2011年10月20日木曜日

長期被曝による白血病死亡リスクのメタ分析  (



  • Daniels and
  •  Schubauer-Berigan 2011) ここから全文へリンク



  • 白血病(慢性リンパ性:CLLを除く)による死亡と放射線被曝量との関係をメタ分析した論文。以下はその概略。

    71の先行研究を見いだした。それらのうち下記4条件を満たしている23の研究についてメタ分析した。

    • (1)白血病(慢性リンパ性:CLLを除く)による死亡と放射線被曝量との関係を分析してある。
    • (2)データ収集が、コホート=同じ人々を長期的に観察する)もしくは、バイアスのないケースコントロール(発病した人についての情報を収集する)研究である。
    • (3)個人レベルの線量が測定されている。
    • (4)線量D-反応の係数が報告されている(RR=1+ERR(D))。

    23の研究一覧(リンク)のAverage doseが各研究の調査対象者の平均被曝量(γ線の場合1mGy=1mSvと考えてよい)。大きいものもあるが、ほとんど100mSvよりも大幅に低い)。
    Casesが白血病での死亡(もしくは発生)数。
    Effect size (ERR at 100 mGy)が、上記の線量-死亡数の係数。通常は死亡数/Sv で表示するが、 (ERR at 100 mGy)とあるので、この値は症例数/Svを10=100/1000で割ったものかもしれない。
     
    表にみられるように、研究によって値が異なるので、メタ分析した。その結果、超過リスク係数は0.19となった(95%信頼区間は 0.07 ~0.32つまり少なくとも5%水準で有意)

    なお、異なる研究が、同じ対象を分析していることもあるが、そのような重複も調整。さらに、公刊バイアス(効果が検出された論文の方が公刊されやすい)なども考慮しても有意であった。
    ちなみに日本の原爆被爆者データからの推定値は0.15であり、類似した値である。 (放影研 によるリスク推定値)


    参考)メタ分析
    上記にリンクした表のように、おなじような分析をしても、研究によって結果が異なることがある。それぞれ別に解釈するのではなく、それらの研究を総合して、結果をまとめるための方法。

    二つの研究の係数が下記の通りであったとする。

    研究1 係数 0.01  サンプル数 1000
    研究2 係数 0.1   サンプル数 500

    最も簡単なのは下記のようにサンプル数を重みとして係数を加重平均する方法。
    総合化した係数=(0.01*1000+0.1*500)/(1000+500)

    推定値の標準誤差(信頼区間)の情報がわかっている場合は、その逆数を用いる。

    この論文では、数式にあるように研究内での分散と研究間の分散の2乗和の逆数を用いている。

    さらに、各研究の係数を被説明変数として、研究の特徴をコーディング(この例だと原発労働者か、軍事核設備労働者か 加法モデルか乗法モデルか等)して説明変数、サンプル数もしくは推定値の分散の逆数を重みとした回帰分析を行うこともある。