エネルギー・環境会議へのパブリックコメント 内容編 2012/7/15送信
1)不適切な前提
・電力需要量の過大な見積もり
2030年の人口は10%程度減少が見込まれている。それにも係わらず、「2030 年までにGDP が2割以上増える」といった実現性のない目標を前提としている。
・一方で既存技術の改良、向上などの軽視
化石燃料系の発電効率の改善、コジェネの活用などの要素が充分に取り入れられていない。
・熱、電気の有効活用
原発の発電効率は30%程度。熱の7割は廃棄されている。一方、ガスコンバインドでは70%程度の効率。かつ都市部にも立地できるため、廃熱もさらに利用が可能である。このようなトータルでみたエネルギー利用を考慮していない。
上述のようなGDPに挑戦的な目標を設定するならば、これら技術効率の改善にむけた目標の設定、インセンティブをもたせる制度設計をすべきである。
2)3つのシナリオの非現実性
・25%という方向性を誤った選択肢
0% 15% 25%を挙げているが事故前の原発依存度は26%である。脱原発依存の方向性をめざすのであるから、これよりも低い目標となるのが当然であり、25%のシナリオはあり得ない。
・原発設備の現状からみた非現実性
今後、新規増設せず、40年で廃炉を前提とすると、2030年時点で操業40年未満となるもの、つまり、1990年以降に営業運転が開始されたのは、19基、合計2111万kWである。
ただし、これらには東海地震の影響が懸念される浜岡4-5号、中越地震で大きな被害を受けた柏崎刈羽2~7号機が含まれている。これらは即時廃炉にすべきであるから、差し引くと1160万kWとなる。さらに、これはあくまで設備容量であり、点検や不正によって停止している期間を除外した稼働率は70%程度とすると812万kwとなる。これが2030年時点で可能な最大限の原発による発電量である。
設備容量1160万kWは1978年ごろ、参考までに2111万kWは1985年頃の水準である。ただし、現在も大飯1基のみ、その一方で8基の火力発電所を停止した。現在ただちに0基にしても発電能力としては問題がない。
・再処理と組みあわせることの不適切性
再処理、高速増殖炉など、40年取り組んできたが、前者はガラス溶融段階での煉瓦の混入、後者はナトリウム漏れ、燃料棒の落下など極めて初歩的な段階にとどまっている。米国、フランスなどは90年代にはこのような方策はあきらめた。再処理を前提とした核燃料サイクルは既に実現不可能であることを前提にすべきである。
3)偏った情報提供
・核廃棄物の発生の無視とCO2についての偏重した記述
原子力発電所の運転によって、高レベル、低レベル核廃棄物が発生する。使用済み燃料プールに13,530
トンU が存在する(電事連 「原子力・エネルギー図面集 7−28 各原子力発電所の使用済み燃料の貯蔵量」 http://www.fepc.or.jp/library/publication/pamphlet/nuclear/zumenshu/digital/index.html
)
運転すると、処理技術も確立していない廃棄物が増加するわけである。このことを明示すべきである。
・間接的オフセット取引の無視
CO2の削減については、途上国への省エネ、環境技術の供与を提供する間接的なオフセットも考慮される。このことがまったく呈示されていない。自国で上述のように効率を改善するだけでなく、他国への支援を進めることによって充分に国際的に貢献できる。
上述のように%表示では、実際に必要な電力量といった重大な情報が隠されてしまう。%ではなく電力もしくは原発の基数(120万kW換算)すべきである。