原子力災害対策指針(改定原案)及び原子力災害対策特別措置法に基づき原子力防災管理者が通報すべき事象等に関する規則の一部を改正する規則(案)に対する意見募集について へのパブコメ
数回に分けて送信。それをまとめたもの。半角の。などは受け付けられないので英数字など一括して全角に変換してある。
線量率等の値に基づくSPEEDIのような大気中拡散シミュレー
数回に分けて送信。それをまとめたもの。半角の。などは受け付けられないので英数字など一括して全角に変換してある。
1.総論
今回の規則は1)福島事故での反省もなく、2)予測を行わず、3)30km以遠の者には避難もさせず、4)実効的な避難手段確保も義務づけず、5)避難計画などについて住民の民意を反映させるプロセスも考慮されていないものである。そもそも、原発稼働は世界最高の安全対策を前提としたものである。
このような改訂は住民の被曝リスクを高めるのみであり、ただちに原発稼働をあきらめるか、この案を廃棄し、はじめから検討し直すべきである。
2.各論
以下、指摘対象を赤字、その修正意見と理由を示す。
(ハ)プルーム通過時の被ばくを避けるための防護措置を実施する地域(PPA:Plume Protection Planning Area)の検討
→削除されているが、残すべきである。
理由
関連資料である 「UPZ外の防護対策について(平成27年3月4日原子力規制庁)」
p.3 「このため、重点区域外に拡張された防護範囲で実施される屋内退避は、放出された放射性物質が当該範囲内を通過するときに受ける影響を回避するために臨時に実施される緊急防護措置であることを踏まえて、緊急時モニタリング結果等により放射性物質が当該範囲外へ通過したと判断されたときは、速やかにこの屋内退避の指示を解除することが合理的である。」
とあるが、健康な者にとっては予防的処置によって、避難させることがもっとも効果的な防護策であり、屋内退避をさせることは被曝リスクを高めることにしかならない。このことは特に木造住宅の多い日本においてはなおさらである。
さらに、福島原発では少なくとも3/15、3/21の二回にわたってプルームが通過した。このように長期間、屋内避難させることは非現実的である。実際、ICRP109でも「 (B5) 屋内退避は,2 日程度より長い期間は推奨されない(IAEA, 1994, 1996, 2006)。屋内退避は容易に実行できるが,ほとんどの場合,長期にわたって実行することはできない (B5)」
とされている。
なお、緊急時モニタリングが行われることを前提としているが、それが十分に行われなかった福島の経験を無視している。
緊急時モニタリングセンター
「モニタリング情報については、リアルタイムで公開することとする。」を明示すべきである。
理由
福島災害では、Speediの予測、各種モニタリングデータなどの公開が遅れた。このため、防護措置が不十分となっただけでなく、政府などへの不信も生まれた。それを回避するために、計測値については人手を介さず、測定値そのものを公開すべきである。
このような仕組みは原発近辺でのMPデータ公開で既に行われており、容易に実現可能である。
緊急時モニタリングの実施体制の整備等
解析及び評価し、その結果を迅速に公表するための体制を整備する。緊急時モニタリング
結果の解析・評価においては気象データや大気中拡散解析の結果を参
考にする。そのため、国、地方公共団体及び原子力事業者はその解釈
の仕方について地域の特性に応じて事前に整理しておくことが重要
である。
は残し、不確実性があるが予防原則の観点から、ソースタームはINES7レベルを仮定して予測することとすべきである。
理由
関連資料である 「UPZ外の防護対策について(平成27年3月4日原子力規制庁)」では、
p.2 「重大事故の発生を仮定した場合、放出源からの距離が近い区域では、放出される放射性物質による影響は最も重大なものとなる一方で、その影響は放出源からの距離に応じて減少する。したがって、敷地近傍の区域では緊急時に直ちに防護措置を実施できるよう、あらかじめ手厚い原子力災害対策を用意し、遠方の区域では状況に応じて弾力的
な対応をとることができる原子力災害対策を用意することが合理的である。」
これはまったくの誤りである。福島での4ヶ月間の外部被曝量は、距離の近い「いわき市」で1.0mSvであるのに対して、飯舘村では4.0mSv,福島市でも1.7mSvとなっている (福島県県民健康調査 基本調査 市町村別の線量分布より算出→「第18回検討委員会 資料1 『基本調査』の実施状況について」)。このことは、公開されたSpeediやモニタリングの結果からも明らかである。
単に距離で避難などの対応を考慮したことによって、福島原発から北西部地域住民に多大な被曝量をさせたことを反省すべきである。これを回避するには、風向の把握などによる事前の予測 Speediのようなものの利用が必要である。なお、Source termなど即座に利用可能な情報が得られない場合でも、防護的観点からINES7レベルの漏出があったことを想定し、予測することが妥当である。
(2)異常事態の把握及び緊急事態応急対策
・原子力施設から著しく異常な水準で放射性物質が放出され、又
はそのおそれがある場合には、施設の状況や放射性物質の放出
状況を踏まえ、必要に応じて予防的防護措置を実施した範囲以
外においても屋内退避を実施する。
→前述のとおり「避難」を実施するとすべきである。なお、「著しく異常な水準」のようなあいまいな言葉ではなく、10条もしくは15条通報基準を基準として設定すべきである。
ションを活用した逆推定の手法等により、可能な範囲で放射性物質の
放出状況の推定を行う。また、原子力事故の拡大を抑えるために講じ
られる措置のうち、周辺環境に影響を与えるような大気中への放射性
物質の放出を伴うものを実施する際には、気象予測や大気中拡散予測
の結果を住民等の避難の参考情報とする。
→削除せず残すべきである。
理由 上述の通り。
② 緊急時モニタリング実施計画の策定等
、気象予測や大気中拡散予測の結果をモニ
タリング実施体制の整備の参考にすることも考慮する。
→変更せず、このまま残すこと。
理由 上述の通り。
④ 緊急時モニタリングの結果
、一元的に解析・評価して、
→変更せず、このまま残すこと。
理由 上述の通り。
また、国は、集約及び共有した緊急時モニタリング結果を分かりやすく、かつ迅速に
公表する。
→国や自治体は、緊急時モニタリングの生データを加工することなく、リアルタイムデ公開する。
とする。
理由 上述の通り。
第6 今後、原子力規制委員会で検討を行うべき課題
下記の項目を追加すべきである。
・住民投票による承認
地域防災計画の策定、承認について地域住民の住民投票を行い、その半数以上の賛同を得られなければ、原子力発電所の稼働は認めないこととする。
理由
福島の経験から明かなように、原発災害は立地市町村のみならず、60km圏以遠に及ぶ。福島原発以上の事故が生じる可能性も想定し、全量排出された場合の被害範囲を推定し、その範囲に立地する市町村での住民投票による民意の反映を行うべきである。
・実効性のある計画、体制の構築
計画のみならず、道路の通行可能量、輸送手段の確保などを確実に行うことを少なくともPAZ地域内の市町村には義務づける。これが達成できない場合には、原子力関連設備の稼働は認めないこととする。
理由
福島では渋滞によって、避難が遅れた。また、川内原発では新幹線で避難する、浜岡原発では高速道路などには損傷がなくこれを利用して避難する、大飯原発では非常要員は海からアクセス、といった計画が立案されている。このような実効性のないものではなく、実行可能な道路、交通手段を通常から確保することを義務づけなければ、住民の被曝を回避できない。
なお、当然ながらこれらにかかるコストは原発の稼働コストに加算するものとする。
・世界最高水準の安全対策の実施を前提とした稼働
安倍氏がスピーチしたように世界最高の安全を確認したものしか稼働させないことを明示すべきである。
理由
参考資料では、「IAEAの安全基準が示すフレームワークでは、放射性物質の放出の前に施設の状況に基づいて予防的な緊急防護措置を実施し」のようにIAEAに準拠しているが、日本は世界最高の安全対策をめざしているのであり、IAEAがしていないことも含めた厳しい安全基準を設定すべきである。これを満たさなければ稼働させないことを明示すべきである。
・責任の所在の明示
すべての責任は事業者が負うことを明示すべきである。
理由
福島事故では本来、事業者が責任を負うべきであるにも関わらず、費用も国民の税金から負担させ、されに当時の社長以下、何の責任も果たしていない。国や自治体、旧安全委委員会についても同様である。これがいい加減な対策の温床となっている。責任を明示すべきである。
3.総括
福島原発災害では、規制側の甘さ、事業者による規制や基準設定への介入、モニタリング体制の不備、メルトダウンの可能性をはじめとする不十分な情報公開、体表面スクリーニングのいい加減な基準緩和、同じく労働者の250mSv引き上げ基準、小学校での20mSv基準、甲状腺スクリーニングの1000名打ち切りなど、極めて不透明な対応がされてきた。それらの原因も解明されず、これにともなって責任もとられていない。
総論で述べたように、この規則はあまりにも無責任である。ただちに福島災害の原因解明から議論をやり直すべきである。