2013年2月11日月曜日



原子力災害対策指針(改定原案)に対する意見募集について
へのパブコメ 2013/2/11送信。



 2000文字以内の制限があるので、下記を数回に分けて送信。半角の記号などは受け付けないので半角はすべて全角に変換したので読みづらいかもしれない。また、分けてもある程度意味が通じるようにしたので、重複も多い。細かい点は確認していないので(確認するのは向こうの仕事)、誤認もあるかもしれない。

原子力災害対策指針(改定原案)に対する意見を書くためのいくつかの情報 - Togetter
も参照。



 「世界最高水準」をめざしているはずがだ、これはICRPの体系性に遙かに及ばない。このレベルで新指針とは、あきれてものがいえない。総論から各論の順に述べる。
0)総論
 これは旧安全委員会「原子力施設等の防災対策について」を変更しようというものである。旧安全委員会の防災WGがH23/10に検討開始。15回の検討を経て中間とりまとめを提出。規制委員会発足後は、そこで数回論じ9回目で中途案を提出。それに基づいて、今回の検討チームで数回の検討が行われたのみである。これで新しい指針を決定するのはあまりにも性急である。
 内容についても、福島原発災害で生じた各種の課題が明記、検討されておらず、このため指針の改定によって、それらがいかに解決されるかも議論不足である。この指針で、課題が解決されるとは到底考えられない。
 また、文中にICRP109、111やIAEAの指針について触れられているものの、それらで言及されている、集団別のリスクの考慮、移住、食品生産については生産者のみならず消費者や関係諸国とも協議するといった重要なポイントが抜けており「体系的」な指針ともなっていない。
 検討の手続きとしても、これらのプロセスで、地方自治体などからの意見は取り入れたようであるが、(EPZなどの設定など一部を除き)国民からの意見を取り入れていない。また、国民への説明も行っていない。
 このように内容においても手順にしても極めて問題が大きい。短期的には、このような中途半端な指針をつくるのではなく、ICRP109+111をそのまま訳出して対応することの方がよほど有益である。

 まずは、福島原発災害で生じた問題を整理、列挙する。ICRPなどの体系性を学んだ体系を提示すべきである。

2)福島原発災害での課題
 以下のような課題があったことを認識、明示すべきである。
・発生前
 各種の準備、周知不足。英語でいうところのpreparednessが国、自治体、東電、住民に欠けていた。
・発生から数日間
 情報の公開、提供の遅れにともなう、渋滞の発生、避難の遅れ。度重なる線引き変更、これによる死亡者をはじめとする住民への過大な負担。
 東電は3/11夕方には既に1号基の炉心溶融を予測(TMIが2時間で溶融したことを考えれば当然)したことすら秘匿したことによる対策の遅れ。

・数日から数ヶ月
 想定を越える被害地域の広がり。柏市など、200km離れた地域でもホットスポット。
 専門家と称する者によるICRPの議論からはずれた100mSV以下では健康影響は「ない」(統計的に検出されていないではない)、もしくは基準を10倍も上回る値を安全基準として伝えるような専門家の起用。これによる専門家への不信の増大。

・1ヶ月から現在
 除染、帰還を優先させた政策。ICRPには移住というオプションも明示されているが、これについてのまともな議論が行われていない。
 その他、現地での農作物の植え付け、出荷については、生産者の論理のみが優先されている。ICRP111では、生産者のみならず、消費者、その作物をとりこむ可能性のある国際的な利害関係者も含めて協議することを奨励している。日本の場合、消費者の意見すら吸収されず、一方的に生産が決定され、それにたいする恐れについては「風評」のラベルが貼られている。
 まずは、これらの課題を認識し、旧指針の問題点、それへの改善を考えるべき。


3)ICRP109/111程度は組み込んだ体系性
 ICRPの取り組みについて投稿者は原子力推進者による論理であると考えている。ただし、その体系性すら取り込めていないことが、福島原発災害対応への重大な問題である。ICRPの勧告のつまみ食いをした、ばらばらな対応を行ってきた。例えば、以下の点が挙げられる。
・子供、妊婦など高リスク集団の存在の無視。
・LNTを否定する専門家の起用
 ICRPではLNTモデルを採用しているのに対して、100mSv以下では健康への影響はないなど、LNTを否定する専門家を各種ワーキンググループに起用した。
・参考レベルの高い値の採用
 同様に参考レベル1-20mSvの下限に近づけることを勧告しているにも関わらず、上限である20mSvを許容レベルとした(かのようにとられる)。
・幅広いオプションの無視
 ICRP109では永久移住、避難の問題点、移住、など幅広く論じているにも係わらず、この指針では、これらについてはまったく論じられていない。

4)形式的な問題
・手順の問題点
 短期間であることは言うまでもないが、そのプロセスで国民の意見を取り入れていない。要点毎に国民の意見を取り込むべきであった。
・国民への説明や意見を
 この委員会に原発をとりやめるか否かを決定する権限、能力、意欲などがないことはあきらかではあるが、2030年には脱原発が決定されている。即座にやめることも可能である。それら原発の状況、ありかたを含めて国民に説明し、その意見を問うべきである。
 今回の指針についても同様に、説明、意見の反映を十分に行うべきである。ICRP111、109ではいずれもstakeholderの対話を充分に行うことが指摘されている。
・提示する情報について
 これは旧安全委員の旧指針からの変更である。新旧対応表もH24/10の案とではなく、旧安全委員会「原子力施設等の防災対策について」との比較をすべきである。
そうすれば、新しい指針によって、福島で生じた問題が解決できるのか否かが明確になる。
 なぜSPEEDIが消されたのかも説明が必要である。

・細かい語尾の使い分けの根拠の明示もしくは、義務として明示。
 必要がある、努める、しなければならない、など語尾が使い分けられている。使い分けの根拠を示すべきである。
 むしろ、つまらぬ使い分けよりは、すべては義務にすべきである。

・だれが行うのかの明記
 主語が明示されていない文が散見される。責任回避させないためにも、主語を明示すべきである。巻末の附表で述べているつもりかも知れないが、それらはあくまで補助的な図表 である。本文に入れるべきである。

5)取り入れるべき重要なポイント
前文
 旧安全委員会「原子力施設等の防災対策について」には、本報告書の位置づけとして、TMI、JCOなどの経緯が書かれている。今回(H24含む)は、明らかに福島原発災害を踏まえての改訂である。このことを明示し、さらにこの災害での原子力防災の問題点を明示する。本指針は、それへの積極的な対応をしたことを盛り込むべきである
・明らかになった課題
・発生前
 各種の準備、周知不足。英語でいうところのpreparednessが国、自治体、東電、住民に欠けていた。
・発生から数日間
 情報の公開、提供の遅れにともなう、渋滞の発生、避難の遅れ。度重なる線引き変更、これによる死亡者をはじめとする住民への過大な負担。
 東電は3/11夕方には既に1号基の炉心溶融を予測(TMIが2時間で溶融したことを考えれば当然)したことすら秘匿したことによる対策の遅れ。

・数日から数ヶ月
 想定を越える被害地域の広がり。柏市など、200km離れた地域でもホットスポット。
 専門家と称する者によるICRPの議論からはずれた100mSV以下では健康影響は「ない」(統計的に検出されていないではない)、もしくは基準を10倍も上回る値を安全基準として伝えるような専門家の起用。これによる専門家への不信の増大。

・1ヶ月から現在
 除染、帰還を優先させた政策。ICRPには移住というオプションも明示されているが、これについてのまともな議論が行われていない。
 その他、現地での農作物の植え付け、出荷については、生産者の論理のみが優先されている。ICRP111では、生産者のみならず、消費者、その作物をとりこむ可能性のある国際的な利害関係者も含めて協議することを奨励している。日本の場合、消費者の意見すら吸収されず、一方的に生産が決定され、それにたいする恐れについては「風評」のラベルが貼られている。

○子供など高リスク集団が存在することを認識。それに配慮した対策を行う。
 一律の線量ではなく、これまでの被曝者データの分析で明らかになっている、子供、女性など被曝による影響が高いことを明示。
(3)原子力災害の特殊性 の項に
 年齢性別によって影響が異なり、一般的には若年層、女性への影響が高い。
を明示。
 これを前提として、これらに配慮した基準設定を行う。
→表3の各線量は、こどもについては、その1/3を基準値とする。
 ヨウ素剤の服用についてだけでなく、避難等についても、これらを優先して行うべき。

○日本もしくはこの指針が考える放射線影響のモデルの明示
 ICRPではLNTモデルを採用しているのに対して、100mSv以下では健康への影響はないなど、LNTを否定する専門家を各種ワーキンググループに起用した。このような事態を避けるために、影響評価についてはLNTを用いることを明示する。
→例えば (3)原子力災害の特殊性 の項

○住民の意見を取り入れた計画の策定
 ICRPでも住民との対話、合意形成を重視している。世界に先駆けて、このような指針、防災計画立案についても、住民投票を経て計画を最終決定する。それが得られるまでは、原発の稼働は認めない。
 → 第2 原子力災害事前対策 の冒頭にこの点を明示する。

○ P10 情報提供は 「即座」に行うことの義務づけ。
 JCO、もんじゅ、福島についても事故の通報や状態の周知は必ず遅れている。東電が旧保安院に通報した資料などをみると、3/11夕方にはすでに1号基の炉心溶融の可能性があることが正しく予測されている。その他、ベントまえの風向き、拡散地域の予測などが通報されている。このような重要な生の情報は、送信された段階で公開すべきである。Faxなどで送信されたものをpdf化しWebに公開することは極めて容易である。
 同様に、
  p。34 (4)緊急時における情報提供
 →異常事態に関する事業者からの通報資料 を追加すべき。
  SPEEDIによる情報提供も遅滞なく行わせることを明示。

○ 原子力災害対策重点区域の設定
→米国では各原発のHPに、EPZ、避難先が明示されている。日本でも当然義務化させるべきである。

 原子力災害対策重点区域の範囲
 地域設定については単純に距離を目安として考えている。広い国土に広い道路、人口もまばらな米国ならば別だが、日本は、狭い国土に高い密度で居住し、道路も狭い。福島で経験したように、自家用車での避難は渋滞という深刻な問題を引き起こす。人口、人口密度、道路の容量などを精緻に見極めた実効性のある計画を立案し、実行可能な体制を整備すべきである。実行可能でない場合には原発の稼働を認めるべきではない。
直線距離だけでなく、道路、その通行可能量、人口を考慮した避難計画を策定しなければならない。所定時間に避難が不可能な場合には原発の稼働を認めない。

○p.18 PPA区域の拡大
 柏、東京でもいわゆるホットスポットが観測された。ここで議論されている地理的な範囲は狭すぎる。PPAについては200kmは最低限考慮すべきである。

○p.34  、災害時要援護者及び一時滞在者等に十分に配慮しなければならない
災害時要援護者及び一時滞在者等に伝達されるようにしなければならない

○(5)防護措置
 ・住民の取り得るオプション
 移住、長期避難を明示。
 避難、一時移転、屋内退避、それぞれのメリット、デメリット、国や原発災害責任者の賠償責任などもめて明示する。実際には、それらを提示して住民に選んでもらうことも明示。
○P。46 (5)除染措置
 原発事故によって放出される核種のうち主要なものはCs137は30年、Cs134は2年で半減する。無駄な除染を行わずとも(50%:50%の放出量であれば)4年待てば半減する。この間は避難することを優先することを明示。
○汚染地域での農作物
中長期対策
 ICRP111では汚染地域での食物の利用については、ICRP111(84)にあるように、生産者のみならず消費者、国際的な市場関係者とも合意形成することを奨励している。この点を取り入れるべき。
○全体に
・(原子炉規制法などで述べられているはずだが)原発労働者への配慮も記述。
・語尾の統一、義務化。
 必要がある、望ましい→しなければならない に全置換
・リスクコミュニケーション、安全文化 など意味のない概念を使わない。
 これらはそれぞれTMI,チェルノブイリ事故をきっかけとして強調されてきた。いずれも、設備や技術については問題はなかったことを建前として、人的、組織的過誤が事故の原因であるかのようにみせかけている。残念ながら福島原発災害については、HCIの地震による破壊など技術面での失敗の可能性が高い。よって、これらの言葉を用いることは不適切である。

○福島での課題への具体的対応の明示
 これらの対応によって,前文で挙げた課題類がどのように解決できるのかを明示。解決できなければ再検討すべき。
 以上