へのコメント
色々書いて調べているうちにANNEX公開前日となってしまったので、とりあえず公開。
年度がかわって福島県のHP,URLが変更されたので、リンク切れの可能性あり。
4/2にこちらにVolume I が公開された。
年度がかわって福島県のHP,URLが変更されたので、リンク切れの可能性あり。
4/2にこちらにVolume I が公開された。
1 Major points
1)資料について
2011年9月までに入手した情報を中心に用いており、検討に用いた情報が不十分である。日本国民として、より広範で、新しい情報を利用することを望む。本レポートへのresolutionにはリオ宣言の原則10が適用されるとある[1]。UNSCEAR委員だけでなく、市民からの情報提供も求めるべきである。
具体的には少なくとも「国会事故調報告書」「福島県健康管理調査」を考慮すべきである。
(1)国会事故調報告書
The National Diet of Japan Fukushima Nuclear Accident
Independent Investigation, N. Main Report:
(以下NAIIC)
Ch.4.
Overview of the damage and how it spread
事故の進展 東京電力や政府事故調では指摘されていない、津波ではなく地震による破断の可能性などが指摘されている。
Ch.3.
Problems with the nuclear emergency responseおよび Appendices Survey
of the evacuees
NAIICは住民へのアンケート調査を行っており、避難の実態が明らかにされている。後述するように避難はスムーズに行われなかったことがわかる。線量推定の際にもこのことは考慮すべきである。
(2)福島県健康管理調査 Fukushima Health Management Survey
福島報告書paragraph 42でも簡単に触れられているが、外部線量の推定、甲状腺スクリーニング、WBC測定の結果が公表されている。
UNSCEARも独自に線量を推定しているが、この調査の結果を参考にすべきである。
また、25万人を対象とした甲状腺スクリーニングの結果75例の甲状腺ガン(もしくはその疑い)が発見された。これについても検討すべきである。
福島県 県民健康管理調査検討委員会
最新は第14回「県民健康管理調査」検討委員会2014年2月7日開催
Survey
Results of Fukushima Health Management Survey
英語版
Proceedingsof the 14th Prefectural Oversight Committee Meeting for Fukushima HealthManagement Survey
2)分析について
2012年9月頃までのデータしか用いられていない。最新のデータを用いるべきである。線量などの推定値は図に示されているが、数値がわからない。また、その後、福島健康調査などによって住民の被曝量の推定値が得られている。それらとの比較を行うべきである。
2. Dose assessment (a) Members
of the publicについて、パラグラフ30で20km圏内、31で福島市、その他福島県について推定結果を述べているが地区別での推定値が示されていない。WHOは市町村別に線量推定を行った[2]。UNSCEARでも推定すべきである。Figure Deposition of caesium-137 よりも重要な情報であり、推定したのであれば、報告書にも掲載すべきである。
なお、1)で述べたように2012年9月頃まではなく最新のデータを用いるべきである。さらに、WHOだけでなく、福島健康調査での外部線量などとの比較を行い妥当性を検討すべきである。
3)日本語情報の英訳もしくは解釈について
後述する「環境省甲状腺調査」について、この報告書では福島での甲状腺調査の結果と大差ないと述べている(paragraph 42)。「環境省甲状腺調査」は、0-2才を含まず福島調査よりも平均年齢が4才高い。また、女性の割合が高く、都市部住民が中心であるといった差異があり福島と比較することには注意が必要である。日本語の「環境省甲状腺調査」報告書[3]にはこのことが記述されているが、本報告書ではそのことに触れず" Data from similar screening protocols in areas not affected
by the accident imply that the apparent increased rates of detection among
children in Fukushima Prefecture are unrelated to radiation exposure(paragraph
42)"と結論づけている。
日本語資料の翻訳提供が不十分である可能性がある。1)とも関連するが、広く資料を利用し、日本語のものは正しく翻訳提供すべきである。
4)記述について
線量に関する説明で、100mSv(もしくは100mGy)以下という記述が5回も行われている。
Paragraph
32 Some infants may have received thyroid doses of 100 mGy
or more.
35 while 0.7 per cent of the workforce received doses of
more than 100 mSv.
40 The number of infants that may have received thyroid
doses of 100 mGy is not known with confidence;
41 More than 160 additional workers received effective doses
currently estimated to be over 100 mSv,
41 Workers exposed to doses above 100 mSv will be specially
examined,
100mSvに閾値があるかのようにとられる恐れがあるので、100mSv以下であるという記述はやめるべきである。なお、原子力発電所従業者については5年間で100mSv(緊急時は250mSv)が上限とされているので、一定の意味はあるが、実際の分布をみてもmedianは100mSvよりも低い。100mSv以下であるという記述はやめて、個々の分布の中央値などを明示すべきである。
4)加えるべき項目について
NAIICには、規制の甘さ、規制を緩和させようとする電力会社の行動、事故発生時の国、県の対応などの問題点が明示されている。しかし、本レポートではそれらがまったく記述されておらず、何の問題もなくすべて地震、津波に問題であるとしているようにみえる。UNSCEARなので、科学的な側面に注目することは理解できるが、少なくとも以下の問題にも注目すべきである。
(1)避難のための指示の遅れ
NAIIC(2012) ch. 4にあるように指示や避難は円滑に行えたわけではない。SPEEDIからの予測情報の伝達、活用の遅延など、大きな問題があったことに注意すべきである。
(2)初期における測定が不十分であることとその理由
環境モニタリングについては停電などのために行えなかったが、そもそもバッテリーを装備した装置にすべきであった。また、蓄積されたSPEEDIからの予測データを容量がいっぱいになったからといって消去した例もある[4]。
さらに、2013年3月になって、福島第一原発南西20kmの川内村での3月12日以降の測定値が発見された[5]。これによると川内村診療所(3月13日から記録)では3月15日10:00台には14.71μSv/h 、11:00台には31.82μSv/h、3月21日23:00の6.34μSv/h 等のスパイクが観測されている。
同様に、川内村県道小野・富岡線割山トンネル出口では、3月15日9:00台から線量が上昇し、10時には32.92μSv/h、11時には44.58μSv/hに達した。3月21日22時には10.24μSv/hが観測された。これらはソースタームの推定に影響を与える可能性のあるデータである。
(3)専門家、政府などへの信頼の低下
なお、国や電力会社への信頼がいかにあてにならないものかは、NIAACを読めばわかる。放射線に関しても、例えば長崎大学の山下教授が、事故直後に福島県内で行った講演で100μSv/hまでの(空間)線量であれば健康に被害はないと誤った情報を与えた[6]。この例に代表されるように、専門家への信頼喪失も住民に大きなストレス、コンフリクトを与えていることにも注意すべきである。
また、福島医大の健康管理センター「100mSv以下でのあきらかな健康への影響は確認されていません。」 に典型的にみられるように、閾値を想定しているように聞こえる。しかし、UNSCEARでは実証データに基づいてLNTモデルが支持されている。このような科学的知見を踏まえない説明も専門家への信頼低下をまねいていることを記述すべきである。
(4)利益相反の明示
利益相反の可能性もあるため、UNSCERレポートは日本政府からの依頼によって開始され、資金提供を受けていること、金額を明示すべきである[7]。さらに各TGの担当者の決定プロセスやTG内での特に日本からの情報提供者、提供方法についても説明すべきである。
2.各箇所へのコメント
番号は報告書のパラグラフ番号に対応。
23 “On 11 March 2011, at
14.46 local time, a 9.0-magnitude earthquake occurred”
震源におけるMagnitude は9だが福島原発近辺での震度は6+、東日本大震災での最大震度は女川原発近辺での7である。震度は6+程度であったにも係わらず、津波到達前に純水タンクの座屈、電源供給鉄塔の倒壊などが生じた。さらに国会事故調が指摘するように、小規模LOCAが生じていた可能性もある。なお、参考までに2007年の中越地震での柏崎刈羽原発近辺では6-であった[8]。
24.
As an immediate response, the Government of Japan recommended the evacuation of
about 78,000 people living
NAIICのアンケートによると[9],3/11夜に避難勧告が発令されたが実際に避難が開始されたのは翌朝以降である。1号基がベントされた3/12午前、水素爆発した15:36においても20km圏外住民のほとんどは避難していない。さらに3号基が爆発した3/14 11:01においても飯舘村住民の大部分は避難していない(Fig 4.2.2-3)。
なお、20km圏内の住民は比較的早く避難を開始したが、日本政府や福島県のモニタリング等の不備により、ほとんどの住民が調査の行われた2012年3月までで2カ所以上に避難しなおした(Fig 4.2.2-3)。その中には、空間線量の高い地域に避難した者もいる[10]。
このように避難勧告は出されたが、避難は円滑に行われていないことを認識し、” 2. Dose assessment”での被曝線量の推定も行うべきである。
NAIIC(2012),Ch.4,p.15
http://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/wp-content/uploads/2012/08/NAIIC_Eng_Chapter4_web.pdf
ibid
Ch.4,p.16,.
24. 後半 However, the evacuations themselves also had
repercussions for the people involved, including a number
of evacuation-related
deaths and the subsequent impact on mental and social
well-being (for example,
because evacuees were separated from their homes and
familiar surroundings, and
many lost their livelihoods).
このように記述するならば、mental
and social well-beingが重要なインパクトを与えたという科学的な根拠を明示すべきである。福島県健康管理調査では「こころの健康」についてもアンケート調査を行っている。少なくともその結果に基づくべきである。
25.
The information reviewed by the Committee implies atmospheric releases of
iodine-131
and caesium-137 (two of the more significant radionuclides from the
perspective
of exposures to people and the environment) in the ranges of 100 to
500
petabecquerels (PBq) and 6 to 20 PBq, respectively; for its further work, the
Committee
used estimates that lie within those ranges. These estimates are lower,
indicatively,
by a factor of about 10 and 5, respectively, than corresponding
estimates
of atmospheric releases resulting from the Chernobyl accident. Winds
transported
a large portion of the atmospheric releases to the Pacific Ocean. In
addition,
liquid releases were discharged directly into the surrounding sea. The
direct
discharges amounted to perhaps 10 and 50 per cent of the corresponding
atmospheric
discharges for iodine-131 and caesium-137, respectively; low-level
releases
into the ocean were still ongoing in May 2013.
iodine-131については、モニタリングデータが極めて少なく、初期放出量の推定には大きな不確実性があることを認識すべきである。放出量はチェルノブイリの1/5、1/10ではあるが、影響を受けた人数はほぼ同等であることを明示すべきである。
“low-level releases into the
ocean were still ongoing in May 2013.”とのべている。日本の安倍首相は同年9月のオリンピック招致委員会において、汚染水はシルトフェンス内に収まっており、海洋への放出はないと述べた。これは誤りであることをUNSCEARは指摘すべきである。
27.
The Committee has made estimates of the radiation exposures of various
categories
of people, namely: members of the public exposed as a result of the
release
of radioactive material into the environment; occupationally exposed
workers
employed at the Fukushima Daiichi nuclear power station at the time of the
accident
and those subsequently involved in on-site recovery operations; and
emergency
personnel involved in on-site and/or off-site activities.
その後、除染活動に携わる者が増加している。それらについても言及、推定すべきである。
28.
At the time the Committee’s evaluation began, few direct measurements of
internal
exposures were available for members of the public. These were insufficient
for
the Committee to estimate doses for the areas in Japan most affected by the
accident.
Therefore, the Committee had to rely on the use of various models to
estimate
doses on the basis of measured, or predicted, levels of radioactive material
in
the environment and their transfer through the environment to humans (for
example
内部被曝についての研究は、発生直後のもの{Tokonami, 2012 #17876}{Matsuda, 2013 #18508}。{Hosoda, 2013 #19176}などの研究が公開されている。さらに、2011年6月からであるが福島県もWBC測定を行ってきた。
なお、Hayano et al.(2013)もあるが、測定時期も遅く、地理的にも離れていることに注意が必要である。さらに、{今中, 2013 #19428}は飯舘村の初期被曝量を再推定した。県民健康基本調査では平均3.2mSvであったが、7.0mSvとであったとしている[11]。
29.
The estimated effective doses resulting from the accident at the Fukushima
Daiichi
nuclear power station can be put in perspective by comparing them with
those
received from exposures to radiation sources of natural origin (such as cosmic
rays
and naturally occurring radioactive material in food, air, water and other
parts
of
the environment). The Japanese people receive an effective dose of radiation
from
naturally occurring sources of, on average, about 2.1 millisieverts (mSv)
annually
and a total of about 170 mSv over their lifetimes. The Committee’s latest
estimate
for the global average annual exposure to naturally occurring sources of
radiation
is 2.4 mSv and ranges between about 1 and 13 mSv, while sizeable
population
groups receive 10 to 20 mSv annually.4 Absorbed doses to individual
organs
are expressed in milligrays (mGy). The average annual absorbed dose to the
thyroid
from naturally occurring sources of radiation is typically of the order of
1
mGy.
自然放射線と比較する意味が不明である。今回の被曝量が自然放射線と比べても大差ないというのであれば、そのことを明示すべきである。
日本の平均は食品含めて2.1mSvと推定されており、この文章にあるような13mSvの場所はない。なお、high background地域における調査でもしかし、これらに関する原論文(下に例として3つをリスト)によると、DNAレベルでは変異chromosome aberration が生じていることが示されている。またKoya
et al.(2011)では発達障害、みつくちが有意に多いことが見いだされている。
Wang
et al. (1990), "Thyroid Nodularity and Chromosome Aberrations among Women
in Areas of High Background Radiation in China," Journal of the National
Cancer Institute, 82 (6), 478-85.
Kumar
et al. (2012), "Evaluation of Spontaneous DNA Damage in Lymphocytes of
Healthy Adult Individuals from High-Level Natural Radiation Areas of Kerala in
India," Radiation Research, 177 (5), 643-50.
Koya et al.(2011), "Effect of Low and Chronic Radiation Exposure: A
Case-Control Study of Mental Retardation and Cleft Lip/Palate in the
Monazite-Bearing Coastal Areas of Southern Kerala," Radiation Research,
177 (1), 109-16.
さらに、2.1mSvと推定したのは、原子力安全研究協会 Nuclear safetry
research assocication http://www.nsra.or.jp/library/books/book.html である。この協会の賛助会員の多くは電力、原子力関係企業である。また、評議員7名中3名、役員9名中3名は原子力関係企業の者で占められている。これらからみても
企役員の理事3名のうち2名は日本原電、関西電力、監事2名のうち1名も電事連からの[12]
なお、日本の原発従業者の疫学調査では、平均累積線量13.3mSvであったが、固形ガンによる死亡と被曝線量には有意な関係が得られている。当然ながら、従業員は18才以上である。子供が被曝した場合のリスクはこれよりも高いことは周知の通りである[13]。
(a)
Members of the public
30.
The districts with the highest average estimated doses for members of the
public
were within the 20-km evacuation zone and the deliberate evacuation area.
For
adults, the effective dose estimated to have been received before and during
the
evacuation
was, on average, less than 10 mSv and about half of that level for those
evacuated
early on 12 March 2011. The corresponding estimated average absorbed
dose
to the thyroid was up to about 30 mGy. For 1-year-old infants, the effective
dose
was estimated to be about twice that for adults and the dose to the thyroid was
estimated
to be up to about 70 mGy, as much as one half of which arose from the
ingestion
of radioactivity in food. However, there was considerable variation
between
individuals around this value, depending on their location and what food
they
consumed.
事故から4ヶ月間の外部被曝を推定した福島県健康管理・基本調査(Appendix 2 2Estimated external radiation doses by region Effective Dose)によると、被爆量は歪んだ分布となる。平均だけでなく最大値、中央値も明示すべきである。
前述のように20km以内の者は避難によってある程度、被曝を回避できたが、行動は複雑である。福島県健康調査でも、空間線量と行動調査を組み合わせて外部線量を推定している。なお、基本調査 Appendix 4から市町村別の平均値(上述のように平均値は不適切であるが)を算出すると20km圏外の飯舘村3.6mSv、二本松市1.46mSv、本宮市1.39mSv、の順になる。これらはいづれも20km以遠に位置する。20km圏内だけでなく、それ以遠についても注目すべきである。
基本調査は回答率23.6%程度と低いこと、初期のヨウ素からの被曝については不確実性が大きいといった課題があるが、一定の価値はある。UNSCEARでの推定結果との比較を行うべきである。
Table
3 Estimated external radiation doses (preceding and full-scale survey)
によると、最大は双相地区の25mSv
20km以内
前述のように20km以内の者は避難によってある程度、被曝を回避できたが、この推計方法は、空間線量率と行動調査を組み合わせたものであり、前者については
この調査は回答率23.6%程度と低いこと、初期のヨウ素からの被曝については不確実性が大きいといった課題がある。
31.
Adults living in the city of Fukushima were estimated to have received, on
average,
an effective dose of about 4 mSv in the first year following the accident;
estimated
doses for 1-year-old infants were about twice as high. Those living in
other
districts within the Fukushima Prefecture and in neighbouring prefectures
were
estimated to have received comparable or lower doses; even lower doses were
estimated
to have been received elsewhere in Japan. Lifetime effective doses
(resulting
from the accident) that, on average, could be received by those continuing
to
live in the Fukushima Prefecture have been estimated to be just over 10 mSv;
this
estimate
assumes that no remediation measures will be taken to reduce doses in the
future
and, therefore, may be an overestimate. The most important source
contributing
to these estimated doses was external radiation from deposited
radioactive
material.
どのような前提で推定したのか、UNSCEARの前提をまずは紹介してから結論づけるべき。
なお、全般的に100mSv(もしくはGy)への言及が目立ち、100mSvを閾値とした健康被害を想定しているかにも読める。LNTは実証データでも支持されているのであり、100mSv(もしくは100m Gy)以下といった記述は避け、中央値、平均値などを用いた記述とすべきである。
32.
Doses higher or lower than the average values above can be estimated for
people
with habits or behaviour significantly different from the average, and/or for
those
living in areas where the levels of radioactive material were or are
significantly
different from the average for a particular district or prefecture. Within
a
district the individual doses related to inhalation and exposure to external
radiation
typically range from about one third of the average up to three times the
average.
Larger doses cannot be totally discounted for some individuals — in
particular,
if they consumed certain locally produced foodstuffs in the aftermath of
the
accident despite governmental advice or continued living in evacuation areas
for
an
extended period. Some infants may have received thyroid doses of 100 mGy or
more.
(b)
Fukushima Daiichi nuclear power station workers, emergency personnel,
municipal
workers and volunteers
この部分を担当したJourdain氏はMELODI WSで東京電力は協力的であったと述べた[14]。この点については大いに疑問がある。従業員に関しては、線量計に鉛カバーをつけることによって被曝量を低く申告させる[15]、線量計をつけづに作業させるといった問題が報告されている。
さらに、同社は一貫して情報を隠し、要求されなければ出さないという対応をしている。例えば、NAIICもLOCAの可能性を確認するため、1号基内部の調査を企画したが東京電力は、内部は真っ暗であると虚偽の説明をおこなった。さらに、東電の者は現地調査には案内しないとまで述べた。これに典型的にみられるように、東京電力からの情報は恣意的に選択されている可能性を考慮すべきである。
3.
Health implications
39.
The doses to the general public, both those incurred during the first year and
estimated
for their lifetimes, are generally low or very low. No discernible increased
incidence
of radiation-related health effects are expected among exposed members
of
the public or their descendants. The most important health effect is on mental
and
social
well-being, related to the enormous impact of the earthquake, tsunami and
nuclear
accident, and the fear and stigma related to the perceived risk of exposure to
ionizing
radiation. Effects such as depression and post-traumatic stress symptoms
have
already been reported. Estimation of the occurrence and severity of such health
effects
are outside the Committee’s remit.
次のパラグラフ40にはFor adults in Fukushima Prefectureとあるが、ここでいうthe general publicには含まれるのかふくまれないのかが曖昧である。パラグラフの並べ方として、(a) Members of the publicでは、20km圏内、福島県内、それ以外の順に述べている。被害が大きいのはこの順であると考えられる。ここでもその順に述べるべきである。
generally low or very low ではなく線量の推定値を明示すべきである。さらに、線量は低く見えているが特に初期のヨウ素被曝量の推定には大きな不確実性があることを再度明記すべきである。
The most important health effect is on mental and mental and social
well-beingとあるが、このように記述するのならば、その根拠となるデータを示すべきである。なお、長崎大学の山下教授は、事故直後に福島県内で行った講演で100μSv/hまでの(空間)線量であれば健康に被害はないと誤った情報を与えた[16]。この例に代表されるように、専門家への信頼喪失も住民に大きなストレスを与えていることにも注意すべきである。
40.
For adults in Fukushima Prefecture, the Committee estimates average lifetime
effective
doses to be of the order of 10 mSv or less, and first-year doses to be
one
third to one half of that. While risk models by inference suggest increased
cancer
risk, cancers induced by radiation are indistinguishable at present from other
cancers.
Thus, a discernible increase in cancer incidence in this population that
could
be attributed to radiation exposure from the accident is not expected. An
increased
risk of thyroid cancer in particular can be inferred for infants and
children.
The number of infants that may have received thyroid doses of 100 mGy is
not
known with confidence; cases exceeding the norm are estimated by model
calculations
only, and in practice they are difficult to verify by measurement.
41.
For the 12 workers whose exposure data were scrutinized by the Committee
and
who were estimated to have received absorbed doses to the thyroid from
iodine-131
intake alone in the range of 2 to 12 Gy, an increased risk of developing
thyroid
cancer and other thyroid disorders can be inferred. More than 160 additional
workers
received effective doses currently estimated to be over 100 mSv,
predominantly
from external exposures. Among this group, an increased risk of
cancer
would be expected in the future. However, any increased incidence of cancer
in
this group is expected to be indiscernible because of the difficulty of
confirming
such
a small incidence against the normal statistical fluctuations in cancer
incidence.
Workers exposed to doses above 100 mSv will be specially examined,
including
through annual examinations of the thyroid, stomach, large intestine and
lungs
for potential late radiation-related health effects.
100 mSvにこだわる必要はない。
42.
In June 2011, a health survey of the local population (the Fukushima Health
Management
Survey) was initiated. The survey, which began in October 2011 and is
planned
to continue for 30 years, covers all 2.05 million people living in Fukushima
Prefecture
at the time of the earthquake and reactor accident. It includes a thyroid
ultrasound
survey of 360,000 children aged up to 18 years at the time of the
accident,
using modern high-efficiency ultrasonography, which increases the ability
to
detect small abnormalities. Increased rates of detection of nodules, cysts and
cancers
have been observed during the first round of screening; however, these are
to
be expected in view of the high detection efficiency. Data from similar
screening
protocols
in areas not affected by the accident imply that the apparent increased
rates
of detection among children in Fukushima Prefecture are unrelated to radiation
exposure
福島県甲状腺調査によると2013年9月30日までの289,960名中59件の甲状腺ガン(もしくは疑い)が発見されている。これはスクリーニング効果を考慮しても高いという指摘もある[17]。さらには、甲状腺ガンではなく結節であるが、市町村毎の結節とWHOの推定した甲状腺被曝量には正の相関があるという分析もある[18]。なお、チェルノブイリでは4年後に甲状腺ガンが増加したとされるが、Imaizumi et al.(2005)、では被爆者への成人健康調査で2年ごとに甲状腺超音波検査を行った結果、異常がなかった者でも2年以内に甲状腺ガンが発症した例が報告されている。事故から2年以内で結節や甲状腺ガンになる可能性は否定できない。
さらに、3県での甲状腺調査は弘前、山梨、長崎各大学の付属小中高の生徒を中心として行った[19]。このため、0-2才を含まず、3-5才の割合も3.1%と少なく福島よりも年齢が高い。さらに、女性が52%と割合も高くなっている。このことから、3県での調査は結節などの割合が高くなる可能性がある。また、検査者によるバイアスの可能性があり、福島と比較する際には注意すべきであることが最終報告書にも明記されている[20]。
3県調査の対象者は都市部在住者がほとんどであり、福島県調査とは社会経済要因が異なることを考慮した比較をすべきである。福島県民健康管理調査では「こころの健康度・生活習慣に関する調査」として基本的な項目は回答させている。が、3県調査では、それすらも回答させておらず、福島での調査とマッチングさせることも困難である。環境省甲状腺調査は事故後1年以上経過して行われたにも関わらず、調査設計自体に大きな問題がある。
[1] Resolution to
http://www.unscear.org/docs/A-RES-68-73_e.pdf
"Recognizing the importance of disseminating results from the work of the Scientific
Committee and widely publicizing scientific knowledge about atomic radiation,
and recalling, in that context, principle 10 of the Rio Declaration on
Environment and Development, p.2/3”
Principle 10は以下の通り。
Principle 10 “Environmental
issues are best handled with participation of all concerned citizens, at the
relevant level. At the national level, each individual shall have appropriate
access to information concerning the environment that is held by public
authorities, including information on hazardous materials and activities in
their communities, and the opportunity to participate in decision-making
processes. States shall facilitate and encourage public awareness and
participation by making information widely available. Effective access to
judicial and administrative proceedings, including redress and remedy, shall be
provided.”
なお、このResolution自体にも広く情報提供を求めることが指摘されている。
"12. Also welcomes the strategy of the Scientific Committee to
improve data collection, encourages in this regard Member States, the organizations
of the United Nations system and non-governmental organizations concerned to
provide further relevant data about doses, effects and risks from various
sources of radiation, including exposure to naturally occurring radioactive
materials, which would greatly help in the preparation of future reports of the
Scientific Committee to the General Assembly, and further encourages the
International Atomic Energy Agency, the World Health Organization and other
relevant organizations to establish and coordinate with the Secretariat the
arrangements for periodic exchange of data on radiation exposures of workers,
the general public and, in particular, medical patients; , p.3/3" Resolution to
http://www.unscear.org/docs/A-RES-68-73_e.pdf
[2] WHO (2012), Dose Assessment Report:
Preliminary Dose Estimation from the Nuclear Accident after the 2011 Great East
Japan Earthquake and Tsunami: WHO http://www.who.int/ionizing_radiation/pub_meet/fukushima_dose_assessment/en/index.html.
WHO
(2013), "Health Risk Assessment from the Nuclear Accident after the 2011
Great East Japan Earthquake and Tsunami, Based on a Preliminary Dose
Estimation," http://www.who.int/ionizing_radiation/pub_meet/fukushima_risk_assessment_2013/en/index.html.
[3]環境省(2013) 福島県外3県における甲状腺結節性疾患有所見率等調査成果報告書の公表について( 日本語のみ。pdfへのリンクあり)
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/rep_2503a.html
最近下記が刊行された。
Hayashida, N., M. Imaizumi, H. Shimura, N. Okubo, Y.
Asari, T. Nigawara, S. Midorikawa, K. Kotani, S. Nakaji, A. Otsuru, T. Akamizu,
M. Kitaoka, S. Suzuki, N. Taniguchi, S. Yamashita, N. Takamura, and Findings
Investigation Committee for the Proportion of Thyroid Ultrasound (2013),
"Thyroid Ultrasound Findings in Children from Three Japanese Prefectures:
Aomori, Yamanashi and Nagasaki," PLoS One, 8 (12), e83220.
[4]福島県「SPEEDI電子メールデータ削除問題について」「3月12日23時54分から3月16日9時45分までに送信されたSPEEDIに関する86通のメールのうち65通を削除した」http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=9F6162DEC8718A40C4C8B782BF30A523?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=29725
[5]事故初期の可搬型モニタリングポストについて
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=62104D00E64AE1A55D137871EA959472?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=34791
[6] 福島県放射線健康リスク管理アドバイザーによる講演会 2011年3月21日(月)14時00分~15時00分
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=94F0F867D4B5F69FED42FDF79BB5CE02?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=23695
「訂正:質疑応答の「100マイクロシーベルト/ hを超さなければ健康に影響を及ぼさない」旨の発言は、「10マイクロシーベルト/hを超さなければ」の誤りであり、訂正し、お詫びを申し上げます。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません。」
[8] ・東日本大震災における震度 (in Japanese)
http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/2011_03_11_tohoku/0311_shindo.pdf
[9] NAII(2012) Ch.3. Problems with
the nuclear emergency responseおよび Appendices Survey of the evacuees
[10]
ibid. p.16 Footnote [23] “While the percentage of people who had
evacuated more than six times had been the highest for Namie Town, amongst the responses from residents
living in the same town, there was a stronger tendency to comment on evacuation
to areas with high radioactive doses, and that SPEEDI information should have
been disclosed immediately than comment on frequency of evacuation.”
[11] 県民基本調査では7/11までの3102名の推定結果。今中らは1812名の7/31までの推定結果。前者が線量モニタリングデータ、後者が沈着放射能データを用いたこと、また行動記録について前者が1時間単位、後者は日単位で推定したことがこの差の原因であるとしている。
[12]
http://www.nsra.or.jp/nsra/gyou_zai/H24/NSRA_H24_report.pdf
[14] Jean-René Jourdain "UNSCEAR Fukushima
Report : UNSCEAR's Assessment of Levels and Effects of Radiation Exposure due
to the Nuclear Accident after the 2011 Great East-Japan Earthquake and Tsunami"
[15] 東京電力 福島第一原子力発電所における下請企業従業員における警報付ポケット線量計(APD)不正使用に関する経済産業省原子力安全・保安院への報告について
平成24年8月13日
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2012/1211798_1834.html
[16] 福島県放射線健康リスク管理アドバイザーによる講演会 2011年3月21日(月)14時00分~15時00分
http://wwwcms.pref.fukushima.jp/pcp_portal/PortalServlet;jsessionid=94F0F867D4B5F69FED42FDF79BB5CE02?DISPLAY_ID=DIRECT&NEXT_DISPLAY_ID=U000004&CONTENTS_ID=23695
「訂正:質疑応答の「100マイクロシーベルト/ hを超さなければ健康に影響を及ぼさない」旨の発言は、「10マイクロシーベルト/hを超さなければ」の誤りであり、訂正し、お詫びを申し上げます。ご迷惑をおかけし、誠に申し訳ありません。」
[17]津田敏秀 (2013)「福島県での甲状腺がん検診の結果に関する考察 ver.3.02 」
http://www.kinyobi.co.jp/blog/wp-content/uploads/2013/03/fefc48e1bcaef4b4191bb12c61f176731.pdf
これは2011年に行われた38,114 人中 3例の甲状腺ガンが発見された時点で考察したものである。2013年12月に行われた報告(http://www.nsra.or.jp/safe/adviser/)では、その後の結果も含めた分析をされているが、報告資料は未公開である。
[18] Yutaka Hamaoka(2013) A Possible Warning
from Fukushima: A Preliminary Analysis of Radiation Dose and Occurrence of
Thyroid Nodules Using City and Village Level Data” MELODI workshop October 8,
Brussels
http://www.melodi2013.org/~/media/Files/Melodi/presentations/08102013/Fukushima/Hamaoka_A%20Possible%20Warning%20from%20Fukushima_A%20Preliminary%20Analysis%20of%20Radiation%20Dose.pdf
[19]環境省(2013) 福島県外3県における甲状腺結節性疾患有所見率等調査成果報告書の公表について(日本語のみ。pdfへのリンクあり)
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/rep_2503a.html
日本乳腺甲状腺超音波医学会 (2013), 平成24年度甲状腺結節性疾患有所見率等調査成果報告書: https://www.env.go.jp/chemi/rhm/attach/rep_2503a_full.pdf.
英語によるサマリーは下記。p.1にchildren
aged 18 years or younger とあるが0-2才は含まれていない。また男女比も記されていない。
MOE(2013)
" Results of the
survey of the proportion of thyroid ultrasound findings"
http://www.env.go.jp/en/headline/file_view.php?serial=513&hou_id=1933
[20] 同報告書 p.45