.29)」とりているが、その例として、「日本各地で放射性降下物が確認され」た1954 年の第五福竜丸被爆事件を挙げており、風評被害を誤った解釈している。放射性降下物が確認されたのであるから、健康などへの影響という実害を心配するのは当然である。これを風評として扱うこと自体が根本的な誤りである。

 なお、各案の比較に、風評対策の費用が含まれていない。「風評払拭・リスクコミュニケーションの強化 」のため、R2年度だけでも、福島県農林水産業再生総合事業として47億円、観光復興関連事業38億円が要求されている。海洋放出するとこれらの費用が増大することは確実であり、それを考慮したコスト評価をすべきである[7]

 

5)選択肢の公正な比較の必要性:長期タンク保存の優位性

「表5.各処分方法の社会的影響の特徴(p.24)」では、地層注入・地下埋設を同一視しているが、前者は液体そのまま、地下埋設はタンクを埋設する。後者については「地下からの漏えいによる汚染が懸念される」可能性は極めて低い。

 例えばJOGMECのページを漏洩で検索しても、石油備蓄タンクからの石油の漏洩に関するものはない[8]。特に苫小牧東部国家石油備蓄基地は、2018年北海道胆振東部地震によるタンクへの被害は報告されていない。

 さらに「地下埋設については、固化による発熱があるため、水分の蒸発(トリチウムの水蒸気放出)を伴うほか、新たな規制の設定が必要となる可能性があり、処分場の確保が課題となる(p.25)」。とあるが、固化による発熱が問題となるのであれば、石油備蓄タンクの方がよほど危険なはずである。また、新たなにどのような規制が生じるのかも不明確である。

 これらの石油備蓄基地規模のタンクに長期保管する技術は確立しており、タンクに保管するという原子力市民委員会の提案[9]には高い合理性がある。

 「こうした社会的な影響については、心理的な消費行動等によるところが大きいことから、その影響量について、一定の仮定のもとに見積もることはできるものの、総合的に大小を比較することは難しいと考えられる。(p.25)」とあるが、この程度の影響はCVMなどで一定の精度で評価できる。影響をうける人数を考慮すれば、全世界に影響が広がる海洋、大気が最も影響が大きく、タンク内長期保管がもっとも小さいことは自明である。

 

6)漁業者や市民の意見の反映

 「135 名の方から意見をお伺いした。意見としては、主に、タンクに保管されているALPS処理水の安全性についての不安、風評被害が懸念されるため海洋放出に反対など、ALPS処理水の処分に関して、様々な懸念点をいただいた。(p.8)」とあるが、135名のほとんどが海洋放出に反対であった[10]

 一方で、20204月以降、多核種除去設備等処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場 として、5回を開催したが、どのようにしてこれら参加者を選んだのかが不明である。海洋は日本の国内、世界につながっている。経産省の選んだ特定の者ではなく、市民、世界からも広く母意見をきくべきである。なお、5限られた出席者の中でも漁業者は明確に反対している。漁業者や市民の意見を無視すべきではない。

7)海洋放出の問題点

 海洋放出には社会的影響が大きいだけでなく、小委員会報告でも「水蒸気放出では、ALPS 処理水に含 まれるいくつかの核種は放出されず乾固して残ることが予想され、環境に放出する核種を減らせるが、残渣が放射性廃棄物となり残ることにも留意が必要である(p.25)。」 とある。このように問題となる「ALPS 処理水に含まれるいくつかの核種」を海洋に放出することは不適切である。

8)放射線被ばくに関する知識のupdate不足

「(放射線の生体影響)確率的影響は線量の増大につれて発生確率が増すが、100mSv を下回ると統計的に有意な増加は見られなくなる(自然発生頻度の変動の範囲内となる)。(p.16)」とあるが、古く不適切な知見に基づく記述である。平均被曝量100mSv以下を分析対象として、有意な係数が得られている論文は多くある(例えば、Richardson et al.(2015)、 Leuraud et al.(2015)NCRPの最近のレポートでもこのことを認めている。“Most of the larger, stronger studies broadly supported an LNT model. Furthermore, the preponderance of study subjects had cumulative doses <100 mGy (NCRP 2018,p.6)”

 健康影響は極めて重大な問題であり、最新の知見に基づいて議論すべきである。

 

3.おわりに

 「海洋放出案は不適切であり、長期的に保管するタンクの設置による長期管理が現実的である。」ことを繰り返しておく。

 

参考文献

 

Leuraud et al. (2015), "Ionising Radiation and Risk of Death from Leukaemia and Lymphoma in Radiation-Monitored Workers (Inworks): An International Cohort Study," The Lancet Haematology, 2 (7), e276–e81.

 

Richardson et al. (2015), "Risk of Cancer from Occupational Exposure to Ionising Radiation: Retrospective Cohort Study of Workers in France, the United Kingdom, and the United States (Inworks)," Bmj, 351, h5359.

 

吉川肇子 (2018), "社会の危機に備える : 「想定」「記録」「警戒」," 科学, 88 (10), 980-86.

 

多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 (2020), "多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書," 

 

 



[1] 「他の廃炉プラントと同様、廃炉工程は1基あたり30年程度を見込んでいますが、福 島第一の廃炉と並行することを踏まえ、人的リソース配分等に十分配慮していく必 要があるため、全 4 基の廃炉を終えるには 40 年を超える期間が必要な見通しです。 」

https://www.tepco.co.jp/press/release/2019/pdf3/190731j0101.pdf

[2]あべともこ事務所「ALPS処理水の濃度に考慮されていない核種があることに関する質問主意書」http://www.abetomoko.jp/data/archives/234

[3] https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/004/004/attach/1267061.htm

[4]福島第一原子力発電所 放射性廃棄物管理状況(平成22年度 第1四半期放射性液体廃棄物の放出量  3H: 2.2×109 Bq

https://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/data_lib/pdfdata/bpe22a-j.pdf

[5] https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-02-02-05.html

  • [6]NHK 「福島第一原発 放射性物質の放出量が前年比2倍に」2019

「去年1月までの1年間の放出量は4億7100万ベクレルほどだったのに対し、ことし1月までの1年間の放出量は9億3300万ベクレルほど」https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/15071.html

[7] GAP認証の取得、海外を含む農林水産物の販路拡 大と需要の喚起など、生産から流通・販売に至るまで、 風評払拭を総合的に支援 (農林水産省、R2要求額:47億円。被災地の風評を払拭し、東北の観光 復興を実現するため、 (復興庁、国土交通省、R2要求額:38億円

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat8/sub-cat8-3/190830gaisanyoukyusanko.pdf

[8]事業所におけるボイラ給水施設の塩酸タンクからの塩酸漏洩はあるが、石油備蓄タンクに関する漏洩ではない。http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_06_000078.html

[9] 原子力市民委員会 原子力規制部会

ALPS 処理水取扱いへの見解」http://www.ccnejapan.com/?p=10445

[10]書面で提出頂いたご意見  https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/shomen_iken__.pdf

2020年2月7日金曜日

汚染土再利用へのパブコメ



2020/2/6 パブコメページから分割して投稿(半角カナは使えないことに注意。投稿の際は置換した)。その後、加筆訂正などしてメールにて提出。図は省略した。リンク先を参照されたい。

「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(案)」及び「環境大臣が定める者の告示(案)」に対する意見
2020/2/7
濱岡 豊
慶應義塾大学商学部
0)          パブコメの方法や法体系について
・省令での対応について
 後述するように、違反しても罰則がない。これは省令で対応することに起因すると考える[1]適切な管理をしなければ、住民への健康被害を生じる可能性のある問題であり、義務を課し、違反時の罰則も制定できる法律もしくは政令とすべきである
・資料について
資料の入手は、窓口(環境省環境再生・資源循環局環境再生事業担当参事官室)にて配付、もしくは郵送とある。ホームページで公開すべきである。

 以下、募集中[2]の標題省令などへの意見を示す。イタリックは同サイトで公開されている「除去土壌処分基準の改正に係る関係法令等の改正案の概要[3]」からの引用である。

1)汚染度について
福島県内における除染等の措置に伴い生じた除去土壌等については、「平成 二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の 事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措 置法基本方針」(平成23年11月閣議決定)において「可能な限り減容化を図るとともに、減容化の結果分離されたもの等汚染の程度が低い除去土壌について、安全性を確保しつつ、再生利用等を検討する必要がある。」
->「汚染の程度が低い」の定義がされていない。すべての前提であり、汚染の程度の低さを明示すべきである。なお、環境省廃棄物・リサイクル対策部「100Bq/kg と 8,000Bq/kg の二つの基準の違いについて[4]」 では、「100Bq/kg は「廃棄物を安全に再利用できる基準」であり、 8,000Bq/kg は「廃棄物を安全に処理するための基準」 」とある。再生利用を行うのであるから、当然、基準は100Bq/kgであることを明示すべきである


2)計画の実現性および放射性物質管理の原則
 また、平成 26 年 11 月に改正された中間貯蔵・環境安全事業株式会社法におい て「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要 な措置を講ずるものとする。」と規定されている。 中略 
県外最終処分に向けては、その最終処分必要量を低減することが重要であり、 除去土壌等に関する減容処理技術の開発、再生利用の推進等の中長期的な方針 として、平成 26 年4月に「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦 略」及び「工程表」を取りまとめ、これらに基づいて、除去土壌等の再生利用 の推進等に取り組んでいるところである。 
->「三十年以内に」と規定する理由が不明である その根拠を示し さらにその実現のための計画を明示すべきである。そもそも、放射性物質は集中管理が原則であり、それを県外に搬出することは、これまでの放射性物質の管理の体系とまったくそぐわない。 
そもそも、放射性物質を含む汚染物質であり、それを再生利用するということは 30年間での福島県外への搬出という法と反する。
 下記のようなQ&Aを想定しているが 、社会通念上、ここでいう「土壌」にはセシウムは含まれていないことを想定している それが含まれている土壌は放射性物質として扱うべきである この会社法を根本的に見直す必要がある
Q6.再生利用は実質的には最終処分になるのではないでしょうか。[5]
A6.土壌は本来貴重な資源ですので、最終処分とは区別して、再生資材の放射 能濃度の限定、覆土等の遮へい、飛散・流出の防止等の措置を講じた上で、 利用先を管理主体や責任体制が明確となっている公共事業等における人為的な形質変更が想定されない盛土材等に用途を限定し、適切な管理の下で、 再生資材を限定的に利用することを想定しています。 


3)不適切な実証実験
再生利用の取組については、福島県南相馬市及び同県飯舘村において実証事業を実施し、その安全性等について確認を行ったところであり、県外最終処分 に向けた再生利用の取組を安全かつ適正に進めるため、除去土壌の処分の基準 としての必要な規定を設けることとする。 
->南相馬での実証では「有識者検討会においても、再生利用について今回の手法において安全性を確認[6]とあるがせいぜい数年間の管理された限られた範囲での結果であり、大規模に適用すべきではない。
 上述のように今回の省令などに関しては、汚染度について明示されていないが、この実証実験においてもホームページをみる限りでは、実験に用いられた汚染土の濃度が示されていない。このような最も基本的な情報を開示しない実証実験の結果は信頼できない。
 そもそも空間線量率をみると「4月以前の除去土壌搬入・破袋開始前における測定値は、CS-134で2E-11~5E-11Bq/cm3 程度、CS-137 で5E-11~4E-10Bq/cm3 程度であった。」が、搬入後(2017/5/11-5/27)には それぞれ3.31 E-11~5.90E-11Bq/cm3 、2.8E-10~4.98E-10Bq/cmと上昇した[7]

最新の測定結果の時系列グラフをみても[8](P.1)、もっとも遠い固定点8(橙色)の空間線量は施工期間中0.04μSv/hであったが、施工後は0.06μSv/hと50%も上昇している

 施工後、盛土サイトから最も遠い固定点7、8においては空間線量率は0.06μSv/h程度だが、より近い固定点2もしくは3では0.08μSv/hと30%程度高くなっており、盛り土への再利用が空間線量率、つまり被曝量を増加させることは明らかである。


 なお、盛土上部(P.2)では0.05から0.06μSv/hとなっている。断面図をみると盛土は上部および側面共に50cmの健全土によって覆われている。盛土上部よりも離れている固定点2および3の方が線量が低いということはあり得ない。実験全体の信頼性が疑われる。
出所) ibid.

4)各論
以下、引用しつつコメントする。
2.改正等の内容 
(1)平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力 
発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案について 
中略
○ 除去土壌の再生利用は、次のように行うこと。 
 以下略

-> 汚染度の基準が明示されていない。
 国又は地方公共団体その他環境大臣が定める者とはどのような要件を満たしているのかが明示されていない。
 悪臭、騒音又は振動についての防御は記載されているが、被曝を防止することが明示されていない。これらは当然明示すべきである。

 次に掲げる事項の記録及び除去土壌の再生利用を行った位置を示す図 面を作成し、当該再生利用を行った場所の管理が終了するまでの間、保 存すること。 
 ・工事の計画及び設計に係る情報 
・再生資材化を行った除去土壌の数量及び事故由来放射性物質の濃度 ・土地の形質の変更に伴い生じる再生資材化された除去土壌の運搬及び 保管に係る計画 ・再生資材化を行った除去土壌ごとの再生利用を行った年月日 
・再生資材化を行った除去土壌を引き渡した担当者及び当該除去土壌の引渡しを受けた担当者の氏名並びに運搬車を用いて当該引渡しに係る運搬が行われた場合にあっては当該運搬車の自動車登録番号又は車両番号
・除去土壌の再生利用を行った場所の管理に当たって行った測定、点 検、検査その他の措置(規則第15条第11号の環境大臣が定める方法に より定期的に測定し、かつ、記録することを含む。) 
->実証実験では空間線量、排水中の放射性物質濃度を測定している。再利用するのであれば、当然、それを行わせるべきである。暗黙のうちに被曝量が低くなるように処理した汚染度を利用することを想定しているのであろうが、汚染度の基準も明示されていないため、測定によって確認することは必須である。

○ 除去土壌の再生利用を行うに当たっては、再生利用の用途に応じた必 要な厚さの土壌による覆いその他これに類する覆いにより除去土壌を覆 うとともに、当該必要な厚さを維持すること。
->どのように再利用されるのかが規定されていない。再利用の用途は限定すべきであり、明示すべきである。例えば2019年の台風19号による河川の堤防決壊の要因の一つは、越水により堤防が削られたことにある。堤防に再利用した場合には、当然、このような状況が生じ、放射性物質がさらに環境に放出されることとなる。
 再利用はおこなうべきではないが、万が一行う場合には、環境への再放出がおきない状況に限定し、かつ健全土による被覆ではなくコンクリートなどで完全に覆うべきである。このように施工、管理するとコストが上がるため、再利用は行うべきではないという当然の帰結となる。

○ 除去土壌の再生利用を行った場所内において除去土壌の掘削を伴う土 地の形質の変更をしようとする者は、当該土地の形質の変更に着手する 日の30日前までに、次に掲げる事項を記載した書面を環境大臣に届け出ること。 
・土地の形質の変更の施工に当たり周辺の生活環境に及ぼす影響につい て実施する調査の計画書 
・土地の形質の変更の施工に係る工事計画書 ・土地の形質の変更の施工方法を明らかにした平面図、立面図及び断面 図 
・土地の形質の変更の終了後における当該土地の利用の方法を明らかに 
した図面
->被曝量の予測値についても報告させるべき。単に届け出させるのではなく、許可制とすべきである。



 除去土壌の再生利用を行うに当たっては、再生資材化を行った除去土壌を引き渡した者及び当該除去土壌の引渡しを受けた者並びに当該除去 土壌の再生利用を行った場所を管理する者の間において、適切な役割分 担及び連携に関する事項の書面を作成し、当該再生利用を行った場所の 管理が終了するまでの間、保存すること。 
->管理はいつ終了するのかが明示されていない。汚染土壌にはセシウム以外にも微量かも知れないが核種が含まれている。それらを踏まえて充分な期間を管理させる必要がある。

○ 上記の1に規定する書類を作成したときは、速やかにその写しを環境 大臣に送付すること。 
2土壌等の除染等の措置等の委託の基準 法第40条第2項及び同第41条第2項の規定による委託の基準について、土 壌等の除染等の措置等の委託の基準として新たに処分((1)1に規定する除去土壌の再生利用に限る。以下2及び3において同じ。)を行う者を加える。
3除去土壌収集等及び除去土壌の処分を業として行うことができる者 法第48条第2項の環境省令で定める者について、新たに処分の委託を受け た者を加える。 

(2)(1)1の規定に基づき、環境大臣が定める者の告示案について

 特殊法人等(法律により直接に設立された法人若しくは特別の法律に より特別の設立行為をもって設立された法人のうち総務省設置法(平成 11年法律第91号)第4条第1項第9号の規定の適用を受けるもの、特別 の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政官庁の認可を要する 
法人又は独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。)
○ 国又は地方公共団体の出資又は拠出に係る法人


->全体的に違反した場合の罰則がなく、施工、管理もいい加減に行われる可能性が高い。基準の明示、用途や施工の厳格化、測定の義務化と懲罰的罰則の導入により被曝のリスクを最低限にすべきである。


5)結語
 はじめに述べたように、省令で対応すべき問題ではない。国民的な議論を行い、それに基づいて対策を考えるべきである。

以上


[1] 「省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。」(国家行政組織法第十二条3項)
[7] 実証事業実施場所における放射線等の測定結果(2017.6.20)
[8] 実証事業実施場所における放射線等の測定結果 2020年1月31日 http://josen.env.go.jp/chukanchozou/facility/effort/recycling/pdf/measurement_result_1912.pdf