新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた御意見の募集について への意見
2000文字以内という制約があるので、下記を項目毎に切り貼りして十数回に分けて(ここから)提出。
独立しても読めるようにしてあるので、重複が多い。また、あまり体系だってはいない。
なお、意見募集システムは半角カナ(。・など)系や(自分たちの報告書には使っているのに)機種依存文字(丸数字等)を受け付けないので、それらを全角に変換したり削除して提出した。
その後も随時気づいた点を加筆、提出。
1.総論
1)反省のなさについて
電力システム改革に言及していることなど評価すべき点もないわけではない。ただし、「はじめに」において反省の必要性をうたってはいるものの、どこに問題があり、さらにその問題をどのように解決するのかが示されていない。
「政府及び原子力事業者は、いわゆる「安全神話」に陥り十分なシビア・アクシデント対策を講じることができず、このような深刻な事態を防ぐことができなかったことを深く反省しなければならない。このような事態を二度と起こさないようにするため、事故原因を徹底的に究明し、安全性向上のための努力を不断に講じなくてはならない。p.2」
このため、これまでに研究開発してきたにも係わらず成果の無い「もんじゅ」「核燃料サイクル」を反省も無く継続するとしている。さらに、技術的、経済的にも不可能な「消滅・減容処理」の強化など現状維持どころか原子力の拡大路線となっている。加えて、教育による原子力への理解促進といった旧来の押しつけ型のパブリックアクセプタンス手法を用いることまで明記されている。
この他、輸入したウランを準国産としたり、(ありもしない)経済への打撃の強調(p.6)、原発をやめることによって不要となるコストを無視した燃料輸入による赤字額の強調、活断層の考慮範囲や避難計画の整備などにおいて米国よりも遙かに甘いにも係わらず、世界で最も厳しい基準であるという、など、これまでに行ってきた虚偽説明手法をそのまま用いている。
これらからみても、何ら反省していないことは明らかであり、このような体制で進められた議論は無効である。
2)未解明の問題
今回の福島原発災害には未解明の問題や未対策の点が多い。それを明らかにせずに再稼働はあり得ない。以下にそれらの一例を挙げる。
・地震による配管等への影響
国会事故調では小規模破断の可能性を指摘している。その後、規制委員会「東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会」、東電「福島原子力事故における未確認・未解明事項の調査・検討結果~第1回進捗報告~」などでは小規模破断はないという暫定的な結論を出しているが、いずれもシミュレーションによるものであり目視などはされていない。この点以外にも、国会事故調や東電の「未確認・未解明事項」も50以上が残っている。
万が一、破断がなかったにしても、津波前に純水タンクの座屈、夜の森線の送電塔倒壊などが生じている。震源でのM9が強調されるが、気象庁の記録によると福島第一原発近辺の震度は6+程度であった。その程度の地震で、これらが生じたわけであり、原因の解明が必要であり原子力の利用を考える段階に無い。
・制度や風土についての解明
東電は過去にも点検による異常検出の隠蔽などを行ってきた。今回の災害においても国や同社は、メルトダウンはない、SPEEDIの情報提供の遅れなどの問題を招いた。さらには、低線量WGに代表されるように、一方的な見方を持った委員の重用、それによる甘い基準での対策などが行われている。このような電力会社、電事連、国、自治体などの各レベルにおいて、原発事故を招いた制度、組織風土などの問題が存在するはずである。それらの問題点はおおよその姿は想像できるものの明らかにされず、対策もとられていない。
国会事故調は規制の虜と指摘している他、米国原子力学会の「FUKUSHIMA DAIICHI: ANS
Committee Report 」http://fukushima.ans.org VI. Societal Context for the
Fukushima Daiichi Accident によると、県が原子力発電所の立地や運転に伴って交付金や税金を受ける一方で、操業の認可も行うという利益相反の問題が指摘されている。これら以外にも、今回の議論の進め方にみられるように経産省による恣意的な委員の選任、経産省OBなど、原発推進派を中心とした議論など、明らかに制度、風土の問題は解明も解決もされていない。このような制度、風土で原発を再稼働させれば、再度同様の事故が発生するだろう。原発は利用すべきでは無い。
3)不完全な対策
福島原発災害の原因の解明が済んでいないため、以下のように対策も不完全である。
・複数基設置、使用済み燃料建屋内併設の許容
福島事故でもっとも明確な技術的問題は、同一サイト内に、複数基を設置し、さらに建屋内に使用済み燃料プールを設置するという、リスク集中型の設置である。それを解消せずして原発の立地はあり得ない。
・世界で最も厳しくない基準
「独立した原子力規制委員会によって世界で最も厳しい水準の新規制基準の下p.18」とあるが、これは嘘である。
例えば活断層について、米国NRCでは、原発から20マイル以内範囲の長さ1マイル以下のfault、200マイル以内の長さ40マイルのfaultも考慮している(SEISMIC
AND GEOLOGIC SITING CRITERIA http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part100/part100-appa.htmltab
1。さらに、1度のみの移動については3.5万年、繰り返し移動については50万年前まで考慮されている。
これに対して日本の場合12-3万年の範囲で、地層が明確でない場合には40万年遡るとしており、これらの点においては世界で最も厳しいわけではない。このような虚偽を含む本意見は撤回すべきである。
・世界で最も甘い国や自治体の制度
日本の場合、競争原理の導入は限定的であり、かつ包括原価制度にみられるように、様々なコストを電気料金に課すことができる。最近は廃炉後の費用まで課すことができるようになった。地域には交付金も与えられ、安全性のチェックではなく、金銭の方を重視する傾向にある。
最近は直接的な天下りなどは行われてはいないようだが、経産省OBや立地自治体の長を委員として起用するなど、推進側に甘い体制には変わりがない。
前述のように、米国原子力学会の「FUKUSHIMA DAIICHI: ANS Committee Report
」http://fukushima.ans.org VI. Societal Context for the
Fukushima Daiichi Accident によると、県が原子力発電所の立地や運転に伴って交付金や税金を受ける一方で、操業の認可も行うという利益相反の問題が指摘されている。
これら甘い制度は温存されており、相変わらず安全軽視で推進に偏った議論である。このような状態で稼働することはあり得ない。
4)技術的、経済的な評価の不十分さ
・技術的、経済的に不可能な事業の継続
常陽の頃から考えると40年間、成果のない高速増殖炉である「もんじゅ」、ガラスの連続溶融部分の不具合という入り口で失敗している六ヶ所村の再処理工場が継続されている。さらには再処理した使用済み燃料を高速増殖炉で転換しようという、これら失敗した二つの技術を前提とした変換処理の推進が明記されている。これについては、検討委員会が示しているように、可能性を実証すること自体、経済的な制約に直面している他、前述の状況を勘案すると、実用プラントレベルで技術的に検証できるレベルに達することもできないだろう。
この案では触れられていないが、原子力では「むつ」、新型転換炉「ふげん」のように、時間、費用とも浪費し環境を汚染したプロジェクトが存在する。それらのコストを無視した議論は無意味であり、この意見自体を撤回すべきである。
・世界のトレンドから大きく遅れた議論
米国では最近、建設開始されたものがあるが、TMI後原発は新規立地されておらず、40年の基準前に廃炉されるものが多い。さらに、NY州のShoreham Nuclear
Power Plantのように建設したものの反対運動や、実効的に避難経路を確保することができないことなどによって、稼働しないままに廃炉となった。
このように、原子力発電所は経済的にも成立しないことが明らかとなっている。日立、東芝、三菱重工などの大メーカー、東京電力、関西電力などの電力会社、これら巨大企業を保護し、優遇すること自体世界のトレンドから大きく遅れた恥ずべき意見である。直ちに撤回すべきである。
5)計画の策定方法の不備
昨年度の(不十分であった)国民的議論で原発はゼロをめざすことが合意された。この傾向は最近の新聞各社の世論調査でも不変である。それを20名程度の推進派委員を中心とした議論で方向転換することはありえない。万が一変更するのであれば衆議院を解散し原発を争点とした選挙を行うべきであろう。
少なくとも国民投票は行うべきであろう。いずれにしても拙速で不十分な進め方である。
2.個別の論点
以下、該当するページ、引用をイタリックで示し、それへの意見を述べる。
p.5
「2.化石燃料への依存の増大とそれによる国富流出、供給不安の拡大
「現在、原子力発電の停止分の発電電力量を火力発電の焚き増しにより代替していると推計すると、2013年度に海外に流出する輸入燃料費は、東日本大震災前並(2008年度~2010年度の平均)にベース電源として原子力を利用した場合と比べ、約3.6兆円増加すると試算される。
海外からの化石燃料への依存の増大は、資源供給国の偏り」
→円安誘導の政策が燃料輸入費用増大の主要な要因である。このような誤った認識の意見、計画は撤回すべきである。
p.6
「3.電源構成の変化による電気料金上昇とエネルギーコストの国際的地域間格差によるマクロ経済・産業への影響
(1)電気料金の上昇とその影響
「固定価格買取制度に基づいて導入される再生可能エネルギーは、今後増加していくと考えられ、電気利用者の負担の上昇要因となっていくと考えられる。電気料金の上昇は、電力を大量に消費する産業や中小企業の企業収益を圧迫し、人員削減、国内事業の採算性悪化による海外への生産移転、廃業等の悪影響が生じ始めている。
」
→生産移転はここ数十年で進展しており、新たな移転は多くはない。さらに政策投資銀行の調査 http://www.dbj.jp/investigate/r_report/pdf_all/106all_3.pdf p.73 によると日本企業が「国内ではなく海外生産を行う理由は、人件費など製造コストの低さが最大」であり、「日本国内の電力供給不安」という選択肢は最大3つ選べるにも係わらず0.0%である。上記のような記述はまったくの虚偽である。
p.7
「5.東西間の電力融通、緊急時供給など、供給体制に関する欠陥の露呈
(1)電力供給体制における問題
「老朽火力発電所を含め、火力発電をフル稼働させることで補っている状況にあり、発電施設の故障などによる電力供給不足に陥る懸念が依然として残っている。」
→原発に依存し火力などの発電施設の整備を怠った企業、政府の経営センスの問題である。ガスコンバインド施設などに更新すべきであった。このような経営責任を問うべきである。
また、例えば神戸製鋼は神戸市近郊に最新鋭の火力発電所を設置している。このような施設を導入するインセンティブシステムを導入すべきである。そのためにも送電線の国有化もしくは他社接続の義務化など、参入促進策を進めるべきである。
p.8 6.エネルギーに関わる行政、事業者に対する信頼の低下
「東京電力福島第一原子力発電所事故以前から、事故情報の隠蔽問題や、もんじゅのトラブル、六ヶ所再処理工場の度重なる操業遅延、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定の遅れ等、原子力政策をめぐる多くのトラブルやスケジュールの遅延が国民の不信を招いてきた。」
→原子力分野における人材の劣化(申請、取得特許の数、研究費、学生数いずれも80年代から一貫して減少している http://nonuke2011.blogspot.jp/2011/09/80.html 。遅れている根本的な原因は工業的レベルでこれらを実施する技術能力が存在しないことである。これらを考慮すると、上述の技術自体が実現する可能性は皆無である。このことを認識して直ちにこれら計画を中止すべきである。
p.10
10.新興国を中心とした世界的な原子力の導入拡大
→各国が導入すればウランへの需要が増加し、価格も上昇することを考慮すべきである。
p.12 第2章 エネルギー政策の新たな視点
→ 経済のみに注目している。倫理にも注目すべきである。
なお、経済性に注目するのならば、もんじゅをはじめとした開発についても投入費用、成果についての経済性を評価すべきである。
p.18
「安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する。 」
→福島原発災害後、原発なしでも火力、節電で充分である。原発は柏崎も中越地震のとき不適合が数千件発生し、それを修復するために数年停止した。女川原発でも大震災の影響でタービンの羽が破損した。このように原発は、地震の際に今回のような災害を引き起こす可能性があるだけでなく、地震の影響によって破損し、長期に停止しかねない不安定な電源である。
このような危険な設備は稼働せず直ちに廃炉することが最適である。人材については、現在の状況をみるとあきらかなように、日本の原発技術はさして重要ではない。特に廃炉については、ロボット工学、機械工学、プラント工学などの知識の方が重要化すると考えられる。原子力よりは、これらを進行すべきである。
P.28 「(4)国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築
①東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた広聴・広報
「東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、国民の間に原子力に対する不信・不安が高まっているとともに、エネルギーに関わる行政・事業者に対する信頼が低下している。
この状況を真摯に受け止め、その反省に立って信頼関係を構築するためにも、原子力に関する丁寧な広聴・広報を進める必要がある。このため、原子力が持つリスクや事故による影響を始め、事故を踏まえて整備した規制基準や安全対策の状況、重大事故を想定した防災対策、使用済燃料に関する課題、原子力の経済性、国際動向など、科学的根拠や客観的事実に基づいた広報を推進する。また、原子力立地地域のみならず、これまで電力供給の恩恵を受けてきた消費地も含め、多様なステークホルダーとの丁寧な対話や情報共有のための取組強化等により、きめ細やかな広聴・広報を行う。さらに、世代を超えて丁寧な理解増進を図るため、原子力に関する教育の充実を図る。」
→これまでも国や電力会社は多額の費用を原子力の広報に投入してきた。その内容は、原子力は安全ということを主張するものであった。
「原子力が持つリスクや事故による影響を始め、事故を踏まえて整備した規制基準や安全対策の状況、重大事故を想定した防災対策、使用済燃料に関する課題、原子力の経済性、国際動向など、科学的根拠や客観的事実に基づいた広報を推進する。」とあるが、現在すでに行われている広報では、放射線のリスクは喫煙よりも低いなど、放射能をまき散らした東京電力、その背景にある国や自治体の無策、責任をまったく無視した内容である。
すでに国民的議論によって決したように原発ゼロが基本的方針である。原発推進につながる教育は不要である。
p.29
「立地自治体等との信頼関係の構築
「我が国の原子力利用には、原子力関係施設の立地自治体や住民等関係者の理解と協力が必要であり、こうした関係者のエネルギー安定供給への貢献を再認識しなくてはならない。一方、立地自治体等の関係者は、事故に伴って様々な不安を抱えている。また、原子力発電所の稼働停止やその長期化等により原子力立地地域では経済的な影響も生じている。国は、立地自治体等との丁寧な対話を通じて信頼関係を構築するとともに、原子力発電所の稼働状況等も踏まえ、新たな産業・雇用創出も含め、地域の実態に即した立地地域支援対策を進める。」
→相変わらず交付金という金銭で地方に立地するという方法である。経済的に本当に優位であるならば、このような国からの援助無しで成立するはずである。
さらに「丁寧な対話を通じて信頼関係を構築する」とあるが、対話とは、お互いの主張を聞き入れつつ、譲歩の可能性もあることを意味する。これまで行われてきたのは、対話というが、国が決めた方策を譲ることはない、一方的なパブリックアクセプタンスである。そのような手法を前提とした本意見、計画は意味がない。
新たな産業を創出するならば、直ちに廃炉し、廃炉事業の展開、さらには再生エネルギーの立地などを振興すべきである。
p.23 1. 原子力政策の基本方針
(1)原子力政策の出発点-東京電力福島第一原子力発電所事故の真摯な反省
→反省という見出しはついているが、そもそも事故の原因解明もされておらず、それに対しての反省もされていない。
p.23(2)エネルギー政策における原子力の位置付けと政策の方向性
「原子力発電は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで供給が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として」
→安価ではないことは事故処理にかかる費用の大きさ、廃棄物処理費用などからも自明である。 さらに、万が一、原発を再稼働するにしてもこれまでの稼働率は70%台であり、今後、老朽化に伴うトラブル、長期の点検などが増加することを勘案すれば、コストがさらに高くなることが明らかである。
さらに、輸入に頼っているウランを準国産といったり、政府などの原子力への認識は事故前とまったく変わっていないことが明らかである。このような体制の元で原発を稼働すれば、再度の事故が発生するのは確実である。震災後約3年、原発ほぼなしで若干の節電によって何の問題も生じていない。即時ゼロはきわめて現実てきな方策である。
再生エネルギーはエネルギーの自給率を高めるだけでなく、消費地に近い場所に立地させる分散型立地が可能であり、送電のロス、地域における雇用の増大など原発に比べてメリットが大きい。
中長期的には高効率火力への移行、その間に再生エネルギーの充実を図ることがもっとも国益に適う方策である。
p.26高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化
「高レベル放射性廃棄物については、ⅰ)将来世代の負担を最大限軽減するため、長期にわたる制度的管理(人的管理)に依らない最終処分を可能な限り目指す、ⅱ)その方法としては現時点では地層処分が最も有望である、との国際認識の下、各国において地層処分に向けた取組が進められている。我が国においても、現時点で科学的知見が蓄積されている処分方法は地層処分である」
→日本学術会議は「高レベル放射性廃棄物の処分について」で下記のように回答した (http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf)。つまり、科学的に「現時点では地層処分が最も有望である」という知見は少なくとも日本では得られていない。乾式キャスクにおける廃炉した原発サイトにおける暫定保管することが最も現実的であろう。
「(2) 科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保
地層処分をNUMO
に委託して実行しようとしているわが国の政策枠組みが行き詰まり
を示している第一の理由は、超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに当たっ
ての、現時点での科学的知見の限界である。安全性と危険性に関する自然科学的、工学
的な再検討にあたっては、自律性のある科学者集団(認識共同体)による、専門的で独
立性を備え、疑問や批判の提出に対して開かれた討論の場を確保する必要がある。p.iii」
「同時に、日本は地層処分を選択している先進国の中では地殻変動が特に活発な国の1
つであり、そのような日本固有の特性についても、十分に勘案する必要がある。特に地
層処分の前提となる安定した地層の存在の確認には、慎重な精査が必要である。(日本学術会議p.6)」
p.27
最終処分について、
「最終処分場の立地選定にあたっては、処分の安全性が十分に確保できる地点を選定する必要があることから、国は、科学的により適性が高いと考えられる地域を示す等を通じ、地域の地質環境特性を科学的見地から説明し、立地への理解を求める。」
→とあるが、日本学術会議は「高レベル放射性廃棄物の処分について」で下記のように回答した (http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf)。説明の方法など小手先の問題ではないのである。
地層処理という方策自体を見直す必要がある。具体的には、同会議が下記(3)で示した暫定保管がもっとも有力であろう。廃棄物を増やさないためにも即時原発ゼロとし、廃炉サイトに暫定保管することが技術的にも地域の雇用確保という点からも現実的である。
「(1) 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し
これまでの政策枠組みが、各地で反対に遭い、行き詰まっているのは、説明の仕方の不十分さというレベルの要因に由来するのではなく、より根源的な次元の問題に由来することをしっかりと認識する必要がある。また、原子力委員会自身が2011 年9月から原子力発電・核燃料サイクル総合評価を行い、使用済み核燃料の「全量再処理」という従来の方針に対する見直しを進めており、その結果もまた、高レベル放射性廃棄物の処分政策に少なからぬ変化を要請するとも考えられる。これらの問題に的確に対処するためには、従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、見直しをすることが必要である。(日本学術会議p.iii)」
「(3) 暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築
これまでの政策枠組みが行き詰まりを示している第二の理由は、原子力政策に関する
大局的方針についての国民的合意が欠如したまま、最終処分地選定という個別的な問題
が先行して扱われてきたことである。広範な国民が納得する原子力政策の大局的方針を
示すことが不可欠であり、それには、多様なステークホルダー(利害関係者)が討論と
交渉のテーブルにつくための前提条件となる、高レベル放射性廃棄物の暫定保管
(temporal
safe storage)と総量管理の2つを柱に政策枠組みを再構築することが不
可欠である。(日本学術会議p.iii)」
p.27 3)放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発
これについては、原子力委員会が2009年に「分離変換技術に関する研究開発の現状と今後の進め方」をまとめた。そこで指摘されているように、これは燃料を意図した核種に分離する技術、それを変換する技術に大別される。
前者は燃料の再処理、後者については今回の計画では高速増殖炉を利用することが前提となっている。常陽の頃から考えると40年間、成果のない高速増殖炉である「もんじゅ」、ガラスの連続溶融—固化を行う煉瓦部分の不具合という入り口で失敗した六ヶ所村の再処理工場。これら失敗した二つの技術を前提としている。
これについては、検討委員会が示しているように、可能性を実証すること自体、経済的な制約に直面している他、前述の状況を勘案すると、実用プラントレベルで技術的に検証できるレベルに達することもできないだろう。
このような見通しのない技術に固執する必要はなく、全量、ワンスルー方式にせざるをえない。
p.40 4.再生可能エネルギーの導入加速~中長期的な自立化を目指して~
→潮力がまったく無視されている。IPCC SRREN report, ch6(http://srren.ipcc-wg3.de/report)では日本近海は潮力発電の有望な場所としてあげられている。原子力関係の成果の見込みのない研究開発に投資するよりは潮力の方がよほど確実である。
p.60(3)エネルギー教育の推進
→これまでも国や電力会社は多額の費用を原子力の広報に投入してきた。その内容は、原子力は安全ということを主張するものであった。
「原子力が持つリスクや事故による影響を始め、事故を踏まえて整備した規制基準や安全対策の状況、重大事故を想定した防災対策、使用済燃料に関する課題、原子力の経済性、国際動向など、科学的根拠や客観的事実に基づいた広報を推進する。」とあるが、現在すでに行われている広報では、放射線のリスクは喫煙よりも低いなど、放射能をまき散らした東京電力、その背景にある国や自治体の無策、責任をまったく無視した内容である。
すでに国民的議論によって決したように原発ゼロが基本的方針である。原発推進につながる教育は不要である。
p.60 2.双方向的なコミュニケーションの充実
→ 上部にさらに「丁寧な対話を通じて信頼関係を構築する」とあるが、対話とは、お互いの主張を聞き入れつつ、譲歩の可能性もあることを意味する。これまで行われてきたのは、対話というが、国が決めた方策を譲ることはない、一方的なパブリックアクセプタンスである。そのような手法を前提とした本意見、計画は意味がない。
新たな産業を創出するならば、直ちに廃炉し、廃炉事業の展開、さらには再生エネルギーの立地などを振興すべきである。
p.60 2.双方向的なコミュニケーションの充実
仏国では、1981年に「地域情報委員会(CLI)」を導入し、原子力施設立地地域の情報共有の場を設置している
→ドイツでは 、ドイツ(脱原発)倫理審査会を設置し、国民的議論を行い、脱原発を決定した。原発は、情報の秘匿、(原発は安価、安全、なければ経済が破綻、など)虚偽の情報提供、立地のための分断工作、安全面への配慮を欠いたコスト削減など、経済面のみを重視してきたことに大きな問題がある。倫理的な面こそ最優先すべきであり、そのような委員会こそを設置し、脱原発の方向を決定すべきである。