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2024年7月18日木曜日

 

ICRP  一般大衆の内部被ばくにともなう線量係数パブコメ

Dose coefficients for intakes of radionuclides by members of the public: Part 2

 (こちらから(8/2まで))  ドラフト



要約 のGoogle翻訳- この報告書は、吸入および経口摂取による放射性核種の環境摂取 (EIR) について、一般市民の年齢依存の線量係数を示す一連の文書の 2 番目です。このシリーズは、Publication 56 シリーズの文書に代わるものです。改訂された線量係数は、改訂版Publication 100 ヒト消化管モデル (HATM) および Publication 130 ヒト呼吸管モデル (HRTM) のを使用して計算されています。血液に吸収された放射性核種の全身的生体動態を説明するモデルの多くにも改訂が加えられ、臓器や組織への取り込みと保持、および排泄のより生理学的に現実的な表現になっています。Publication 103 で導入された変更が実装されました。組織への等価線量の計算に使用される放射線加重係数、実効線量の計算に使用される組織加重係数、および実効線量の計算における性別平均による男性と女性の等価線量の個別計算です。参照ボクセル解剖学的計算ファントム (つまり、医療画像データに基づく人体モデル) は、臓器線量の以前の計算に使用された複合数学モデルに取って代わりました。線量計算は、Publication 107 の更新された放射性核種崩壊データを使用し、Publication 116 の放射線輸送処理を実装し、Publication 110 の人体参照解剖学的ファントムと Publication 143 の小児参照計算ファントムを使用することで改善されました。


 下記のPublの更新版。同じ核種でもIngestionとInhalationが別の冊子に分かれていたが、核種毎に両者をまとめた形になっている。今後Part 3などが追加されるはず。

  • ICRP Publication 56
    • Age-dependent Doses to Members of the Public from Intake of Radionuclides - Part 1  Download PDF
      • Dosimetric modelとBiokinetic model

  • ICRP Publication 67
    • Age-dependent Doses to Members of the Public from Intake of Radionuclides - Part 2 Ingestion Dose Coefficients Download PDF
    •  Biokinetic data  and Ingestion Dose Coefficients
      •  Sulpher --Radium

  • ICRP Publication 69
    • Age-dependent Doses to Members of the Public from Intake of Radionuclides - Part 3 Ingestion Dose Coefficients  Download PDF   
      • Biokinetic data  and Ingestion Dose Coefficients
      • Iron, Selenium, Antimony, Thorium, Uranium

  • ICRP Publication 71
    • Age-dependent Doses to Members of the Public from Intake of Radionuclides - Part 4 Inhalation Dose Coefficients  Download PDF   
    • Respiratory Tract Model
    •  Respiratory Tract Data and  Inhalation Dose Coefficients
    • Hydrogen, Carbon,, Curium
  •  
  • ICRP Publication 72
    • Age-dependent Doses to Members of the Public from Intake of Radionuclides - Part 5 Compilation of Ingestion and Inhalation Coefficients  Download PDF  
  •    係数の一覧表

  • ERRATA FOR PUBLICATIONS 66, 68, 69, 71, 72, AND 78



 算出のために用いられたモデルなど。


ICRP内部被ばくモデルについて参考になるもの

  •  これのPart I のドラフト (パブコメ終了)

Dose Coefficients for Intakes of Radionuclides by Members of the Public: Part 1   Draft Document   それへのコメント 




  ICRP 130 放射性核種の職業上の摂取  Download PDF         P130 Corrigenda   日本語

  • 栗原 治(2011)国際放射線防護委員会(ICRP)の 放射性核種の体内摂取に伴う線量評価モデル について,薬事・食品衛生審議会 食品衛生分科会放射性物質対策部会資料(平成23年5月13日)(こちらから)
  • 原子力学会誌 2021 年 63 巻 5 号 特集 放射性核種の摂取量の評価方法 (同氏の目次こちらから
  • Ⅰ.内部被ばくの体内動態モデル (関連するICRP 刊行物の一覧、動態モデルなど) PDF
  • Ⅱ.摂取量推定法の定式化 (統計的な推定手法の解説)   PDF
  • Ⅲ.モンテカルロ法等を用いた摂取量算定(ベイズ推定)  PDF

    • Task Group 95 Webinar

      • Presenting Report on Production of Dose Coefficients For the Assessment of Internal Exposure of Workers and Members of the Public  
      • 動画およびスライド。   https://www.icrp.org/page.asp?id=655
      • うち
        • Examples of New Dose Coefficients and Differences with Previous Recommendations  SLIDES のp.16-に  新旧の係数の比(New/old)のヒストグラム。大きくなっているものもあれば、小さくなっているものも。

    •  具体的にどのように変化したのかよくわからないので、Pu238の係数を並べておく。(そもそも、これらが旧、新で対応しているのかも不明。)
    古いものは臓器別に推定して実効線量係数を算出
    ICRP Pub56 ingestion   Download PDF   より。

    ICRP Publ. 71 Inhalation   Download PDF より。



    ドラフト版 Pu238ただしcompounds。プルトニウムの状態別  ドラフトより。




    2020年7月31日金曜日

    福島第一原発からの汚染水(多核種除去設備等処理水)の取扱いに関する意見


    パブコメ 多核種除去設備等処理水の取扱いに関する書面での意見募集に投稿した内容。

    半角カナは受け付けられないので、すべてを全角に変換して投稿した。


    福島第一原発からの汚染水(多核種除去設備等処理水)の取扱いに関する意見

     

    2020/7/31

    濱岡 豊

    hamaoka@fbc.keio.ac.jp

    1.総論

     以下の理由により「海洋放出案は不適切であり、タンクの設置による長期管理が現実的である。」

     以下、その理由をコメントする。括弧内のページは多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会(2020)の該当ページである。

    2.各論

    1)現実的な期間の設定

     議論の前提として、「冷温停止を達成した2011 12 月から30 年~40 年で廃止措置を完了することを目標としており(p.12)」「中間貯蔵開始後30 年以内に、福島県外での最終処分を完了するための必要な措置を講ずることを前提(p.12)」にみられるように、40年間を目標としている。しかし、東京電力は福島第二原子力発電所の廃止ですら1基あたり30年間かかると想定している[1]

     原発災害から約10年経過したが、溶融燃料の取り出し、保管方法など技術的、社会的に未解決であり、40年間で解決できる可能性は皆無である。チェルノブイリでは100年間は閉じ込めるNew Safe Confinementを構築した。福島原発についても100年レベルを想定した実現性のある計画に見直すべきである。

     「こうした状況に鑑みれば、タンク保管の継続については、設置効率を高めてきた標準タンクを用いて、敷地の中で行っていくほかなく、現行計画以上のタンク増設の余地は限定的であると言わざるを得ない(p.13)」のように、タンクの増設が不可能ともされているが、仮に100年間を想定した場合、原発周辺の土地利用については、国等による購入もしくは長期借り上などが現実的となり、土地利用の自由度も高くなる。 40年間という無責任な目標に基づく性急な議論ではなく、現実的で責任のある議論を行うべきである。

    2)前提としての放射性物質と量、コストの確定

     「ALPS はトリチウム以外の 62 種類の放射性物質を告示濃度未満まで浄化する能力を有しているが(p.3)」とあるが、62種類では14Cなど重要な核種が無視されている[2]。ロンドン条約に関しては295核種について検討された[3]

     さらに、汚染水処理後も濃度基準を超える処理水が保管されているが、それらの試験的な再処理を9月から行うことが730日になって発表された。残留する放射性物質の種類、量を確定させなければ、それの保管、排出、費用を議論できるはずもない。

     

    3)放射性物質排出の総量管理:事故前以前のレベルに抑制すべき。

     「トリチウムは、原子力発電所を運転することに伴い国内外の原子力発電所でも発生している(p.15)。」のように、他の原発などからの放出量が多いことを言い訳にしているが論外である。福島第一原子力発電所の事故前の放射性液体廃棄物の放出実績をみるとCsCoIなどは検出されず、3のみで5.9×109Bqであった(平成22年度 第1四半期)。年間放出管理目標値についても3のみ設定されており2.2×1013 Bqであった[4]

     福島原発事故によって主要な放射性物質だけでも133Xe:11000 PBq131I:160 PBq、 134Cs:18 PBq137Cs:15PBq などが放出された[5]P(ペタ)1015乗であり、ここで議論している兆=1012乗の1000倍である。それだけの環境負荷を与えただけでなく、その後も福島原発からは年間5Bq程度が放出されている[6]

     「なお、水蒸気放出に係るトリチウムの放出管理の基準値は定められていなかった。また、福島第一原発事故後、2012 11 月に、福島第一原発が特定原子力施設に指定され、号機から4号機の放出管理目標値や放出管理の基準値は定められていない。(p.19)」とあるが、基準を設定しこれら含めて総量管理すべきである。

     福島原発からはトリチウム以外に多くの核種が放出されているのであり、トリチウムの年間排出量は、事故前の年間排出量よりも低い水準に保つべきである。それを上限とすると、長期間かけた海洋放出は非現実的である。

    4)風評ではなく実害と捉えるべき

     「風評被害は、安全が関わる社会問題(事件・事故・環境汚染・災害・不況)が報道され、本来 『安全』とされる食品・商品・土地・企業を人々が危険視し、消費や観光をやめることによって引き起こされる経済的被害であると考えられ、放射線の影響による直接の「事実上の損害」とは 区別して考えられる。(p.29)」とりているが、その例として、「日本各地で放射性降下物が確認され」た1954 年の第五福竜丸被爆事件を挙げており、風評被害を誤った解釈している。放射性降下物が確認されたのであるから、健康などへの影響という実害を心配するのは当然である。これを風評として扱うこと自体が根本的な誤りである。

     なお、各案の比較に、風評対策の費用が含まれていない。「風評払拭・リスクコミュニケーションの強化 」のため、R2年度だけでも、福島県農林水産業再生総合事業として47億円、観光復興関連事業38億円が要求されている。海洋放出するとこれらの費用が増大することは確実であり、それを考慮したコスト評価をすべきである[7]

     

    5)選択肢の公正な比較の必要性:長期タンク保存の優位性

    「表5.各処分方法の社会的影響の特徴(p.24)」では、地層注入・地下埋設を同一視しているが、前者は液体そのまま、地下埋設はタンクを埋設する。後者については「地下からの漏えいによる汚染が懸念される」可能性は極めて低い。

     例えばJOGMECのページを漏洩で検索しても、石油備蓄タンクからの石油の漏洩に関するものはない[8]。特に苫小牧東部国家石油備蓄基地は、2018年北海道胆振東部地震によるタンクへの被害は報告されていない。

     さらに「地下埋設については、固化による発熱があるため、水分の蒸発(トリチウムの水蒸気放出)を伴うほか、新たな規制の設定が必要となる可能性があり、処分場の確保が課題となる(p.25)」。とあるが、固化による発熱が問題となるのであれば、石油備蓄タンクの方がよほど危険なはずである。また、新たなにどのような規制が生じるのかも不明確である。

     これらの石油備蓄基地規模のタンクに長期保管する技術は確立しており、タンクに保管するという原子力市民委員会の提案[9]には高い合理性がある。

     「こうした社会的な影響については、心理的な消費行動等によるところが大きいことから、その影響量について、一定の仮定のもとに見積もることはできるものの、総合的に大小を比較することは難しいと考えられる。(p.25)」とあるが、この程度の影響はCVMなどで一定の精度で評価できる。影響をうける人数を考慮すれば、全世界に影響が広がる海洋、大気が最も影響が大きく、タンク内長期保管がもっとも小さいことは自明である。

     

    6)漁業者や市民の意見の反映

     「135 名の方から意見をお伺いした。意見としては、主に、タンクに保管されているALPS処理水の安全性についての不安、風評被害が懸念されるため海洋放出に反対など、ALPS処理水の処分に関して、様々な懸念点をいただいた。(p.8)」とあるが、135名のほとんどが海洋放出に反対であった[10]

     一方で、20204月以降、多核種除去設備等処理水の取扱いに係る関係者の御意見を伺う場 として、5回を開催したが、どのようにしてこれら参加者を選んだのかが不明である。海洋は日本の国内、世界につながっている。経産省の選んだ特定の者ではなく、市民、世界からも広く母意見をきくべきである。なお、5限られた出席者の中でも漁業者は明確に反対している。漁業者や市民の意見を無視すべきではない。

    7)海洋放出の問題点

     海洋放出には社会的影響が大きいだけでなく、小委員会報告でも「水蒸気放出では、ALPS 処理水に含 まれるいくつかの核種は放出されず乾固して残ることが予想され、環境に放出する核種を減らせるが、残渣が放射性廃棄物となり残ることにも留意が必要である(p.25)。」 とある。このように問題となる「ALPS 処理水に含まれるいくつかの核種」を海洋に放出することは不適切である。

    8)放射線被ばくに関する知識のupdate不足

    「(放射線の生体影響)確率的影響は線量の増大につれて発生確率が増すが、100mSv を下回ると統計的に有意な増加は見られなくなる(自然発生頻度の変動の範囲内となる)。(p.16)」とあるが、古く不適切な知見に基づく記述である。平均被曝量100mSv以下を分析対象として、有意な係数が得られている論文は多くある(例えば、Richardson et al.(2015)、 Leuraud et al.(2015)NCRPの最近のレポートでもこのことを認めている。“Most of the larger, stronger studies broadly supported an LNT model. Furthermore, the preponderance of study subjects had cumulative doses <100 mGy (NCRP 2018,p.6)”

     健康影響は極めて重大な問題であり、最新の知見に基づいて議論すべきである。

     

    3.おわりに

     「海洋放出案は不適切であり、長期的に保管するタンクの設置による長期管理が現実的である。」ことを繰り返しておく。

     

    参考文献

     

    Leuraud et al. (2015), "Ionising Radiation and Risk of Death from Leukaemia and Lymphoma in Radiation-Monitored Workers (Inworks): An International Cohort Study," The Lancet Haematology, 2 (7), e276–e81.

     

    Richardson et al. (2015), "Risk of Cancer from Occupational Exposure to Ionising Radiation: Retrospective Cohort Study of Workers in France, the United Kingdom, and the United States (Inworks)," Bmj, 351, h5359.

     

    吉川肇子 (2018), "社会の危機に備える : 「想定」「記録」「警戒」," 科学, 88 (10), 980-86.

     

    多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会 (2020), "多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会報告書," 

     

     



    [1] 「他の廃炉プラントと同様、廃炉工程は1基あたり30年程度を見込んでいますが、福 島第一の廃炉と並行することを踏まえ、人的リソース配分等に十分配慮していく必 要があるため、全 4 基の廃炉を終えるには 40 年を超える期間が必要な見通しです。 」

    https://www.tepco.co.jp/press/release/2019/pdf3/190731j0101.pdf

    [2]あべともこ事務所「ALPS処理水の濃度に考慮されていない核種があることに関する質問主意書」http://www.abetomoko.jp/data/archives/234

    [3] https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/gijyutu/004/004/attach/1267061.htm

    [4]福島第一原子力発電所 放射性廃棄物管理状況(平成22年度 第1四半期放射性液体廃棄物の放出量  3H: 2.2×109 Bq

    https://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/data_lib/pdfdata/bpe22a-j.pdf

    [5] https://www.env.go.jp/chemi/rhm/h29kisoshiryo/h29kiso-02-02-05.html

    • [6]NHK 「福島第一原発 放射性物質の放出量が前年比2倍に」2019

    「去年1月までの1年間の放出量は4億7100万ベクレルほどだったのに対し、ことし1月までの1年間の放出量は9億3300万ベクレルほど」https://www.nhk.or.jp/politics/articles/lastweek/15071.html

    [7] GAP認証の取得、海外を含む農林水産物の販路拡 大と需要の喚起など、生産から流通・販売に至るまで、 風評払拭を総合的に支援 (農林水産省、R2要求額:47億円。被災地の風評を払拭し、東北の観光 復興を実現するため、 (復興庁、国土交通省、R2要求額:38億円

    https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat8/sub-cat8-3/190830gaisanyoukyusanko.pdf

    [8]事業所におけるボイラ給水施設の塩酸タンクからの塩酸漏洩はあるが、石油備蓄タンクに関する漏洩ではない。http://www.jogmec.go.jp/news/release/news_06_000078.html

    [9] 原子力市民委員会 原子力規制部会

    ALPS 処理水取扱いへの見解」http://www.ccnejapan.com/?p=10445

    [10]書面で提出頂いたご意見  https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/osensuitaisaku/committtee/takakusyu/pdf/shomen_iken__.pdf

    2020年2月7日金曜日

    汚染土再利用へのパブコメ



    2020/2/6 パブコメページから分割して投稿(半角カナは使えないことに注意。投稿の際は置換した)。その後、加筆訂正などしてメールにて提出。図は省略した。リンク先を参照されたい。

    「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(案)」及び「環境大臣が定める者の告示(案)」に対する意見
    2020/2/7
    濱岡 豊
    慶應義塾大学商学部
    0)          パブコメの方法や法体系について
    ・省令での対応について
     後述するように、違反しても罰則がない。これは省令で対応することに起因すると考える[1]適切な管理をしなければ、住民への健康被害を生じる可能性のある問題であり、義務を課し、違反時の罰則も制定できる法律もしくは政令とすべきである
    ・資料について
    資料の入手は、窓口(環境省環境再生・資源循環局環境再生事業担当参事官室)にて配付、もしくは郵送とある。ホームページで公開すべきである。

     以下、募集中[2]の標題省令などへの意見を示す。イタリックは同サイトで公開されている「除去土壌処分基準の改正に係る関係法令等の改正案の概要[3]」からの引用である。

    1)汚染度について
    福島県内における除染等の措置に伴い生じた除去土壌等については、「平成 二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の 事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措 置法基本方針」(平成23年11月閣議決定)において「可能な限り減容化を図るとともに、減容化の結果分離されたもの等汚染の程度が低い除去土壌について、安全性を確保しつつ、再生利用等を検討する必要がある。」
    ->「汚染の程度が低い」の定義がされていない。すべての前提であり、汚染の程度の低さを明示すべきである。なお、環境省廃棄物・リサイクル対策部「100Bq/kg と 8,000Bq/kg の二つの基準の違いについて[4]」 では、「100Bq/kg は「廃棄物を安全に再利用できる基準」であり、 8,000Bq/kg は「廃棄物を安全に処理するための基準」 」とある。再生利用を行うのであるから、当然、基準は100Bq/kgであることを明示すべきである


    2)計画の実現性および放射性物質管理の原則
     また、平成 26 年 11 月に改正された中間貯蔵・環境安全事業株式会社法におい て「中間貯蔵開始後三十年以内に、福島県外で最終処分を完了するために必要 な措置を講ずるものとする。」と規定されている。 中略 
    県外最終処分に向けては、その最終処分必要量を低減することが重要であり、 除去土壌等に関する減容処理技術の開発、再生利用の推進等の中長期的な方針 として、平成 26 年4月に「中間貯蔵除去土壌等の減容・再生利用技術開発戦 略」及び「工程表」を取りまとめ、これらに基づいて、除去土壌等の再生利用 の推進等に取り組んでいるところである。 
    ->「三十年以内に」と規定する理由が不明である その根拠を示し さらにその実現のための計画を明示すべきである。そもそも、放射性物質は集中管理が原則であり、それを県外に搬出することは、これまでの放射性物質の管理の体系とまったくそぐわない。 
    そもそも、放射性物質を含む汚染物質であり、それを再生利用するということは 30年間での福島県外への搬出という法と反する。
     下記のようなQ&Aを想定しているが 、社会通念上、ここでいう「土壌」にはセシウムは含まれていないことを想定している それが含まれている土壌は放射性物質として扱うべきである この会社法を根本的に見直す必要がある
    Q6.再生利用は実質的には最終処分になるのではないでしょうか。[5]
    A6.土壌は本来貴重な資源ですので、最終処分とは区別して、再生資材の放射 能濃度の限定、覆土等の遮へい、飛散・流出の防止等の措置を講じた上で、 利用先を管理主体や責任体制が明確となっている公共事業等における人為的な形質変更が想定されない盛土材等に用途を限定し、適切な管理の下で、 再生資材を限定的に利用することを想定しています。 


    3)不適切な実証実験
    再生利用の取組については、福島県南相馬市及び同県飯舘村において実証事業を実施し、その安全性等について確認を行ったところであり、県外最終処分 に向けた再生利用の取組を安全かつ適正に進めるため、除去土壌の処分の基準 としての必要な規定を設けることとする。 
    ->南相馬での実証では「有識者検討会においても、再生利用について今回の手法において安全性を確認[6]とあるがせいぜい数年間の管理された限られた範囲での結果であり、大規模に適用すべきではない。
     上述のように今回の省令などに関しては、汚染度について明示されていないが、この実証実験においてもホームページをみる限りでは、実験に用いられた汚染土の濃度が示されていない。このような最も基本的な情報を開示しない実証実験の結果は信頼できない。
     そもそも空間線量率をみると「4月以前の除去土壌搬入・破袋開始前における測定値は、CS-134で2E-11~5E-11Bq/cm3 程度、CS-137 で5E-11~4E-10Bq/cm3 程度であった。」が、搬入後(2017/5/11-5/27)には それぞれ3.31 E-11~5.90E-11Bq/cm3 、2.8E-10~4.98E-10Bq/cmと上昇した[7]

    最新の測定結果の時系列グラフをみても[8](P.1)、もっとも遠い固定点8(橙色)の空間線量は施工期間中0.04μSv/hであったが、施工後は0.06μSv/hと50%も上昇している

     施工後、盛土サイトから最も遠い固定点7、8においては空間線量率は0.06μSv/h程度だが、より近い固定点2もしくは3では0.08μSv/hと30%程度高くなっており、盛り土への再利用が空間線量率、つまり被曝量を増加させることは明らかである。


     なお、盛土上部(P.2)では0.05から0.06μSv/hとなっている。断面図をみると盛土は上部および側面共に50cmの健全土によって覆われている。盛土上部よりも離れている固定点2および3の方が線量が低いということはあり得ない。実験全体の信頼性が疑われる。
    出所) ibid.

    4)各論
    以下、引用しつつコメントする。
    2.改正等の内容 
    (1)平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力 
    発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案について 
    中略
    ○ 除去土壌の再生利用は、次のように行うこと。 
     以下略

    -> 汚染度の基準が明示されていない。
     国又は地方公共団体その他環境大臣が定める者とはどのような要件を満たしているのかが明示されていない。
     悪臭、騒音又は振動についての防御は記載されているが、被曝を防止することが明示されていない。これらは当然明示すべきである。

     次に掲げる事項の記録及び除去土壌の再生利用を行った位置を示す図 面を作成し、当該再生利用を行った場所の管理が終了するまでの間、保 存すること。 
     ・工事の計画及び設計に係る情報 
    ・再生資材化を行った除去土壌の数量及び事故由来放射性物質の濃度 ・土地の形質の変更に伴い生じる再生資材化された除去土壌の運搬及び 保管に係る計画 ・再生資材化を行った除去土壌ごとの再生利用を行った年月日 
    ・再生資材化を行った除去土壌を引き渡した担当者及び当該除去土壌の引渡しを受けた担当者の氏名並びに運搬車を用いて当該引渡しに係る運搬が行われた場合にあっては当該運搬車の自動車登録番号又は車両番号
    ・除去土壌の再生利用を行った場所の管理に当たって行った測定、点 検、検査その他の措置(規則第15条第11号の環境大臣が定める方法に より定期的に測定し、かつ、記録することを含む。) 
    ->実証実験では空間線量、排水中の放射性物質濃度を測定している。再利用するのであれば、当然、それを行わせるべきである。暗黙のうちに被曝量が低くなるように処理した汚染度を利用することを想定しているのであろうが、汚染度の基準も明示されていないため、測定によって確認することは必須である。

    ○ 除去土壌の再生利用を行うに当たっては、再生利用の用途に応じた必 要な厚さの土壌による覆いその他これに類する覆いにより除去土壌を覆 うとともに、当該必要な厚さを維持すること。
    ->どのように再利用されるのかが規定されていない。再利用の用途は限定すべきであり、明示すべきである。例えば2019年の台風19号による河川の堤防決壊の要因の一つは、越水により堤防が削られたことにある。堤防に再利用した場合には、当然、このような状況が生じ、放射性物質がさらに環境に放出されることとなる。
     再利用はおこなうべきではないが、万が一行う場合には、環境への再放出がおきない状況に限定し、かつ健全土による被覆ではなくコンクリートなどで完全に覆うべきである。このように施工、管理するとコストが上がるため、再利用は行うべきではないという当然の帰結となる。

    ○ 除去土壌の再生利用を行った場所内において除去土壌の掘削を伴う土 地の形質の変更をしようとする者は、当該土地の形質の変更に着手する 日の30日前までに、次に掲げる事項を記載した書面を環境大臣に届け出ること。 
    ・土地の形質の変更の施工に当たり周辺の生活環境に及ぼす影響につい て実施する調査の計画書 
    ・土地の形質の変更の施工に係る工事計画書 ・土地の形質の変更の施工方法を明らかにした平面図、立面図及び断面 図 
    ・土地の形質の変更の終了後における当該土地の利用の方法を明らかに 
    した図面
    ->被曝量の予測値についても報告させるべき。単に届け出させるのではなく、許可制とすべきである。



     除去土壌の再生利用を行うに当たっては、再生資材化を行った除去土壌を引き渡した者及び当該除去土壌の引渡しを受けた者並びに当該除去 土壌の再生利用を行った場所を管理する者の間において、適切な役割分 担及び連携に関する事項の書面を作成し、当該再生利用を行った場所の 管理が終了するまでの間、保存すること。 
    ->管理はいつ終了するのかが明示されていない。汚染土壌にはセシウム以外にも微量かも知れないが核種が含まれている。それらを踏まえて充分な期間を管理させる必要がある。

    ○ 上記の1に規定する書類を作成したときは、速やかにその写しを環境 大臣に送付すること。 
    2土壌等の除染等の措置等の委託の基準 法第40条第2項及び同第41条第2項の規定による委託の基準について、土 壌等の除染等の措置等の委託の基準として新たに処分((1)1に規定する除去土壌の再生利用に限る。以下2及び3において同じ。)を行う者を加える。
    3除去土壌収集等及び除去土壌の処分を業として行うことができる者 法第48条第2項の環境省令で定める者について、新たに処分の委託を受け た者を加える。 

    (2)(1)1の規定に基づき、環境大臣が定める者の告示案について

     特殊法人等(法律により直接に設立された法人若しくは特別の法律に より特別の設立行為をもって設立された法人のうち総務省設置法(平成 11年法律第91号)第4条第1項第9号の規定の適用を受けるもの、特別 の法律により設立され、かつ、その設立に関し行政官庁の認可を要する 
    法人又は独立行政法人通則法(平成11年法律第103号)第2条第1項に規定する独立行政法人をいう。)
    ○ 国又は地方公共団体の出資又は拠出に係る法人


    ->全体的に違反した場合の罰則がなく、施工、管理もいい加減に行われる可能性が高い。基準の明示、用途や施工の厳格化、測定の義務化と懲罰的罰則の導入により被曝のリスクを最低限にすべきである。


    5)結語
     はじめに述べたように、省令で対応すべき問題ではない。国民的な議論を行い、それに基づいて対策を考えるべきである。

    以上


    [1] 「省令には、法律の委任がなければ、罰則を設け、又は義務を課し、若しくは国民の権利を制限する規定を設けることができない。」(国家行政組織法第十二条3項)
    [7] 実証事業実施場所における放射線等の測定結果(2017.6.20)
    [8] 実証事業実施場所における放射線等の測定結果 2020年1月31日 http://josen.env.go.jp/chukanchozou/facility/effort/recycling/pdf/measurement_result_1912.pdf