2012年1月23日月曜日

放射線影響研究所のデータについて


  • 下記に示すようにデータが公開されているので、自分で再分析している。そのためにまとめている、各データの特徴、findings。



    • ここには(広島、長崎被爆者)寿命調査(Life Span Study)以外の分析結果も含まれている。
    • 寿命調査については、1998年までのデータの分析結果が中心
  • 結果についての私見
    • 冗長になるのではじめに個人的な見解をまとめておく。以下に示されている事実を放射線影響研究所の(自称?)専門家はなぜ明示しないのか?
      • 参考)目立つところで下記のWG
      • 子供ほど影響される。
        • 例 固形ガンの過剰相対リスク(ERR)は30才で被曝した場合の2.5倍(Preston et al.,2003)。下記の図2参照。
      • ガンによる「死亡」よりも「罹患」に対して放射線は影響を強く与える。
        • 固形ガンについての死亡の分析結果ERR=0.47が多いが、罹患だとこれが0.67に上昇(Ron et al. 1994)。ガンで死亡する前に罹患する。罹患を無視すべきではない。
      • 白血病の無視
        • 白血病だと発症数は少ないもののERRの値は高い。白血病全体で罹患のERRは3.9。急性リンパ白血病のERRは10.3(Preston et al.1994)
      • ガン以外の疾病への影響もある。
        • 上記の概要にあるように、ガン以外の疾病、発育、知能などへの影響があることも判明している。
      • 喫煙による影響と比較する。
        • 喫煙を考慮した分析でも被曝の影響は有意である。喫煙は自分で好んでするもの。否応なく被曝させられた者のベネフィットなしのリスクと比較すること自体が無意味。ついでにいえば、喫煙と放射線の交互作用は9と大きい( Furukawa et al.2010)
      • 閾値モデルは支持されていない。
        • 以下に紹介するように 線量の1次項のみ、2次項のみ、1次+2次、ノンパラ、閾値モデルで推定され比較されているが、閾値モデルが支持されたものはない。
      • 100mSv以下でも有意になるという研究はある(Pierce and   Preston 2000)。13報(Preston et al., 2003),でも10mSv以下に限定して分析した場合のERRのp値は0.15。慣習でp=0.05もしくは0.10が用いられているがこれらはあくまで慣習。AICなどより正確な判定をすべきである。
        • 100mSVの領域は不明である、というべきではない。不明な場合にはリスクを重視すべきである。
      • 被曝(したことによる)ストレスによる影響を指摘する者もいるが、そのような分析は下記の文献および上記の概要にも示されていない。証拠のともなわない議論はすべきではない。
      • これ以外にも原発従業者をはじめとした低被曝データで、線量が有意になる例も見いだされている。それらに言及しないのはなぜか?


2)寿命調査データ
    • ここから必要なものを選んで住所などを入力するとダウンロードできる。
      • 公開されているのは寿命調査のみ。その一部の方を対象とした健康調査(喫煙なども質問)も行われているが、データは公開されていない。
    • コホート(年齢、性別、被爆地など)に集計されているので、それを踏まえた分析が必要。
  • 公開されているデータは下記の特徴の組み合わせ
  • 罹患率 incidenceか死亡率 mortalityか
    • 罹患して死亡されるので、罹患率の方がベースラインの割合は高くなる。
  • 死因、原因
    • ガン cancer
      • 固形ガンsolid cancer/白血病 leukemia
    • ガン以外 non-cancer
  • 線量評価方法 DS02 - 用語集 - 放射線影響研究所
    • T65DR 
    • DS86
    • DS02
  • 分析対象
    • 原爆投下時市外にいた方をどう扱うか。
    • 4Gy以上をどう扱うか。
3)分析について
  • 外部比較
    • 被爆者以外との比較 下記の研究ではされていない。
  • 内部比較
    • Epicureというソフトを用いて分析しているが、基本はポアソン回帰モデル。
      • ベースとなる死亡率*(γ*d)
    • のようなモデルを推定。dは被曝線量。上式のγが正で有意ならば、被曝線量とともに死亡率が増加するということになる(厳密には因果ではないが)。
    •  上記では線形を仮定しているが、下記のような定式化をして比較しているものもある。
      • γ1*d+γ2*d^2
      • 線量カテゴリダミーを用いる。
      • β(d-d0) としてd<d0のときには0とする閾値モデル
  • 最近の論文ではベイズ推定もされていたような気がするが見失ってしまったので下記には含まれていない。
  • 健康調査と組み合わせて、特に喫煙を考慮した分析も行われている。


4)各データのダウンロード先へのリンクと主要な結果。括弧内はファイル名。
  • 以下特に記さなければ過剰相対リスクの線量反応関数の推定結果(上式のγ:ERRと表記。研究によっては%で表示されているものもあるが割合にした(例 10%=0.1)。また、この人たちはGyを用いることが多いがそんなにはかわらないので、Svで示した。
  • 寿命調査第10報 がん死亡率データ、1950-82年 (r10cancr.dat)
  • 寿命調査第11報 死亡率データ、1950-85年 (急性影響について分類した死亡率データを含む)  (cmds86.r11) 線量はT65DR
  • 寿命調査 がん罹患率データ、1958-1987年  (tr87data.dat  ds86adjf.dat  hema87.dat) 線量はds86
    • Preston, Dale L. , Shizuyo Kusumi, Masao Tomonaga, Shizue Izumi, Elaine Ron, Atsushi Kuramoto, Nanao Kamada, Hiroo Dohy, Tatsuki Matsui, Hiroaki Nonaka, Desmond E.  Thompson, Midori Soda, and Kiyohiko Mabuchi (1994), "Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors. Part Ill: Leukemia, Lymphoma and Multiple Myeloma, 1950–1987," Radiation Reseach, 137, S68–S97.
      • 1950-87データ白血病などの罹患について分析。concave upward(上に反った非線形な関係)。白血病全体ではERR=3.9.急性リンパ白血病Acute Lymphocytic Leukemiaでは10.3。
  • 寿命調査第12報 死亡率データ、1950-1990年 (第1部: がん、第2部: がん以外) (r12canc.dat r12leuk.dat) 線量はDS86
    • Preston, Dale L. , Shizuyo Kusumi, Masao Tomonaga, Shizue Izumi, Elaine Ron, Atsushi Kuramoto, Nanao Kamada, Hiroo Dohy, Tatsuki Matsui, Hiroaki Nonaka, Desmond E.  Thompson, Midori Soda, and Kiyohiko Mabuchi (1994), "Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors. Part Ill: Leukemia, Lymphoma and Multiple Myeloma, 1950–1987," Radiation Reseach, 137, S68–S97.
      • 1950-87データを用いて白血病について推定。白血病全体では線量の1乗項だけでなく2乗項も有意。つまり上に反った形の線量反応関数。
    • Ron, Elaine, Dale L.  Preston, Kiyohiko Mabuchi, Desmond E.  Thompson, and Midori Soda (1994), "Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors. Part IV: Comparison of Cancer Incidence and Mortality," Radiation Reseach, 137, 98-112.
      • ガンの罹患と死亡について過剰相対リスクを推定。(罹患して死亡するので、ベースラインは罹患率の方が高いのが当然だが)、過剰相対リスクも罹患率の方が高い。
      • 例)全固形ガン 罹患率 ERR=0.65   死亡率 ERR=0.47
    • Pierce, D.A., Y. Shimizu, D.L.  Preston, M. Vaeth, and K. Mabuchi. (1996), "Studies of the mortality of atomic bomb survivors. Report 12, Part I. Cancer: 1950-1990," Radiation Research, 146, 1-27.
    • Shimizu, Y, DA Pierce, DL  Preston, and K Mabuchi (1999), "Studies of the mortality of atomic bomb survivors. Report 12. Part II. Noncancer mortality: 1950-1990," Radiation Research, 152 (4), 374-89.
  • 寿命調査第13報 がんおよびがん以外の疾患による死亡率データ 1950-97 (R13mort.dat) 線量はDS86
      • Preston, DL, Y Shimizu, DA Pierce, A Suyama, and K Mabuchi (2003), "Studies of mortality of atomic bomb survivors. Report 13. Solid cancer and noncancer disease mortality: 1950-1997," Radia Res, 160 (4), 381-407.(公開されている報告書では最新の結果なので引用されることが多い)。
        • 固形ガン全体についてのERR=0.47/Sv。線形性を疑う推定結果は得られなかった:Fig2。
        • "There is no indication that the slope of this dose–response curve over this low-dose range differs significantly from that for the full range (P . 0.5) and no evidence for a threshold.(p.396)"
        • 被曝時年齢が若いほどリスクが高い(Fig.3では30才で被曝した者の2.5倍:Fig3)
        • 部位別にも推定。最も高いBladderではERR=1.25(Fig4)。
        • 低線量での影響をみるために、分析する範囲を変更(Table 4)。下記のように、100mSv以下では有意ではなかった。
          • 0-5mSvを用いたときはERR=0.93(ただし標準誤差SE=0.85でp=0.15。5%水準で有意ではない)
          • 0-100mSvとしたときはERR=0.64(ただしSE=0.55でp=0.30:5%水準で有意ではない)。
          • 0-125mSvとしたときはERR=0.74(ただしSE=0.38でp=0.025:5%水準で有意)。
        • ガン以外についても推定。 ERR=0.14で有意であった。
    • DS02リスク推定:固形がんおよび白血病死亡率データ (DS02can.dat) 線量はDS86とDS02
        • Preston, Dale L. , Donald A. Pierce, Yukiko Shimizu, Harry M. Cullings, Shoichiro Fujita, Sachiyo Funamotoa, and Kazunori Kodama (2004), "Effect of Recent Changes in Atomic Bomb Survivor Dosimetry on Cancer Mortality Risk Estimates," RADIATION RESEARCH, 162, 377-89.
          • 1950-2000のデータを用いてDS86とDS02を用いたリスク推定結果を評価。大きな差はなかったという結論。死因については、全体、ガン、うち固形ガン/造血ガン/白血病の大分類。
        • 図1. DS02とDS86による白血病のノンパラメトリックな線量反応、1950-2000年。被爆時年齢20-39歳の人の1970年における男女平均リスク。
        • Richardson D, Sugiyama H, Nishi N, Sakata R, Shimizu Y, Grant EJ, Soda M, Hsu WL, Suyama A, Kodama K, and Kasagi F. (2009), "Ionizing radiation and leukemia mortality among Japanese Atomic Bomb Survivors, 1950-2000," Radiation Research, 172 (3), 368-82.
          • 1950-2000データで白血病による死亡を分析。
      • 寿命調査 がん罹患率データ、1958-1998年 (lssinc07.*) 線量はDS02
          • "当該データの公開準備を進める際、当該データセットの以前のバージョンでは被爆者の合 計遮蔽カーマ推定値が4 Gyよりも上か下かについての層化が正確に行われていないことが判 明した。以前に行われた解析ではこの因子を用いなかったため、症例数や人年に対するこの 過誤の影響はなく、リスク推定にもほとんど影響がないので、補正した人年表のみを公開し ている。補正したデータセットを公開することによって、ユーザーは希望すれば、高カーマ 群について自分で適切に層化(または無視)することが可能である。(同ファイルの説明)
        • Preston, D. L., E. Ron, S. Tokuoka, S. Funamoto, N. Nishi, M. Soda, K. Mabuchi, and K. Kodama (2007), "Solid Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors: 1958–1998," Radiation Research, 168 (1), 1-64.
          • 固形ガンについて閾値モデルを推定したら閾値は4mSvとなった。ただし線型モデルの方があてはまりは良好。0-150mSvの範囲で有意となった。
          • 放射線審議会での報告資料および下記のグラフを参照。
          • LSS集団における固形がん発生の過剰相対リスク(線量別)、1958-1998年。
          • 太い実線は、被爆時年齢30歳の人が70歳に達した場合に当てはめた、男女平均過剰相対リスク(ERR)の線形線量反応を示す。太い破線は、線量区分別リスクを平滑化したノンパラメトリックな推定値であり、細い破線はこの平滑化推定値の上下1標準誤差を示す。
          • 図2. 1 Gy被曝による固形がんの過剰発生リスクに及ぼす被爆時年齢ならびに到達年齢の影響。左図は過剰相対リスク(ERR)、右図は過剰絶対リスク(EAR)による表示。
        • Pierce, D.A. and D.L.  Preston (2000), "Radiation-related cancer risks at low doses among atomic bomb survivors," Radiation Research, 154, 178-86.
            • 2000年の論文なので上のデータとは若干異なり、1958-94のデータ。DS86を用いていると考えられる。0.5Sv以下、爆心地から3km以内の者に限定して分析。アブストラクトによると100mSv以下でも有意なリスクがあるという。
        • 寿命調査 循環器疾患死亡率データ、1950-2003  (lsscvd10.*) 線量はDS02
          • Shimizu, Yukiko, Kazunori Kodama, Nobuo Nishi, Fumiyoshi Kasagi, Akihiko Suyama, Midori Soda, Eric J Grant, Hiromi Sugiyama, Ritsu Sakata, Hiroko Moriwaki, Mikiko Hayashi, Manami Konda, and Roy E Shore (2010), "Radiation exposure and circulatory disease risk: Hiroshima and Nagasaki atomic bomb survivor data, 1950-2003," Bmj, 340.
            • 上のデータと健康調査を組み合わせて、喫煙などの影響も考慮した分析。
            • 8.6万人のコホートデータを用いたポアソン回帰。線形、2次項もいれたもの、閾値を入れたものβ(d-d0) としてd<d0のときは0 も推定。
              • Strokeについては2次項を入れたモデルのあてはまりがよい。参考までに線形モデルのERR=0.09
              • Heart diseaseについては線形モデルのあてはまりがよい。ERR=0.14。閾値モデルでもd0=0としたものが最良だった。
            • 1978年に行った5.2万人の健康調査から喫煙、飲酒、BMIなども取り入れて、個人レベルでハザード分析。上のサンプルの一部なのでERRは若干変わる。
              • StrokeのERR これらを考慮しない場合は0.081、考慮しても0.072
              • Heart diseaseのERR これらを考慮しない場合は0.122、考慮しても0.123とたいしてかわらない。ただし、これら交絡因子の影響の推定値は示されていない。
            • Discussionのあたりでは500mSV以下に限定すると有意ではなくなるので、低線量では不確実性が残るとしている。
          • 公開されているデータはこれが最新。寿命調査13報は上記のように2003年に公開された。それから8年経過するがまだ寿命調査14報は公開されていない。
          • 2012/4追記
            • 2012年に公開された。線量がDS02になり、Gyで扱われているが、結果について大きな変化はなさそう。
                   被爆者者の死亡率に関する研究、第14報、1950-2003 










        • 健康調査
          • いずれも肺ガンに喫煙の影響を取り入れたもの
            • Pierce, D.A., G.B.  Sharp, and Mabuchi.K. (2003), "Joint effects of radiation and smoking on lung cancer risk among atomic bomb survivors.," Radiation Research, 159, 511-20. 
            • Furukawa, Kyoji, Dale L. Preston, Stefan Lönn, Sachiyo Funamoto, Shuji Yonehara, Takeshi Matsuo, Hiromi Egawa, Shoji Tokuoka, Kotaro Ozasa, Fumiyoshi Kasagi, Kazunori Kodama, and Kiyohiko Mabuchi (2010), "Radiation and Smoking Effects on Lung Cancer Incidence among Atomic Bomb Survivors," Radiation Research, 174 (1), 72-82.


              • 1958-99の肺ガン罹患率に喫煙の影響を考慮した分析。喫煙と被曝量の交互作用を導入した一般化交互作用型のモデルがあてはまり最良。それによると、放射線のERR=0.59と有意(男性の方が0.9と高い)。これに対して、喫煙のERR=4.69/年50箱。これらの交互作用項は9.20

          5)感想など
          • 分析もしくは結果の見せ方の問題
            • モデルの説明変数には性別、都市なども入れてあるが、それらの推定値、検定結果などを示していない。
            • 複数モデルの適合度の比較を行い、例えば線形モデルが最良であったと記述されているが、Furukawa et al.(2010)を除くと具体的な適合度指標が示されていない。
            • 推定結果を文章の中に書くのではなく、表にまとめてもらいたい。
            • 分析のみで、例えば発症のメカニズムなどについての考察がない。
              • ICRR2011会議で、上記の児玉氏や若手の研究者に白血病では上に反った形状、固形ガンでは下にそった形状になるのはなぜか、と質問したが、両名ともメカニズムはわからないとのこと。
            • 高線量被爆者には若年層が多い。また、各セルには0が多いのでポアソン回帰が不適切になる可能性もある。といったことを考慮していない。
              • それを考慮したのが私の分析。
              • Hamaoka, Yutaka (2011), "A Search for Better Dose-Response Function," in 14th International Congress of Radiation Research. Warsaw, Poland.
                再推定なども行っているがそれは別途まとめる。











          2011年10月20日木曜日

          長期被曝による白血病死亡リスクのメタ分析  (



        • Daniels and
        •  Schubauer-Berigan 2011) ここから全文へリンク



        • 白血病(慢性リンパ性:CLLを除く)による死亡と放射線被曝量との関係をメタ分析した論文。以下はその概略。

          71の先行研究を見いだした。それらのうち下記4条件を満たしている23の研究についてメタ分析した。

          • (1)白血病(慢性リンパ性:CLLを除く)による死亡と放射線被曝量との関係を分析してある。
          • (2)データ収集が、コホート=同じ人々を長期的に観察する)もしくは、バイアスのないケースコントロール(発病した人についての情報を収集する)研究である。
          • (3)個人レベルの線量が測定されている。
          • (4)線量D-反応の係数が報告されている(RR=1+ERR(D))。

          23の研究一覧(リンク)のAverage doseが各研究の調査対象者の平均被曝量(γ線の場合1mGy=1mSvと考えてよい)。大きいものもあるが、ほとんど100mSvよりも大幅に低い)。
          Casesが白血病での死亡(もしくは発生)数。
          Effect size (ERR at 100 mGy)が、上記の線量-死亡数の係数。通常は死亡数/Sv で表示するが、 (ERR at 100 mGy)とあるので、この値は症例数/Svを10=100/1000で割ったものかもしれない。
           
          表にみられるように、研究によって値が異なるので、メタ分析した。その結果、超過リスク係数は0.19となった(95%信頼区間は 0.07 ~0.32つまり少なくとも5%水準で有意)

          なお、異なる研究が、同じ対象を分析していることもあるが、そのような重複も調整。さらに、公刊バイアス(効果が検出された論文の方が公刊されやすい)なども考慮しても有意であった。
          ちなみに日本の原爆被爆者データからの推定値は0.15であり、類似した値である。 (放影研 によるリスク推定値)


          参考)メタ分析
          上記にリンクした表のように、おなじような分析をしても、研究によって結果が異なることがある。それぞれ別に解釈するのではなく、それらの研究を総合して、結果をまとめるための方法。

          二つの研究の係数が下記の通りであったとする。

          研究1 係数 0.01  サンプル数 1000
          研究2 係数 0.1   サンプル数 500

          最も簡単なのは下記のようにサンプル数を重みとして係数を加重平均する方法。
          総合化した係数=(0.01*1000+0.1*500)/(1000+500)

          推定値の標準誤差(信頼区間)の情報がわかっている場合は、その逆数を用いる。

          この論文では、数式にあるように研究内での分散と研究間の分散の2乗和の逆数を用いている。

          さらに、各研究の係数を被説明変数として、研究の特徴をコーディング(この例だと原発労働者か、軍事核設備労働者か 加法モデルか乗法モデルか等)して説明変数、サンプル数もしくは推定値の分散の逆数を重みとした回帰分析を行うこともある。

          2011年9月27日火曜日

          原発は(技術的には)80年代には終わっていた!

          これはこちらの原稿の一部。

          日本の原子力は、GE、ウエスティングハウスなどと提携し、技術を導入してきた。これに伴って原子炉の国産化率は高くなってきた[1]。それでは特許についてはどうだろうか。特許のキーワードとして「原子力」もしくは「原子炉」を含む特許の出願件数を検索した。参考のために、「太陽電池」についても同様に検索した。
           1970年から2009年までに、原子力は28,960件、太陽電池は28,685件が出願された。実際に特許として登録されたのは原子力8,257(登録率28.5%)、太陽電池5,257(18.2%)であり、原子力の方が登録率は高い。
           ただし、時系列での出願パターンは大きく異なる。ともに1970年の出願数はゼロであったが、原子力は1980年代の前半をピークとし、その後は一貫して減少してきた。一方、太陽電池は一貫して増加し、ここ数年ではさらに急速に件数が伸びている。原子力については、鉱工業の研究支出もプロットした。年度による変動があるものの、1980年代にピークがあることは共通している。
           日本の原子力発電所を海外に輸出したり、技術を維持することの重要性を指摘する声もあるが、イノベーションの発生という点からみると原子力発電所は1980年代前半に峠を超えていたのである。
















          図1 原子力、太陽電池の特許出願件数、原子力への研究支出の推移
          )ウルトラパテント・データベース(https://www.ultra-patent.jp/)を用い、原子力については (原子力 | 原子炉)、太陽電池については(太陽電池)で、それぞれ出願年を指定して検索。
           研究支出は日本原子力産業協会 (2005),p.47 集計表6 鉱工業の費目別原子力関係支出高の推移


           原子力産業協会 (2007)の継続調査によると、民間企業における原子力関係研究者も一貫して減少している。


          出所) 原子力産業協会 (2007), "2005年度 第47回原子力産業実態調査報告."
          図2 民間企業における原発関連従業員数




          [1] 例えば1967年に着工した福島第一1号機のプラント国産化率は56%であったが、1992年着工の柏崎刈羽原子力発電所は89%である。
           東京電力「福島第一原子力発電所 設備の概要
           http://www.tepco.co.jp/nu/f1-np/intro/outline/outline-j.html
           東京電力「柏崎刈羽原子力発電所 設備の概要
           http://www.tepco.co.jp/nu/kk-np/intro/outline/outline-j.html

          2011年8月1日月曜日

          原発におけるトラブルの記録



          0)データについて
           JNES 事象別トラブル情報 よりHTMLで表示させた情報をスクレーピング。
            2011年3月末ごろ現在で、1170件登録されていた。311福島については含まれていない。
            注意) このデータは経産省所轄で、かつ事業者からの報告があったもののみ。

            JCOにおける臨界事故1999.9.30発生  評価尺度4 や もんじゅのナトリウム漏れはいずれも旧科学技術庁の所管であり登録されていない。
           その後、2011年5月20日に報道された浜岡原発5号での復水器における配管破損も報告されていない(2011年5月27日現在)ので、トラブルのすべてが報告されているわけではないことに注意。
           また、重大なものではなく軽微なものも含まれている。具体的には上記のリンクからご自分で内容をご覧頂きたい。

           文科省管轄の研究炉 などにおけるトラブルは   事故・故障情報データベース「IINET」 に別途まとめられている。


          1)評価尺度の分布
              INES 評価尺度については 原子力防災基礎用語集:国際原子力事象評価尺度(INES)を参照

            福島原発は 尺度 7


          INES基準適用以降についてみると、安全性に影響しないと判断されたものがほとんどである。
           0-  249
           0+ 44
           1   29
           2   1(適用前だが遡って評価)
           7  1(福島原発)
            評価対象外   57


          2)施設別 件数上位のもの
           東海                                             101件   →廃炉ずみ
           敦賀1号機                                        81  
           大飯1号機                                        59
           東海第二                                          56
           福島第一1号機                                    54
           福島第一2号機                                    51
           大飯2号機                                        50
           高浜1号機                                        46
           高浜2号機                                        41
           美浜3号機                                        38
           美浜2号機                                        37
           浜岡1号機                                        36
           美浜1号機                                        32

          ・時系列でのトラブル発生状況 (経産省 所管の原子力発電所)


          出所)JNES 事象別トラブル情報 より作成。
          注)
          ・データの収録範囲は経産省所轄の商業炉が中心であることに注意。また、事業者が報告したものに限定されている。
          ・施設別に下から初トラブルが早い順にプロット。もっとも下にあるのは「東海」
          ・黒:INESトラブル基準分類 1   
          赤: 2もしくは3  
          グレイ:評価対象ではない、もしくは1未満

          ・号機まで明示されているのは各号機におけるトラブル。号機が示されていないものは下記のように記されており各号機に振り分けることができないもの。
           柏崎刈羽:7月16日に発生した新潟県中越沖地震後のパトロールにより、1から7号機の原子炉建屋オペレーティングフロア(管理区域)の全域にわたり、使用済燃料プールの水が溢水。
           泊:アスファルト固化装置の定期点検中、復水タンク内の清掃をしていた際、火災が発生し、従事者4名が負傷した。
          福島第二」雑固体廃棄物処理設備の焼却炉空気予熱器下部でボヤが発生
          これ以外の数件については、各号機に振り分けた。

          ・東海、浜岡1、2号機などは廃炉された。


          3)参考

          ・同氏は ニューシア 原子力施設情報公開ライブラリー も利用されたとのこと。

          原発従業者疫学調査について


          放射線影響協会による下記調査への疑問
           平成22年3月 原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査 

          ・これについての疑問点など。
           お断り。筆者は疫学についての専門家ではないので、この分野固有の分析手法、現象についてわからない部分も多い。しかし、統計モデルの定式化、提示すべき情報などについては学問分野によらず共通であるはずである。そこからわかる範囲でコメントする。
           この報告書では原発従業員と一般の人との比較「外部比較」と原発従業員内での被曝線量などについての「内部比較」が行われている。前者については一般の人と比較するには情報が不足していると考えられるので、後者についてのみ考察する。

          ・p.5の結論
           「内部比較では、累積線量の増加にともなう慢性リンパ性白血病を除く白血病の死亡率に有意の増加傾向は認められなかった。また白血病を除く全悪性新生物および喫煙関連の悪性新生物の死亡率に、累積線量の増加にともなう有意の増加傾向が認められた。しかし、これらの悪性新生物から肺の悪性新生物を除いた場合には、有意の増加傾向は認められなかった。非喫煙関連の悪性新生物の死亡率に、累積線量にともなう有意の増加傾向は認められなかった。これらの事実を勘案すると、今回認められた白血病を除く全悪性新生物の死亡率と累積線量との有意な関連は、生活習慣等の交絡による影響の可能性を否定できない。」

           日本語がわかりにくいので統計がわかる人は数表を見た方が早い。


          表1 死因別解析結果一覧
          ・確認
          この調査の対象の原発従事者の一人当たりの平均累積線量は13.3mSv(報告書p.32合計列によれば10年以上勤務はこのうち28.2%)。それでも、部位によっては統計的に有意に発症率を引き上げる可能性ありということ。

           (喫煙などとの交絡や多重検定の問題はあるが)、子供の保護を考えると、20mSVに引き上げるべきではない。

           xx mSV以下ならば安全という主張もみられるが、そもそもここでの分析は、そのような閾値モデルではなく、線型モデルを想定している(はずな)ので、死亡率-線量グラフの傾きが正である限り、1mSv被爆するとその分、死亡率は増加する(症状もある)。

           この傾きのパラメータが提示されていないので絶対値については評価できないが、SMRという値をみるとp<0.05の症状で、20mSV以下でも1を越えるものもある。慎重には慎重を期すべきである。

           そもそも、この傾きのパラメータが示されていないことがこの報告書の大きな問題である。唯一示されているのは、白血病(慢性リンパ性白血病を除く)についてのみ(p.38)。 -3.01/Sv とマイナスと直感に反する結果だが、90%信頼区間(-6.52;0.49)に0が含まれているので、有意ではないということのみ。
          概要をみるといかにも直線をあてはめて傾きのパラメータを推定したようにみえるが、傾きのパラメータを推定して公開したのは、この白血病のみ。

          同協会に確認したところ、ポアソン回帰によって傾きのパラメータ(過剰相対リスク)を推定したのは白血病のみ。上記の検定結果は、クロス集計表を用いたトレンド検定の結果であるという(報告書をよく読むと確かに書いてあった)。


          ・この報告書の印象
          低線量でも死亡率が増加するという結果が得られているようにみえるが、そうではないことにしようとしているようにもみえる。

          ・疑問点、改善方向
          ここに細かくコメントしたが、内部比較についての疑問、改善点は以下の通り。

          1)分析方法
           λ=λ0(1+d*被曝量)というモデルは「3.6 慢性リンパ性白血病を除く白血病(p。36)」にのみ適用したとの回答を得た。
          他の疾病についてはライフスタイル因子との交絡が疑われるため推定しなかったとのこと。しかし、しかし、他の研究(例えばこちら)では交絡効果をいれないモデルの推定結果も公開している。推定して、その結果(傾きのパラメータ)を提示すべきである。
           そもそも上掲表にあるように症例数の少ない白血病で線型モデルをあてはめて、それよりも明らかに症例数が多くより信頼性の高いパラメータが推定できそうな症例に対して線形パラメータをあてはめないという論理がわからない。
           クロス表のトレンド検定なので、セルの数は地域×年齢層×...と多くなり、度数0のものが多くなるはず。そもそもχ2検定が成立しているのかも確認すべき。


          2)線量のカテゴライズ
           個人別に線量は細かく測定、管理されているにも関わらず、10mSv以下、20mSv、、、のように5つに粗くカテゴライズしている。しかも、全サンプル27万人中、20万人が10mSv以下に割り当てられているという不適切なカテゴリ化。広島、長崎の被爆者データでも最小カテゴリは0-5mSvが設定されている。この研究の目的は低線量での被曝の効果をあきらかにすることであるので、カテゴライズするのではなく、そのままの値を用いて個人別に推定すべきである。

          白血病の線型モデルを推定する際も、このようにカテゴライズしたものを用いているよう。線量は5段階に区分せずにそのままの値を用いるべきである。

          3)交絡効果を入れたモデル
           交絡効果を測定したのは4万+4万(重複1万を差し引くと)7万人であるという。死亡数が少ないので交絡を入れたモデルは推定していないとの回答を得たが、上記の白血病の死亡数は170程度。
          第一次交絡調査後、疾病によって異なるが死亡数が170よりも大きい疾病は多くある。それらを用いて、交絡効果を入れたモデルは推定できるはずである(相関が高くなって推定不能となる可能性はむろんあるが)。

          →その後、交絡調査2の報告書から、喫煙量と被曝量の関係のクロス集計の連関係数を算出。
          0.016と低い値。下のように線量が多いほど喫煙量が大きくなるという明確な関係はみえない。交絡効果のせいにするべきではない。


          線量 mSv
          喫煙量 く10 10 20 50 100+ 合計 (サンプル数)
          <10 3% 3% 3% 2% 2% 3% 616
          -19 21% 23% 22% 21% 20% 22% 4547
          -29 46% 47% 46% 48% 48% 47% 9843
          -39 18% 18% 19% 20% 20% 19% 3910
          -49 8% 7% 7% 7% 8% 8% 1678
          -59 1% 1% 1% 1% 1% 1% 226
          60+ 1% 1% 1% 0% 1% 1% 161
          不明 1% 0% 1% 1% 1% 1% 136
          合計 100% 100% 100% 100% 100% 100% 21117

          出所)第Ⅲ期調査結果報告書(第2次交絡因子調査編:PDF) より作成。

          4)個人レベルのモデルによる推定
           原爆生存者データと同様、線型モデルの推定にはポアソン回帰モデルを利用。ポアソンモデルは、平均と分散が同じという極めて強い仮定をしている。しかし、原爆生存者データのコホートを確認したところ、あきらかに0の割合が高く、ポアソン回帰モデルを用いるのは不適切である。負の二項分布モデル、もしくはzero inflatedモデルなどを適用すべき。

           ただし、個人別に線量、生存か否か、死亡の場合はその原因が、得られているはずである。疫学の常のようだが、線量、地域、などによって層化(集計)して分析している。 これによって、個人別に測定されている線量などの情報が失われている。個人レベルでの二項ロジットモデル、亡くなられた日付についての情報も用いたハザードモデルなども適用可能であろう。
           さらに、多重検定の補正をしてあるが、どの疾病でなくなられたのかをモデル化するmulti-stage modelなど、多重検定を避けることは可能である。下に述べるように、そもそも従業員のリスクを重視するという立場からは多重比較の補正は必要ない。
          →被爆者データを用いた部位別推定がされているが、その際には多重比較の補正はしていない。

          5)データの公開
           できれば、放射線影響研究所が広島、長崎の被爆データを公開されているように、このデータもプライバシーに配慮した上で公開すべきである。

          6)多重比較
           16部位について検定したので、検定力を保つためにBonferroniの方法で調整したとのこと。これは例えば個別検定したp値を16倍してしまう方法(通常は有意と判断する有意水準5%を5%/16とする方が多いような気がするが、報告書を読むと、p値の方を16倍したものだと思われる)→報告書に記載のp値はこのような調整はしていない、そのままの値とのこと(下記参照)。

           クロス集計のトレンド検定のp値を16倍するのだから、影響がない(トレンドがない)という仮説が棄却されにくくくなってしまう。従業員、国民からみると、リスクはなるべく低い方がよいので、多重比較は不要だと考えられる。
           例えば柳川堯 (2002), 環境と健康データリスク評価のデータサイエンス (データサイエンス・シリーズ): 共立出版.   を参照のこと。
           
           上掲のp値が16倍したものであるならば、それを1/16すれば、補正前のp値になる。すると、16部位中14部位が5%水準で有意となる。
          →これらについて再度問い合わたところ、p値はそのような補正をしていないとのこと。多重比較の補正をしていない値なので、これを通常のように使えばよい。

          2012/2/4 追記
           その後同協会に、データを再分析すべきではないか、しないならば、こちらでさせてもらえないか、少なくともトレンド検定に用いたクロス表ぐらい公開しないかと要望したが断られる。
           米国では DOEが従業員調査個票を公開している(CEDR ブラウザ:Safariには非対応。IEもしくはFFで)。ユーザー登録が必要で、私が登録してもらえるかは不明だが、日本でもデータの公開が望まれる。
           ドイツ WISMUT社のウラン鉱山労働者データ が研究計画が認められれば利用可能。 

          電力需給2009-11について  (2011/7/14現在のデータに基づく)


          1.データ
          下記の二つのデータを用いて、東京電力の需給状況をみてみる。
          (1)TEPCO : でんき予報|過去の電力使用実績データ   
          2008年以降の365日×24時間毎の需給実績
           1976年以降の各地の365日×24時間毎 の気象データ
          (2)については東京を指定。24時間毎のデータも入手可能だが、指定するのが面倒なので、1日毎のデータを用いる。
          ダウンロードするのが面倒なので、(1)(2)とも2009/7/1-2011/7/12の期間を分析対象とする。

          2.概況
          上記期間での各年の最大需要電力量(ピーク電力需要量 万kW)は下記の通り。2011年は震災、原発によって夏ではなく、2/14がピークとなっている。
           2009/7/30 Thu 14:00       5450
           2010/7/23 Fri   14:00       5999
           2011/2/14 Mon 17:00       5150  参考)2011/7/11 Mon 14:00       4594

          ・需要量の多い時間帯
          右の図をみるとわかるように、夏期では10-18時ごろにピークがある。
          2011/2/14という冬期においては、真昼ではなく、8時、18時ごろにピークがある。
          2010年7月と比べて2011年7月はピーク部分が1500万kw程度減少。朝晩も300万kw程度減少している。
          図 各年のピーク電力量を記録した日の時刻別電力需要量

          ・気温と電力需要
          各日について、最高気温と最高需要電力量をプロット。年によって色分けした。各年とも20度を境にしたV字カーブ。夏は冷房、冬は暖房用に電力が消費されていることが推察できる。
          →暖房に電気を用いるのは無駄
          原発では発生した熱の4割程度しか電気に変換できない。つまり、6割の熱は捨てている。送電によるロスもある。火力発電所でも65%程度の効率。熱と電気の供給を組み合わせたコジェネなどを推進すべき。

          赤は2011年。温度の低い部分では2009-10年とほぼかわらないが、それよりも高い部分、つまり3月以降は、やはり需要量は減少している。
          図 最高気温と最高需給電力量

          3.夏期の電力需要量の推定
          上記のように夏と冬では電力の消費パターンが異なるので、2009,10,11年の5月から10月のデータを用いて、各日の最大需要電力を説明するモデルを推定する。
          前述のように電力量は1時間毎の値が得られているが、気象データについては1日の平均、最高などしか入手していない。このため、各日の最大電力を従属変数とする。現在、供給量が十分かが問題なので、ピーク電力量の規定要因を分析することには重要な意味がある。

          ・各種の要因が作用すると考えられるが、入手もしくは予想値を設定しやすい変数を用いることとする。
          気象データ  最高気温、湿度、風速、降雨量
          暦データ   年、月、曜日 2011/3/11後 ダミー変数
          ・結果
          モデルのあてはまりは、修正R2=0.876と単純なモデルにしては良好。残差の大きいものでは564万kwがあったが、これは気温が低いため暖房が増加した10月の日付。ここでは、夏を考えているので、これは無視。モデルや変数の定義を行えば、通年データでも推定できるはずだが、とりあえずこの結果で。

          下が推定結果。統計的に0でない係数には*がついている。
          最高気温が1度上がると電力需要量は90.75万kW増加する。
          湿度が1%上昇すると9.60万kW増加。風や降雨量は関係ない。
          3/11の震災以降平均して電力需要は228万kW減少している。
          5月を基準とすると、7-9月は需要量が増加。特に8月は314万kW増加。
          日曜を基準にすると、平日は需要量が増加。特に火曜は492万kW増加。
          時間帯では14時が+236。


          表 最大需要電力量についての回帰分析の結果

          推定値スイテイチt値アタイ有意水準ユウイスイジュン
          切片セッペン466.692.24**
          気象キショウ最高気温サイコウキオン90.7514.76***
          湿度シツド9.604.71***
          最大風速サイダイフウソク-13.91-1.27
          降雨量コウウリョウ-0.93-0.70
          暦コヨミ3/11以後イゴダミー-228.42-4.15***
          2010年ネンダミー311.447.45***
          6月ガツ-93.48-1.57
          7月ガツ223.192.89***
          8月ガツ314.153.74***
          9月ガツ156.412.06**
          月曜ゲツヨウ437.646.38***
          火曜カヨウ492.887.01***
          水曜スイヨウ470.756.68***
          木曜モクヨウ484.876.86***
          金曜キンヨウ450.636.21***
          土曜ドヨウ53.590.88
          10時ジ89.740.54
          11時ジ181.852.64***
          12時ジ-367.03-1.34
          13時ジ59.360.62
          14時ジ236.873.78***
          16時ジ120.141.48
          17時ジ47.830.35
          18時ジ76.601.18

          注)2009,10,11年の5月から9月の日次データ。N= 293。
          Multiple R-squared: 0.885, Adjusted R-squared: 0.876 
          エクセルからペーストしたらふりがなもつけられてしまった。

          ・グラフにしてみたのが下の図。
          推定に用いた5-9月の部分のみ示されている。
          黒、赤はそれぞれ電力需要量の実績値と内挿値。青は最高気温×150。
          気温と電力需要量は相似形であること、実測値と内挿値はよく似ていることがわかる。
          図 電力需要量の実績値、内挿値、最高気温

          ・このモデルからの最大需要量の予測
          このデータでの最高気温37.2度。最高湿度 88%。需要が最も大きくなる8月の火曜14時を想定して、上の推定式を用いると5494万kW。
          95%信頼区間は[5414,5574]
          東電の設備については こちらにまとめた。
          最近の報道では 東電、7月末供給力を5680万キロワットに上方修正 | Reuters  記事によると8月末でも5560万kWとのことなので、このままの節電、経済水準を維持し、とてつもない高気温にならない限り不足することはないだろう。
          東電で現在稼働中の原発は柏崎刈羽原子力発電所/の1,5,6,7号(計500万kW)。ちょっと頑張ればすぐに止めてもok。今後、定期点検で停止しても問題はないだろう。

          4.結論
          ピーク時は夏場の1日あたり数時間×数日。それにあわせて原子力発電を増強するのではなく、ピークカットのための太陽光発電などと併用すると効果的だろう。
          現在のような遠隔地に巨大発電所を設置、電気を遠距離送電。熱は捨てるという方式は無駄が多い。コジェネなどで熱と電気の供給を行い資源を有効活用。
          節電などのおかげで、東電関内では電力が不足することはないだろう。

          5. 課題など
          ・モデルのあてはまりの改善。
          時系列構造の導入(暑い日が連続すると、、、、)など。
          ・時刻ごとの推定。
          ・東京以外の気象データの利用。
          ・部門別の推定(データがあれば。本当に産業の空洞化が懸念されるのか?)

          6.追記
          節電による産業への影響が喧伝されるが、7/29に発表された経産省の商業販売額は前年同月比+2.9%、鉱工業指数(生産)は -1.6%程度。産業別に細かく見ると自動車などは落ち込みがあるが、全体で見るとさほどではないようである。(節電による産業空洞化?)
          7.追記2
           訂正)この夏の最大電力は8/18(木)14-15時の4922万kW   私の予測は5494万kW。 予測よりも10%以上節電したということ。冬はそもそも夏より1500万kW低いので余裕でok。