2014年1月3日金曜日

新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた御意見の募集について への意見

 2000文字以内という制約があるので、下記を項目毎に切り貼りして十数回に分けて(ここから)提出。
独立しても読めるようにしてあるので、重複が多い。また、あまり体系だってはいない。

 なお、意見募集システムは半角カナ(。・など)系や(自分たちの報告書には使っているのに)機種依存文字(丸数字等)を受け付けないので、それらを全角に変換したり削除して提出した。
  その後も随時気づいた点を加筆、提出。


1.総論
1)反省のなさについて
 電力システム改革に言及していることなど評価すべき点もないわけではない。ただし、「はじめに」において反省の必要性をうたってはいるものの、どこに問題があり、さらにその問題をどのように解決するのかが示されていない。

政府及び原子力事業者は、いわゆる「安全神話」に陥り十分なシビア・アクシデント対策を講じることができず、このような深刻な事態を防ぐことができなかったことを深く反省しなければならない。このような事態を二度と起こさないようにするため、事故原因を徹底的に究明し、安全性向上のための努力を不断に講じなくてはならない。p.2

 このため、これまでに研究開発してきたにも係わらず成果の無い「もんじゅ」「核燃料サイクル」を反省も無く継続するとしている。さらに、技術的、経済的にも不可能な「消滅・減容処理」の強化など現状維持どころか原子力の拡大路線となっている。加えて、教育による原子力への理解促進といった旧来の押しつけ型のパブリックアクセプタンス手法を用いることまで明記されている。
 この他、輸入したウランを準国産としたり、(ありもしない)経済への打撃の強調(p.6)、原発をやめることによって不要となるコストを無視した燃料輸入による赤字額の強調、活断層の考慮範囲や避難計画の整備などにおいて米国よりも遙かに甘いにも係わらず、世界で最も厳しい基準であるという、など、これまでに行ってきた虚偽説明手法をそのまま用いている。
 これらからみても、何ら反省していないことは明らかであり、このような体制で進められた議論は無効である。


2)未解明の問題
 今回の福島原発災害には未解明の問題や未対策の点が多い。それを明らかにせずに再稼働はあり得ない。以下にそれらの一例を挙げる。

・地震による配管等への影響
 国会事故調では小規模破断の可能性を指摘している。その後、規制委員会「東京電力福島第一原子力発電所における事故の分析に係る検討会」、東電「福島原子力事故における未確認・未解明事項の調査・検討結果~第1回進捗報告~」などでは小規模破断はないという暫定的な結論を出しているが、いずれもシミュレーションによるものであり目視などはされていない。この点以外にも、国会事故調や東電の「未確認・未解明事項」も50以上が残っている。
 万が一、破断がなかったにしても、津波前に純水タンクの座屈、夜の森線の送電塔倒壊などが生じている。震源でのM9が強調されるが、気象庁の記録によると福島第一原発近辺の震度は6+程度であった。その程度の地震で、これらが生じたわけであり、原因の解明が必要であり原子力の利用を考える段階に無い。


・制度や風土についての解明
 東電は過去にも点検による異常検出の隠蔽などを行ってきた。今回の災害においても国や同社は、メルトダウンはない、SPEEDIの情報提供の遅れなどの問題を招いた。さらには、低線量WGに代表されるように、一方的な見方を持った委員の重用、それによる甘い基準での対策などが行われている。このような電力会社、電事連、国、自治体などの各レベルにおいて、原発事故を招いた制度、組織風土などの問題が存在するはずである。それらの問題点はおおよその姿は想像できるものの明らかにされず、対策もとられていない。
 国会事故調は規制の虜と指摘している他、米国原子力学会の「FUKUSHIMA DAIICHI: ANS Committee Report http://fukushima.ans.org  VI. Societal Context for the Fukushima Daiichi Accident によると、県が原子力発電所の立地や運転に伴って交付金や税金を受ける一方で、操業の認可も行うという利益相反の問題が指摘されている。
 これら以外にも、今回の議論の進め方にみられるように経産省による恣意的な委員の選任、経産省OBなど、原発推進派を中心とした議論など、明らかに制度、風土の問題は解明も解決もされていない。このような制度、風土で原発を再稼働させれば、再度同様の事故が発生するだろう。原発は利用すべきでは無い。

3)不完全な対策
 福島原発災害の原因の解明が済んでいないため、以下のように対策も不完全である。

・複数基設置、使用済み燃料建屋内併設の許容
 福島事故でもっとも明確な技術的問題は、同一サイト内に、複数基を設置し、さらに建屋内に使用済み燃料プールを設置するという、リスク集中型の設置である。それを解消せずして原発の立地はあり得ない。

・世界で最も厳しくない基準
 「独立した原子力規制委員会によって世界で最も厳しい水準の新規制基準の下p.18」とあるが、これは嘘である。
 例えば活断層について、米国NRCでは、原発から20マイル以内範囲の長さ1マイル以下のfault200マイル以内の長さ40マイルのfaultも考慮している(SEISMIC AND GEOLOGIC SITING CRITERIA http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part100/part100-appa.htmltab 1。さらに、1度のみの移動については3.5万年、繰り返し移動については50万年前まで考慮されている。
 これに対して日本の場合12-3万年の範囲で、地層が明確でない場合には40万年遡るとしており、これらの点においては世界で最も厳しいわけではない。このような虚偽を含む本意見は撤回すべきである。

 
・世界で最も甘い国や自治体の制度
 日本の場合、競争原理の導入は限定的であり、かつ包括原価制度にみられるように、様々なコストを電気料金に課すことができる。最近は廃炉後の費用まで課すことができるようになった。地域には交付金も与えられ、安全性のチェックではなく、金銭の方を重視する傾向にある。
 最近は直接的な天下りなどは行われてはいないようだが、経産省OBや立地自治体の長を委員として起用するなど、推進側に甘い体制には変わりがない。
 前述のように、米国原子力学会の「FUKUSHIMA DAIICHI: ANS Committee Report http://fukushima.ans.org  VI. Societal Context for the Fukushima Daiichi Accident によると、県が原子力発電所の立地や運転に伴って交付金や税金を受ける一方で、操業の認可も行うという利益相反の問題が指摘されている。
 これら甘い制度は温存されており、相変わらず安全軽視で推進に偏った議論である。このような状態で稼働することはあり得ない。


4)技術的、経済的な評価の不十分さ
・技術的、経済的に不可能な事業の継続
 常陽の頃から考えると40年間、成果のない高速増殖炉である「もんじゅ」、ガラスの連続溶融部分の不具合という入り口で失敗している六ヶ所村の再処理工場が継続されている。さらには再処理した使用済み燃料を高速増殖炉で転換しようという、これら失敗した二つの技術を前提とした変換処理の推進が明記されている。これについては、検討委員会が示しているように、可能性を実証すること自体、経済的な制約に直面している他、前述の状況を勘案すると、実用プラントレベルで技術的に検証できるレベルに達することもできないだろう。
 この案では触れられていないが、原子力では「むつ」、新型転換炉「ふげん」のように、時間、費用とも浪費し環境を汚染したプロジェクトが存在する。それらのコストを無視した議論は無意味であり、この意見自体を撤回すべきである。

・世界のトレンドから大きく遅れた議論
 米国では最近、建設開始されたものがあるが、TMI後原発は新規立地されておらず、40年の基準前に廃炉されるものが多い。さらに、NY州のShoreham Nuclear Power Plantのように建設したものの反対運動や、実効的に避難経路を確保することができないことなどによって、稼働しないままに廃炉となった。
 このように、原子力発電所は経済的にも成立しないことが明らかとなっている。日立、東芝、三菱重工などの大メーカー、東京電力、関西電力などの電力会社、これら巨大企業を保護し、優遇すること自体世界のトレンドから大きく遅れた恥ずべき意見である。直ちに撤回すべきである。

5)計画の策定方法の不備
 昨年度の(不十分であった)国民的議論で原発はゼロをめざすことが合意された。この傾向は最近の新聞各社の世論調査でも不変である。それを20名程度の推進派委員を中心とした議論で方向転換することはありえない。万が一変更するのであれば衆議院を解散し原発を争点とした選挙を行うべきであろう。
 少なくとも国民投票は行うべきであろう。いずれにしても拙速で不十分な進め方である。


2.個別の論点
 以下、該当するページ、引用をイタリックで示し、それへの意見を述べる。

p.5 「2.化石燃料への依存の増大とそれによる国富流出、供給不安の拡大
「現在、原子力発電の停止分の発電電力量を火力発電の焚き増しにより代替していると推計すると、2013年度に海外に流出する輸入燃料費は、東日本大震災前並(2008年度~2010年度の平均)にベース電源として原子力を利用した場合と比べ、約3.6兆円増加すると試算される。 海外からの化石燃料への依存の増大は、資源供給国の偏り」

→円安誘導の政策が燃料輸入費用増大の主要な要因である。このような誤った認識の意見、計画は撤回すべきである。


p.6 「3.電源構成の変化による電気料金上昇とエネルギーコストの国際的地域間格差によるマクロ経済・産業への影響
(1)電気料金の上昇とその影響
「固定価格買取制度に基づいて導入される再生可能エネルギーは、今後増加していくと考えられ、電気利用者の負担の上昇要因となっていくと考えられる。電気料金の上昇は、電力を大量に消費する産業や中小企業の企業収益を圧迫し、人員削減、国内事業の採算性悪化による海外への生産移転、廃業等の悪影響が生じ始めている。 」

→生産移転はここ数十年で進展しており、新たな移転は多くはない。さらに政策投資銀行の調査 http://www.dbj.jp/investigate/r_report/pdf_all/106all_3.pdf p.73  によると日本企業が「国内ではなく海外生産を行う理由は、人件費など製造コストの低さが最大」であり、「日本国内の電力供給不安」という選択肢は最大3つ選べるにも係わらず0.0%である。上記のような記述はまったくの虚偽である。


p.7 「5.東西間の電力融通、緊急時供給など、供給体制に関する欠陥の露呈
(1)電力供給体制における問題
「老朽火力発電所を含め、火力発電をフル稼働させることで補っている状況にあり、発電施設の故障などによる電力供給不足に陥る懸念が依然として残っている。」

→原発に依存し火力などの発電施設の整備を怠った企業、政府の経営センスの問題である。ガスコンバインド施設などに更新すべきであった。このような経営責任を問うべきである。
 また、例えば神戸製鋼は神戸市近郊に最新鋭の火力発電所を設置している。このような施設を導入するインセンティブシステムを導入すべきである。そのためにも送電線の国有化もしくは他社接続の義務化など、参入促進策を進めるべきである。


p.8  6.エネルギーに関わる行政、事業者に対する信頼の低下
東京電力福島第一原子力発電所事故以前から、事故情報の隠蔽問題や、もんじゅのトラブル、六ヶ所再処理工場の度重なる操業遅延、高レベル放射性廃棄物の最終処分地の選定の遅れ等、原子力政策をめぐる多くのトラブルやスケジュールの遅延が国民の不信を招いてきた。」

→原子力分野における人材の劣化(申請、取得特許の数、研究費、学生数いずれも80年代から一貫して減少している http://nonuke2011.blogspot.jp/2011/09/80.html 。遅れている根本的な原因は工業的レベルでこれらを実施する技術能力が存在しないことである。これらを考慮すると、上述の技術自体が実現する可能性は皆無である。このことを認識して直ちにこれら計画を中止すべきである。


p.10 10.新興国を中心とした世界的な原子力の導入拡大
 →各国が導入すればウランへの需要が増加し、価格も上昇することを考慮すべきである。


p.12  第2章 エネルギー政策の新たな視点
→ 経済のみに注目している。倫理にも注目すべきである。           
 なお、経済性に注目するのならば、もんじゅをはじめとした開発についても投入費用、成果についての経済性を評価すべきである。

p.18
「安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する。 」
→福島原発災害後、原発なしでも火力、節電で充分である。原発は柏崎も中越地震のとき不適合が数千件発生し、それを修復するために数年停止した。女川原発でも大震災の影響でタービンの羽が破損した。このように原発は、地震の際に今回のような災害を引き起こす可能性があるだけでなく、地震の影響によって破損し、長期に停止しかねない不安定な電源である。
 このような危険な設備は稼働せず直ちに廃炉することが最適である。人材については、現在の状況をみるとあきらかなように、日本の原発技術はさして重要ではない。特に廃炉については、ロボット工学、機械工学、プラント工学などの知識の方が重要化すると考えられる。原子力よりは、これらを進行すべきである。

P.28 「(4)国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築
東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた広聴・広報
「東京電力福島第一原子力発電所事故を受けて、国民の間に原子力に対する不信・不安が高まっているとともに、エネルギーに関わる行政・事業者に対する信頼が低下している。
この状況を真摯に受け止め、その反省に立って信頼関係を構築するためにも、原子力に関する丁寧な広聴・広報を進める必要がある。このため、原子力が持つリスクや事故による影響を始め、事故を踏まえて整備した規制基準や安全対策の状況、重大事故を想定した防災対策、使用済燃料に関する課題、原子力の経済性、国際動向など、科学的根拠や客観的事実に基づいた広報を推進する。また、原子力立地地域のみならず、これまで電力供給の恩恵を受けてきた消費地も含め、多様なステークホルダーとの丁寧な対話や情報共有のための取組強化等により、きめ細やかな広聴・広報を行う。さらに、世代を超えて丁寧な理解増進を図るため、原子力に関する教育の充実を図る。」

→これまでも国や電力会社は多額の費用を原子力の広報に投入してきた。その内容は、原子力は安全ということを主張するものであった。
「原子力が持つリスクや事故による影響を始め、事故を踏まえて整備した規制基準や安全対策の状況、重大事故を想定した防災対策、使用済燃料に関する課題、原子力の経済性、国際動向など、科学的根拠や客観的事実に基づいた広報を推進する。」とあるが、現在すでに行われている広報では、放射線のリスクは喫煙よりも低いなど、放射能をまき散らした東京電力、その背景にある国や自治体の無策、責任をまったく無視した内容である。
 すでに国民的議論によって決したように原発ゼロが基本的方針である。原発推進につながる教育は不要である。


p.29 「立地自治体等との信頼関係の構築
「我が国の原子力利用には、原子力関係施設の立地自治体や住民等関係者の理解と協力が必要であり、こうした関係者のエネルギー安定供給への貢献を再認識しなくてはならない。一方、立地自治体等の関係者は、事故に伴って様々な不安を抱えている。また、原子力発電所の稼働停止やその長期化等により原子力立地地域では経済的な影響も生じている。国は、立地自治体等との丁寧な対話を通じて信頼関係を構築するとともに、原子力発電所の稼働状況等も踏まえ、新たな産業・雇用創出も含め、地域の実態に即した立地地域支援対策を進める。」

→相変わらず交付金という金銭で地方に立地するという方法である。経済的に本当に優位であるならば、このような国からの援助無しで成立するはずである。
 さらに「丁寧な対話を通じて信頼関係を構築する」とあるが、対話とは、お互いの主張を聞き入れつつ、譲歩の可能性もあることを意味する。これまで行われてきたのは、対話というが、国が決めた方策を譲ることはない、一方的なパブリックアクセプタンスである。そのような手法を前提とした本意見、計画は意味がない。
 新たな産業を創出するならば、直ちに廃炉し、廃炉事業の展開、さらには再生エネルギーの立地などを振興すべきである。

p.23  1. 原子力政策の基本方針
(1)原子力政策の出発点-東京電力福島第一原子力発電所事故の真摯な反省
→反省という見出しはついているが、そもそも事故の原因解明もされておらず、それに対しての反省もされていない。

p.23(2)エネルギー政策における原子力の位置付けと政策の方向性
「原子力発電は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで供給が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として」

→安価ではないことは事故処理にかかる費用の大きさ、廃棄物処理費用などからも自明である。 さらに、万が一、原発を再稼働するにしてもこれまでの稼働率は70%台であり、今後、老朽化に伴うトラブル、長期の点検などが増加することを勘案すれば、コストがさらに高くなることが明らかである。
 さらに、輸入に頼っているウランを準国産といったり、政府などの原子力への認識は事故前とまったく変わっていないことが明らかである。このような体制の元で原発を稼働すれば、再度の事故が発生するのは確実である。震災後約3年、原発ほぼなしで若干の節電によって何の問題も生じていない。即時ゼロはきわめて現実てきな方策である。
 再生エネルギーはエネルギーの自給率を高めるだけでなく、消費地に近い場所に立地させる分散型立地が可能であり、送電のロス、地域における雇用の増大など原発に比べてメリットが大きい。
 中長期的には高効率火力への移行、その間に再生エネルギーの充実を図ることがもっとも国益に適う方策である。


p.26高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化
「高レベル放射性廃棄物については、)将来世代の負担を最大限軽減するため、長期にわたる制度的管理(人的管理)に依らない最終処分を可能な限り目指す、)その方法としては現時点では地層処分が最も有望である、との国際認識の下、各国において地層処分に向けた取組が進められている。我が国においても、現時点で科学的知見が蓄積されている処分方法は地層処分である」

→日本学術会議は「高レベル放射性廃棄物の処分について」で下記のように回答した (http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf)。つまり、科学的に「現時点では地層処分が最も有望である」という知見は少なくとも日本では得られていない。乾式キャスクにおける廃炉した原発サイトにおける暫定保管することが最も現実的であろう。

(2) 科学・技術的能力の限界の認識と科学的自律性の確保
地層処分をNUMO に委託して実行しようとしているわが国の政策枠組みが行き詰まり
を示している第一の理由は、超長期にわたる安全性と危険性の問題に対処するに当たっ
ての、現時点での科学的知見の限界である。安全性と危険性に関する自然科学的、工学
的な再検討にあたっては、自律性のある科学者集団(認識共同体)による、専門的で独
立性を備え、疑問や批判の提出に対して開かれた討論の場を確保する必要がある。p.iii
同時に、日本は地層処分を選択している先進国の中では地殻変動が特に活発な国の1
つであり、そのような日本固有の特性についても、十分に勘案する必要がある。特に地
層処分の前提となる安定した地層の存在の確認には、慎重な精査が必要である。(日本学術会議p.6)


p.27 最終処分について、
「最終処分場の立地選定にあたっては、処分の安全性が十分に確保できる地点を選定する必要があることから、国は、科学的により適性が高いと考えられる地域を示す等を通じ、地域の地質環境特性を科学的見地から説明し、立地への理解を求める。」

→とあるが、日本学術会議は「高レベル放射性廃棄物の処分について」で下記のように回答した (http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-22-k159-1.pdf)。説明の方法など小手先の問題ではないのである。
 地層処理という方策自体を見直す必要がある。具体的には、同会議が下記(3)で示した暫定保管がもっとも有力であろう。廃棄物を増やさないためにも即時原発ゼロとし、廃炉サイトに暫定保管することが技術的にも地域の雇用確保という点からも現実的である。

(1) 高レベル放射性廃棄物の処分に関する政策の抜本的見直し
これまでの政策枠組みが、各地で反対に遭い、行き詰まっているのは、説明の仕方の不十分さというレベルの要因に由来するのではなく、より根源的な次元の問題に由来することをしっかりと認識する必要がある。また、原子力委員会自身が2011 年9月から原子力発電・核燃料サイクル総合評価を行い、使用済み核燃料の「全量再処理」という従来の方針に対する見直しを進めており、その結果もまた、高レベル放射性廃棄物の処分政策に少なからぬ変化を要請するとも考えられる。これらの問題に的確に対処するためには、従来の政策枠組みをいったん白紙に戻すくらいの覚悟を持って、見直しをすることが必要である。(日本学術会議p.iii)

(3) 暫定保管および総量管理を柱とした政策枠組みの再構築
これまでの政策枠組みが行き詰まりを示している第二の理由は、原子力政策に関する
大局的方針についての国民的合意が欠如したまま、最終処分地選定という個別的な問題
が先行して扱われてきたことである。広範な国民が納得する原子力政策の大局的方針を
示すことが不可欠であり、それには、多様なステークホルダー(利害関係者)が討論と
交渉のテーブルにつくための前提条件となる、高レベル放射性廃棄物の暫定保管
temporal safe storage)と総量管理の2つを柱に政策枠組みを再構築することが不
可欠である。(日本学術会議p.iii)


p.27 3)放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発
 これについては、原子力委員会が2009年に「分離変換技術に関する研究開発の現状と今後の進め方」をまとめた。そこで指摘されているように、これは燃料を意図した核種に分離する技術、それを変換する技術に大別される。
 前者は燃料の再処理、後者については今回の計画では高速増殖炉を利用することが前提となっている。常陽の頃から考えると40年間、成果のない高速増殖炉である「もんじゅ」、ガラスの連続溶融—固化を行う煉瓦部分の不具合という入り口で失敗した六ヶ所村の再処理工場。これら失敗した二つの技術を前提としている。
 これについては、検討委員会が示しているように、可能性を実証すること自体、経済的な制約に直面している他、前述の状況を勘案すると、実用プラントレベルで技術的に検証できるレベルに達することもできないだろう。
 このような見通しのない技術に固執する必要はなく、全量、ワンスルー方式にせざるをえない。


p.40  4.再生可能エネルギーの導入加速~中長期的な自立化を目指して~
→潮力がまったく無視されている。IPCC SRREN report, ch6(http://srren.ipcc-wg3.de/report)では日本近海は潮力発電の有望な場所としてあげられている。原子力関係の成果の見込みのない研究開発に投資するよりは潮力の方がよほど確実である。



p.60(3)エネルギー教育の推進
→これまでも国や電力会社は多額の費用を原子力の広報に投入してきた。その内容は、原子力は安全ということを主張するものであった。
「原子力が持つリスクや事故による影響を始め、事故を踏まえて整備した規制基準や安全対策の状況、重大事故を想定した防災対策、使用済燃料に関する課題、原子力の経済性、国際動向など、科学的根拠や客観的事実に基づいた広報を推進する。」とあるが、現在すでに行われている広報では、放射線のリスクは喫煙よりも低いなど、放射能をまき散らした東京電力、その背景にある国や自治体の無策、責任をまったく無視した内容である。
 すでに国民的議論によって決したように原発ゼロが基本的方針である。原発推進につながる教育は不要である。


p.60 2.双方向的なコミュニケーションの充実
→ 上部にさらに「丁寧な対話を通じて信頼関係を構築する」とあるが、対話とは、お互いの主張を聞き入れつつ、譲歩の可能性もあることを意味する。これまで行われてきたのは、対話というが、国が決めた方策を譲ることはない、一方的なパブリックアクセプタンスである。そのような手法を前提とした本意見、計画は意味がない。
 新たな産業を創出するならば、直ちに廃炉し、廃炉事業の展開、さらには再生エネルギーの立地などを振興すべきである。


p.60 2.双方向的なコミュニケーションの充実
仏国では、1981年に「地域情報委員会(CLI)」を導入し、原子力施設立地地域の情報共有の場を設置している

→ドイツでは ドイツ(脱原発)倫理審査会を設置し、国民的議論を行い、脱原発を決定した。原発は、情報の秘匿、(原発は安価、安全、なければ経済が破綻、など)虚偽の情報提供、立地のための分断工作、安全面への配慮を欠いたコスト削減など、経済面のみを重視してきたことに大きな問題がある。倫理的な面こそ最優先すべきであり、そのような委員会こそを設置し、脱原発の方向を決定すべきである。


2013年11月29日金曜日

2013/3/24 13:30 県民健康管理調査「甲状腺検査」説明会 in 会津での説明についてのコメント

 鈴木教授のメールアドレスが見当たらないので、同氏の所属される 器官制御外科学講座 http://fmusurg.com/contact.php からメール(2013/3/25) 
 2013/11/29現在、返答はいただいていない。ただし、(平成25年11月27日開催)「県民健康管理調査」検討委員会 第1回「甲状腺検査評価部会」
 をみると、年齢についての記述は消えたようである。もちろん、私のメールを読んで対応されたわけではないと思うが。
 ただし、閾値っぽい記述、Cardis et al.(2005)(無料pdf)のケース=コントロール分析で集めたサンプルにおける線量分布をチェルノブイリ全員の分布ととられかねないような表示をしていること、さらにこの論文では線形モデルが最良であることが(あいまいだが)記述されていること、被曝者について全固形ガンを対象に行った結果が混同されていることなどを再度指摘する予定。

 この他、私の行った甲状腺の分析結果 その1 その2 をお知らせしたり、研究者へのデータ公開、甲状腺ガンが判明した方とそうでない方のケース=コントロール研究の提案メールを同氏もしくは
放射線医学県民健康管理センター に送付したが、いずれも回答はいただいていない。


----------------以下が2013/3に送付したもの(Web公開用に文意を変えない程度でリンクの表示を変更した)。

 慶應義塾大学商学部でマーケティング・リサーチ(統計学の応用のようなこと)を教えています。その関係で被爆者データの再分析などを行っており、関連文献もサーベイしています。
 昨日の甲状腺調査説明会で 放射線の影響について、「20才以上であれば、100mSv以上であればがんが生じる。」と説明されました。

 動画
  00:59:49ごろ 以降。


出所) http://www.ustream.tv/recorded/30307437 の上記時間のキャプチャ。

 これについては、ICRPや被爆者の実証結果からも支持されていない閾値モデルを想定しておられるように聞こえます。実際、投影されている画像でも100-200mSvでと記されていますので、それ以下では発生しないという閾値モデルを想定されているようです。
 一方で、100mSv以上であれば「必ず」生じるともとられかねません。資料および説明の変更についてご一考いただきたくメール致します。

以下、ご参考。

 例えば被爆者の調査
 固形ガン全体については 閾値無しの線形モデルが支持されています。
論文 

  同様に、甲状腺ガン発症についても、 線形モデルが支持されています。
概要 
論文 
  →これのFig1

さらに、この論文にあるように成人への影響を示唆する結果も集積されつつあるようです。
 以上よろしくお願いします。


2013年11月17日日曜日

帰還に向けた安全、安心委員会配付資料の問題点


 メールアドレスがわかった、数名の委員の方々、および規制委員会には個別に若干文面をかえて送信した(11/17)。
 typoなどはその後、適宜修正した。
 Koya et al.(2012)について誤った解説を修正(5/15)。(p=0.11は10%水準では有意ではないが、このサンプル数、分析では注目すべき結果だと考えるので、そのように解説。→LNTを前提にすれば、線量区間を区分して検定せず、線形モデルで検定すれば10%水準で有意になる可能性があるとも考える。)

第3回資料(第1回の再配布) 線量水準に関連した考え方 
http://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/kikan_kentou/data/0003_05.pdf

この資料は全体的に出所が古くかつ、引用の一貫性がありません。
例えばUNSCEAR2000を数カ所引用していますが、UNSCEARは、その後下記のURLに あるように
http://www.unscear.org/unscear/en/publications.html

UNSCEAR 2006 Report: "Effects of ionizing radiation”
UNSCEAR 2008 Report: "Sources and effects of ionizing radiation".
UNSCEAR 2010 Report: "Summary of low-dose radiation effects on health".

さらに最近は子供に注目した
UNSCEAR 2013 Report: "Sources, effects and risks of ionizing radiation”.
Annex B - Effects of radiation exposure of children
をまとめています。

 これらの中で、UNSCEAR 2010はlow-doseに注目したものなので、引用するなら ばこれを重視すべきです。以下、「考え方」の

1.放射線による健康影響についての科学的知見(100mSv)について

 に記載されている項目の問題点を指摘します。丸数字、出所は同資料からの引 用。→が私の追加情報です。

① 放射線の健康影響に関する科学的知見を国連に報告する機関である「原子放 射線の影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)」の報告書や放射線防護に関 する基準の策定に当たって国際的に広く採用されている「国際
放射線防護委員会(ICRP)」勧告等によれば、以下の点が明らかにされている。


→科学的知見なので、UNSCEARを引用すべきだが、ICRPも参照。さらに前者につい ては以下にあるように、2000をいまさら引用。周知の通りLow dose に絞った 2010reportが出たばかり。最新の知見を援用するのが常識です。


② 100mSv 以下の被ばくでは、あるしきい値を超えて被ばくした際に発生する 健康影響(「確定的影響」という。具体的には、皮膚障害や不妊などの「組織 反応」を指す。)は確認されていない(注1)。
(注1)ICRP Pub.103 (60) 「約100mGy までの吸収線量域では、どのような組 織も臨床的に意味のある機能障害を示すとは判断されない。」(Sv 単位につ いては、局所毎の被ばくにおいて、Sv≧Gy であるため、総和を取って、約 100mSv≧約100mGy の関係が成り立つ。以下同じ。)」


→科学的知見なのでUNSCEARを参照すべき。

③ 被ばく線量の増加に伴って発症率が増加する健康影響(「確率的影響」とい う。具体的には、がんや白血病等を指す。)については、しきい値がないと仮 定しても、100mSv までの被ばく線量でのがんのリスクは疫学的方法では直接 明らかにすることは困難というのが国際的な合意であり(注2、3)、100mSv 以下の被ばくでは、他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小 さく、放射線による発がんのリスクの明らかな増加を証明することは難しいと されている。
(注2)UNSCEAR 2000 Annex G.510「約100mGy をはるかに下回る急性線量にお いて影響の明白な兆候を示すことには統計的な限界が付きまとっている。」
(注3) ICRP Pub.103 (A86)「がんリスクの推定に用いる疫学的方法は、およ そ100mSv までの線量範囲でのがんのリスクを直接明らかにする力を持たない という一般的な合意がある。」


→UNSCEAR2010では

 (Paragraph 25) Statistically significant elevations in risk are observed at doses of 100 to 200 mGy and above. Epidemiological studies alone are unlikely to be able to identify significant elevations in risk much below these levels.

 とあり、100mSv以下では認められないという記述はありません。
また、”Epidemiological studies ***alone*** are unlikely to"とあるよう に、疫学だけでなく、DNAレベル、動物実験などの結果も併用することが記載され ているが、そのことがまったく無視されています。
 さらに、後段の「100mSv 以下の被ばくでは、他の要因による発がんの影響に よって隠れてしまうほど小さく、放射線による発がんのリスクの明らかな増加 を証明することは難しいとされている。」部分の出所がありません。

 なお、上記のUNSCEARの記述は被曝者の死亡の分析13報に基づくものですが、私の
LSS(Life Span Study) 13報 被爆者データのRによる分析 
http://nonuke2011.blogspot.jp/2012/05/lsslife-span-study-13-preston-dl-y.html
 にあるように、データを低線量区間に限定して、サンプル数を低下させる分析自体が不適切です。私の再分析にあるように、全データを用いて閾値の存在を仮定するモデル、仮定しないモデルなどを推定して情報量基準でモデル選択するという標準的な手法を使えば、線形モデルがもっともあてはまりが良好であることがわかります。


④ 以上の100mSv 以下の被ばくに関する健康影響の評価は、短時間での被ばく による影響の評価であるが、長期間にわたる被ばくの場合は、積算線量が同じ 100mSv の被ばくであっても、短期間での被ばくに比して、より健康影響が小 さいと推定されている(注4)。
(注4) UNSCEAR 2000 Annex G.512「腫瘍発生の有意な増加をもたらす最低線量 は一般には遷延被ばくによる方が急性被ばくよりも高い」


→UNSCEAR2010 paragraph 26) Overall. the cancer risk estimates from these studies do not differ significantly from those obtained from the studies of the atomic-bombing survivors in Japan.
とあるように発ガンリスクについては、原爆被曝者のような短期的(高線量率)、 Mayak,Techa,Chernobylなど長期的被曝(低線量率)とも変わらないことが明示 されている。
 ただし、この文章のあとには、
 By contrast. studies on human populations living in areas with elevated natural background radiation in China and India do not indicate that radiation at such levels increases the risk of cancer.
 高線量地域では発ガンリスクが観測されていないとある。しかし、これらに関する原論文(下に例として3つをリスト)によると、DNAレベルでは変異chromosome aberration が生じていることが示されている。またKoya et al.(2011)では発達障害についてp=0.113が見いだされています。

Wang et al. (1990), "Thyroid Nodularity and Chromosome Aberrations among Women in Areas of High Background Radiation in China," Journal of the National Cancer Institute, 82 (6), 478-85.

Kumar et al. (2012), "Evaluation of Spontaneous DNA Damage in Lymphocytes of Healthy Adult Individuals from High-Level Natural Radiation Areas of Kerala in India," Radiation Research, 177 (5), 643-50.

Koya et al.(2011), "Effect of Low and Chronic Radiation Exposure: A Case-Control Study of Mental Retardation and Cleft Lip/Palate in the Monazite-Bearing Coastal Areas of Southern Kerala," Radiation Research, 177 (1), 109-16.


⑤ 子どもや胎児への影響についても、100mSv 以下の被ばくでは、年齢層の違 いによる発がんリスク等の差は確認されていない(注5)。
(注5)D. L. Preston, et al. Solid Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors:1958–1998; RADIATION RESEARCH (2007)

→ここだけなぜか単発の論文。この論文は被曝者のガンの発症についての分析。 この論文ではAll solid cancersについて線形モデルのあてはまりが最良とさ れ、TABLE 10にあるように、ERR(excessive relative risk)の被曝時年齢Age at exposure (percentage change per decade increase)のパラメータは -17%  (CI=-25%; -7%)。つまり,被曝時年齢が10才高いと発ガンリスクが17%低下する。逆に言えば10才若いと17%増加することが示されている。論文の誤読と考え られる。
 さらに、UNSCEAR2010では、(25) Risk estimates vary with age. with younger people generally being more sensitive; studies of in utero radiation exposures show That the foetus is particularly sensitive, with elevated risk being detected at doses of 10 mGy and above.
 とあるように子供、特に胎児については10mGyでもリスクが高まることが明示 されている。

 さらに UNSCEAR2013 では部位別のリスクを比較し、breast, brain, thyroidガンなどでは大人よりも子供の方がリスクが高いことを示している (Table13)。なお0.5Gy以下では観測されないが、それ以上の被爆であれば、 determinisiticなリスクについても子供の方が影響が強いことが示されている (table 14)。


⑥ ヒトにおける放射線被ばくによる遺伝的影響については、疾患の明らかな増 加を証明するデータはないとされている。(注6)
(注6)UNSCEAR 2000 Annex G.177「ヒトの疾患に結びつくような遺伝的影響 について、定量的情報を与えるような直接的データは今のところない」


→UNSCEAR2010 p.12からの B. Heritable effects of radiation exposure
Paragraph 36). Unlike the snuiies OIl radiation-associated cancer, epidemiological snldies have nol provided clear evidence of excess heritable effects of radiation exposure in humans. 中略 

Neither do they confirm there is no risk of heritable effects, because detecting a small excess incidence associated with radiation exposure above a fairly high incidence in contaminated populations (table 2) is difficult.

 人間については、「明確」な遺伝的な影響は観察されていない。ただしTable2に あるように遺伝的な欠陥は頻度が高いため、放射線による影響を検出しにくい という限界がある。

 Paragraph 38. The clearest demonstrations of the heritable effects of radiation exposure come from extensive experimental studies on animals at high doses, particularly laboratory mice. 中略
Until recently, the doubling dose derived from mouse studies alone was estnnated to be 1 Gy, and this was applied to estimate hereditary effects in human populations receiving low-dose exposures over many generations.

 マウス実験では観測されているので、それの結果を用いて人間における遺伝的影響のリスクを推定している。→結果がTable2


 さらに、この資料では触れられていませんが、非ガン影響も存在。。 
 c. Radiation-associated non-cancer diseases
41. Radiation exposure of the developing embryo or foetus during pregnancy can also contribute to the appearance of non-cancer diseases in children. 中略 the Committee considers that there is a threshold for these effects at about 100 mGy.
→閾値は100mGy程度。

43. There is emerging evidence from recent epidemiological studies indicating elevated risks of non-cancer diseases below doses of 1 to 2 Gy. and some cases much lower.
→疫学によって様々な証拠が集まりつつある。 1-2Gyだが、もっと低いものもある。

 このように「考え方」で提示されている「科学的知見」は古く、偏ったものです。 これを前提にした議論は無意味と考えます。少なくとも春日委員が指摘された ように、こども、妊婦のリスクが高いこと、それへの対応を明示すべきです。

 なお、ICRP 111 では、帰還のみならず移住も選択肢としてあります。帰還の みに偏った議論はすべきではないことも併せてお伝えしたいと思います。

 以上よろしくお願い致します。

2013年10月25日金曜日

福島甲状腺調査の分析2



福島甲状腺調査の分析2
 11/26 追加検証のための分析を最下部に追加。

 以前、H23の結果について分析を行った(こちら参照)。その後、H24年分の市町村別分布も公開されたので、これらを加えた25サンプルで分析を行い、欧州低線量被曝研究ワークショップ:Fukushima sessionで報告した。その際、作成した英語版のポスターを下記に添付する。

 H23はB判定が話題になっていたので、5.1mm以上の結節を分析した。しかし、結節の成長が遅いのであれば、小さいものについても分析すべきであると考えて、5mm以下についても分析した。問題意識をconjectureとして示すと下記の通り。

  • Conjecture
    • 放射線の影響によって結節ができたのだとする。しかし結節の成長はある程度遅いのだとする。であれば、結節を大小に分けたとき、小さい結節の方が、大きい結節の発見される人の数よりも被曝量との相関が高いだろう。

各図表 の意味は下記のとおり。
  • Tab.1 甲状腺調査の判定結果をまとめたもの。
  • Tab.2 推定に用いた4種類の線量の概要。
    • 上記H23で説明したWHO、放医研NIRS内部被曝、福島県外部被曝、福島県内部被曝
  • Tab.3 各市町村のこれら4つのdose一覧。
    • 赤字:WHOが推定していないのでこちらで推定。方法は上記H23を参照。
    • 青字:こちらで8mSvと設定した。
    • 福島外部、内部被曝線量についてはカテゴリ化されて公開されているのでこちらで市町村別に平均算出。
      • WHO(NIRSも)の線量推定は汚染度の高い地域については細かく推定しているが、その他については同一の値。しかし、福島外部線量は、それらの間でもばらつきがある。→WHOはこれら最新の情報を用いた再推定をすべきである。
      • 以下の分析はH23、H24についての結果のみを用いる。
        • H25の結果も一部公開されているが、結果確定割合が半分以下、高校生が少ないなど年齢分布も異なるため。
  • Fig.1 横軸にWHO線量、縦軸に5mm以下の結節があると判定された人の割合(分母は結果確定数)。
    • 赤 2011=H23 実施対象
    • 青 2012=H24 実施対象
      • 汚染度の高い地域から検査が行われた。
    • ○ 観測値:○の大きさは受診者数(結果確定者数)に比例
    • x 後述のモデルで推定した結果を用いて推定した結果
  • Tab.4 (WHO線量についての)ポアソン回帰の結果
    • 5mm以下、5.1mm以上、これらの合計、をこの表にある変数群で説明(意味はH23分析を参照)。
      • 平均年齢、4つの年齢層分布割合を入れて推定したが、従属変数によって有意になるものが異なったので、AICを比較して最良のものを選択した。
    • WHO線量は、5mm以下、5.1mm以上、これら合計について、いずれも有意となった(*がついているもの)。
      • Fig4で相関があるように見えた。ただし、受診者年齢などいろいろな要因が作用する可能性があるので、この表にあるような変数の影響を考慮して、線量と結節数の関係を分析した。その結果、「関係がないという」帰無仮説が少なくとも10%水準で棄却されたことを意味する(いい加減な表現をすると「関係がある」ということになる)。
        • z検定した結果を示したが、自由度18のt検定すべき。そうすると*が一つ小さくなるものもあるが、本質は変わらない。
      • z-値をみると5mm以下の方が5.1mm以上の推定値のそれよりも大きくなっており、(5.75 vs 2.71)、上のconjectureが確認されたといえるだろう。
        • Fig1 にあるように○とxはだいたい一致。このモデルのあてはまりはよい。
  • Tab.5 他の線量についても同様に分析。線量部分の推定結果をまとめたもの。最終的な結果なので下記に拡大。
    • WHOは上の再掲。放医研内部被曝NIRS、福島県外部線量ともに5mm以下については有意だが、5.1mm以上については有意になっていない。
      • これらについてもconjectureが確認されたといえる。
    • 福島内部被曝線量については有意ではない。
      • 他の3つは初期被曝に注目しているが、これは2011年6月末~現在まで継続中のもの。結節が初期の被曝による影響であることを暗示する?


  • その他分析
    • はずれ値と思われる浪江、飯舘などを除外して再推定。
      • 浪江をはずすとWHO線量の有意水準は低下するが変わらず有意である。
      • 飯舘をはずすと福島外部線量は有意ではなくなる。
        • ただし、国会事故調の調査結果によると飯舘の多くの方々は長い間避難せず残られた。はずれ値として除外することは不適切であろう(こちらの下部のグラフ参照)。
        • 浪江なども早く避難したものの、同調査報告によると浪江の方の半数以上が5回以上避難。中にはより線量の高い地域に非難された方もおられる。よって、これもはずれ値として除外すべきではないだろう。
    • (10/27 追記) 避難地域区分ダミー(警戒、計画的避難、緊急時避難準備)を導入すると線量は有意ではなくなる。
      •  これは線量に応じて区分を決定しているためであろう。ただし、同一町村でもこれらが混在するなど、処理に工夫が必要である。
    • 甲状腺ガンについても同様に分析したが有意とならなかった。
      • 43(合計では44とあるが市町村別データだと43)と少ないためだと考えられる。
      • ただし、甲状腺ガン人数と結節人数には正の相関がある。
  • 結論
    • 被曝量と結節の間には正の相関があること(特に小さいもの)が明らかとなった。
      • N=25、市町村レベルの集計データ。エコロジカルな分析ではあり、因果関係を示すものではない。
    • これらを踏まえると今回の結果は、将来の甲状腺ガンの発生の早期警戒なのかもしれない。発症しないという決めつけるのではなく、適切なフォローアップが必要である。
  • 追加意見
    • WHOの線量推定はそもそもpreliminaryなもの。健康影響も含めて再推定すべきである。
    • 県や国も適切、迅速な対応、情報公開すべきである。詳しくは(H23の結果参照)。


  • 追加検証のための分析
    • 放射線によって半年から数年で結節が発生、成長するとは考えられない。汚染度が高い地域では(無意識に)、あいまいなものはクロに拾い上げるという心理が働いた結果では無いか。という指摘をMELODI WS参加の日本人疫学者から指摘頂いた。
    • 第13回「県民健康管理調査」検討委員会(平成25年11月12日開催)
      • 資料2 県民健康管理調査「甲状腺検査」の実施状況について
        • 資料5市町村別二次検査実施状況の(2次検査)から
        • 結果確定数に占める、A1(異常なし) の割合を縦軸、WHO甲状腺線量10才を横軸にプロットした。
          • (H25分、H24のいわきの一部は未確定が多いので除外)。
          • 線量についてはH23のついて分析を行った(こちら参照)。
        • 線量の高い所ほど(本当はA1なのに)1次でA2以上に拾い上げたのであれば、2次検査では線量が高い所ほどA1に再分類される割合が高いはず→グラフにあるように、そのようなことはない。 



  • ポスター JPEG版は下記  pdf版が必要な方はこちらから。 (A0サイズ)


2013年5月31日金曜日

原子力規制委員会設置法の一部の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令(仮称)案に対する意見募集について|意見公募(パブリックコメント)|原子力規制委員会 へのパブコメ  2013/5/30 送信
 半角記号などは受け付けないので、下記を文字変換して送信。



p.4  発電用原子炉, 試験研究用等原子炉
→最近のJ-PARCでの放射性物質発生、排出による損害も生じうる。それを含んだ条文にすべきである。
例 試験研究用原子炉および放射性物質発生の恐れのある実験設備
 もしくは 放射性物質発生の恐れのある実験設備 を別途設置する。
 これにともなって、 設置申請、運転計画なども提出させることとする。


p.10 発電用原子炉の運転の期間の延長に係る期間の上限
閣議決定されたように、原則40年で廃炉である。この条文自体が不要である。
どうしても入れるならば、「40年で廃炉を原則とする。」ことを第二十条の六 冒頭に明示し、延長をみとめる条件を明示する必要がある。

p.11 原子力施設検査官などの資格
 相当の知識、経験はあいまいである。 せめて 炉主任 資格取得者、もしくは自前の試験であり、受験などに問題が生じる場合には、米国NRCでのlicenceを取得するなどすべきである。
http://www.nrc.gov/reactors/operator-licensing/licensing-process.html

2013年5月17日金曜日

福島県健康調査 甲状腺調査 について 市町村レベルでの分析
(2013/10/25若干改訂→受診者数をウエイトとする必要はないので、それについての記述、結果を削除。またt検定の方が適切だが手抜きしてz検定しているので、若干*の数が減ることにも注意)
 
0.経緯
福島の甲状腺調査は、当然ながら個人別のデータであり、個人レベルでサイズや結節有無などと線量の関係を分析できるはずだが、されていない。環境省のデータも公開されたが、

 環境省 報道発表資料-平成25年3月29日-福島県外3県における甲状腺有所見率調査結果について(お知らせ)

 調査対象者層が異なる(0-2才が含まれていない、福島とマッチングさせるための変数も充分にとられていない。→そもそもそのような分析自体想定していない)。など、まあ調査設計がひどい=福島と比較しづらい=感じ。

 情報公開クリアリングハウスさんのおかげで、H23年(被爆量の多い地域)の市町村別データが公開された。
 → 福島県民健康管理調査 23年度実績(市町村別甲状腺検査の結果を含む)

 これらを使って出来る範囲のことを分析した。

  上記データが公開された2013/4月末には、だいたい分析できたので、福島県(医科大)の健康管理センター、環境省の担当に電話で調査方法などを確認。→togetter  福島県健康調査(基本、甲状腺)、環境省甲状腺調査について

 しかし、サンプル数が少なく、不安定な部分もある云々で公開はしてこなかった。が、昨日からのstudy2007さんの分析や、それを巡るやりとり→ 
 H23年度福島県甲状腺検査市町村別結節割合と土壌汚染の関係について - Togetter
 を拝見して、避難関係の変数を追加して分析した結果を公開する。

 結論としては、H23調査で市町村別データが公開された13市町村について、結節サイズ5.1mm以上の人数(B判定)を分析したところ、WHOの推定(1年間)甲状腺線量と正の相関があった。ただし、浪江を除くと有意ではなくなるなど、注意が必要である。
 あくまで市町村レベルでの、各種データ間での(因果ではなく)相関であることに注意されたい。

 そのうち論文として投稿するかも知れないが、ここでは速報として引用なども簡略化する。


1 市町村別のデータ
下表にあるように、二つのデータを中心に市町村別データを整理。

 ・福島県民健康管理調査 23年度実績(市町村別甲状腺検査の結果を含む)
 ・環境省 報道発表資料-平成25年3月29日-福島県外3県における甲状腺有所見率調査結果について(お知らせ)

 線量についてはWHO,放医研、福島県WBCなどを利用。詳細は下の方参照。この他、国勢調査のデータもサンプリングバイアス検討のために利用(表には示してないが)。

表 市町村別データ(生データ)
注)黄色の3町はWHOは線量推定していないため、これらの地域で最も低い値を記入してある。出所は文中に大体示した。

表 市町村別データ(割合)


2 線量について
 線量について市町村別で推定、測定、公表されているものは、WHO,福島県基本調査外部線量、福島県WBC、放医研(内部被曝)、などがある。それらの中で、WHO(発生後1年間の甲状腺線量10才)が最も包括的なはずなので、それを用いる(外部、食物、呼吸を考慮)。
 → Health risk assessment from the nuclear accident after the 2011 Great East Japan earthquake and tsunami, based on a preliminary dose estimation
 ただし20km圏内の3町については推定されていないので、次の2シナリオを設定。
・同地域のなかでもっとも汚染度の低い15mSvとする。
・次の手順で、他の線量を用いて内挿して推定する。
 WHOの推定値がある10市町村について、線量を被説明変数とし、放医研、福島県基本調査外部線量、福島県WBCの各線量で重回帰分析。それをステップワイズで変数絞り込みした結果、放医研の「甲状腺線量1才児」のみがp=0.14となった(下表)。
 以下、Rからの出力をそのまま掲載する。通常のソフトと有意水準の表示が異なることに留意されたい。

表 線量内挿のための分析(従属変数:WHO線量、20km内3町を除く)

                   Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)
(Intercept)           7.945     16.485    0.48     0.64
Thyroid.dose1yNIRS    1.588      0.969    1.64     0.14

Residual standard error: 22.1 on 8 degrees of freedom
  (3 observations deleted due to missingness)
Multiple R-squared:  0.251,Adjusted R-squared:  0.158 
F-statistic: 2.68 on 1 and 8 DF,  p-value: 0.14

 10%水準でも有意ではないし、R2も低いのだが、仕方ないのでこれを用いる。このパラメータと放医研の線量を用いて、3町の内挿値を求めた。

    放医研  内挿値
富岡町         10   23.82  
大熊町        20   39.70
双葉町         30   55.58

3 受診(回答)バイアス
表にあるように市町村によって受診率が異なる。被曝量が多い地域ほど心配して受診率が高くなる、といった傾向がある場合、それを考慮した分析を行わなければ、線量の推定にバイアスが生じる。
 これをチェックするため13市町村の受診率を従属変数、WHO甲状腺線量、国勢調査による総人口、男女比、平均年齢、15才未満人口の割合、人口密度を説明変数とした(割合なので)ロジスティック回帰分析を行った(検査数を重みとした)。さらに、ステップワイズ法で変数を絞り込んだ。
 その結果、人口密度、15才未満人口の割合などが有意となった。線量が有意とはならなかったことは、受診率の違いは、汚染度の高さ(への心配)ではなく、これらのデモグラフィクス要因によることを意味する。なお、線量については3町を15mSvとしても、内挿値を用いても有意とはならなかった
 以下では受診率バイアスを補正するために、傾向スコアを用いる。この手法では、R2が高いことが望ましい。このため、さらに、有意となった変数間の交互作用も導入した分析を行った。その結果、修正R20.83となった(下表)。
交互作用などがあるせいで、解釈は困難であるが人口密度の高い市部で受診率が高くなるようである。

   表 受診率のロジスティック回帰の結果
Coefficients:                                     
Estimate Std. Error t value Pr(>|t|)   
(Intercept)                          1.46e+02   4.00e+01    3.65   0.0082 **
人口密度                             1.13e-01   4.02e-02    2.80   0.0267 * 
人口性比                            -1.43e+00   4.10e-01   -3.50   0.0100 * 
年齢.総数.15歳未満人口割合          -1.16e+01   3.31e+00   -3.51   0.0099 **
人口密度:人口性比                   -1.16e-03   4.23e-04   -2.74   0.0288 * 
人口性比:年齢.総数.15歳未満人口割合  1.16e-01   3.40e-02    3.40   0.0115 * 
---Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1
Residual standard error: 14.7 on 7 degrees of freedom

Multiple R-squared:  0.901, Adjusted R-squared:  0.83 F-statistic: 12.7 on 5 and 7 DF,  p-value: 0.00212
注)検査数を重みとした推定結果。

4 結節との関係
1)データ
 5.1mm以上の結節もしくは、20.1mm以上の嚢胞があるとB判定とされ2次検査が推奨される。後者についてはH23は1名しかおられないので、前者に注目する。
 市町村別の5.1mm以上の結節と線量の関係を示す。まず直感的にわかりやすい、受診者に占める、5.1mm以上の結節がみつかった者の割合を示す。円の大きさは検査数に比例している。

図表  WHO推定線量と5.1mm以上結節の割合
注)線量について3町は15mSvとしたもの。円の大きさは検査数に比例。

 割合を従属変数とした分析もできるが、人数というカウントデータなので、ポアソン回帰分析の方が適切である。よって、市町村別の線量と5.1mm以上の結節がみつかった「人数」をプロットしてみた。人口および、受診者数が異なるために、この図を読むときには注意が必要である。
 なお、赤マークは後述するモデルで推定した結果である。観測値とよくあてはまっていることがわかる。

図表  WHO推定線量と5.1mm以上結節の人数(および推定結果)
注)線量について3町は内挿して推定したもの。円の大きさは検査数に比例。
赤はモデルでの推定値を用いて計算した予測値(内挿値)。

2)分析方法
 5.1mm以上の結節人数を被説明変数、下記を説明変数としてポアソン回帰分析を行う。なお、甲状腺ガンは女性に多いが、性別内訳については市町村別に公開されていないので用いることができない。

・log(1+線量)
 ポアソン回帰では、発生頻度パラメータをλ=exp(λ0+Σβx)のように定式化するので、logをとっておくと、この係数が1のときにはλが線量とともに線形に増加、1より小さければ逓減型、大きければ逓増型となる。LSSなどでもポアソン回帰の枠組みで推定しているが、ERR、EARで定式化し、かつ線形を仮定している。ここでは普通の統計パッケージでも推定でき、上述のように線形を前提としない推定を行った。
 参考→ LSS(Life Span Study) 13報 被爆者データのRによる分析

・受診者に占める6-10才の割合
  はじめの表にあるように0-5才、11-15才、16-18才の割合もあるが、被説明変数との単相関がもっとも高いこれのみを用いた。

 上述のstudy2007さんの分析を参考として、2変数も作成した。
・避難率
 3/12日23時59分ごろまでに避難した者の割合(国会事故調報告書住民アンケートの結果p.362第4部 被害状況と被害拡大の要因 (その1) | 国会事故調」よりデジタイザで読み取り)

・ヨウ素剤を配布したか?ダミー
 国会事故調報告書「4.4.2 防護策として機能しなかった安定ヨウ素剤」によると楢葉町、富岡町、双葉町、三春町で配布。今回のデータには三春町は含まれていない。
  第4部 被害状況と被害拡大の要因(その3) | 国会事故調


 さらに線量については、次の二通りを推定した。
・3町を15mSvとした場合
・内挿して推定した場合

3)結果
 下記には、上述の4つの説明変数すべてを導入し、3町については線量を内挿して推定した場合の推定結果を示す(ウエイトあり、なし)。
 線量のパラメータは正で1%水準で有意である。なお、3町の線量を15mSvとした場合でも有意水準には変化がなかった。
 
表 ポアソン回帰の結果 (ウエイトなし,
3町線量内挿)   
                        Estimate Std. Error z value Pr(>|z|)    
(Intercept)            -1.35e+01   3.10e+00   -4.36  1.3e-05 ***
log(1 + Thyroid.dose4)  5.57e-01   2.02e-01    2.76   0.0058 ** 
年齢別6.10p             2.25e+01   9.38e+00    2.40   0.0163 *  
避難率pevacuate          8.38e-04   2.24e-03    0.37   0.7079    
ヨウ素剤配布ダミーfg.iodine -3.51e-01   3.56e-01   -0.99   0.3242    
---
Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1
(Dispersion parameter for poisson family taken to be 1)
    Null deviance: 18.1174  on 12  degrees of freedom
Residual deviance:  6.6378  on  8  degrees of freedom
AIC: 64.49


4)頑健性の確認
 サンプル数は13市町村と少ないので、結果の頑健性を確認するために、1市町村づつ取り除いて12サンプルとして推定した(1つ取り除いた13通りを推定)。
 すると、どれか一つでも市町村をとり除くと避難率、ヨウ素剤配布ダミーは有意ではなくなった。不安定なので、これは、これ以降は入れないことにする。
 線量のパラメータについては、浪江町を取り除いた場合のみ、有意ではなくなる。

 サンプル数が少ないこともあり、若干の不安定さがあることには注意が必要である。

5)他の線量
 ここまでは、WHOの甲状腺線量10才(1年間)を用いた。WHOは1才、成人についても推定しているが、これらの相関はいずれも0.98と極めて高いため、結果は変わらない(はずである)。
 この他にも市町村別の線量を評価したものがあるので、比較のため、線量と6-10才の割合のみを説明変数として推定した(下表)。
 いずれも10%水準でも有意とはならないがNIRSについては10.5%であり、サンプル数が増加すると10%有意になる可能性はある。なお、WHOの推計は外部、食物、呼気からの線量をあわせて推計してあるので、これらを包含したものとなっているはずである。

表 他の線量を用いた推定結果(線量パラメータのみを抜き出したもの。
・放医研の1才児甲状腺線量
 データは→ 資料2 「甲状腺検査」の実施状況及び検査結果等について の24枚目(甲状腺線量の90パーセンタイル値:1才児)。もともと下記のWBCに基づいて算出されたもの。
                 Estimate Std. Error z value Pr(>|z|)
log(1 + Thyroid.dose1yNIRS)    0.322      0.198    1.62    0.105    

・福島県基本調査 外部線量
 データは→資料1 県民健康管理調査「基本調査」の実施状況について p.8から市町村別に平均値算出。
log(1 + ExtDose)    0.271      0.452    0.60  0.54974    

・福島県WBC測定値で預託線量1mSv以上と判定されたものの割合
 データは→平成23年6月27日~平成25年 3月31日まで の市町村別分布より算出。

log(1 + WBC1mp)   116.94      89.08    1.31     0.19    


6)環境省の3市調査
 環境省調査は0-2才を含んでいないため、福島調査とは比較が困難である。よって、あくまで参考値であるが、これら3市の線量を0として、年齢別分布も0-2才は含まれないことを無視して6-10才の割合を算出し、同様の分析を行った。
 ただし、福島甲状腺調査とは実施時期などが異なるため、これらの変数では表現できないなんらかの差異があると考え、コントロールダミー(fg.control :3市について1、福島県内は0)を導入した。
 コントロール変数をいれないモデル、入れたモデルのAICを比較すると、後者の方があてはまりは良好となった。つまり、これら3市とH23調査には体系的な何らかの差があるといえる。

 (ウエイトなしとした場合の)推定結果を示す。6~10才の割合の符号が、上の場合と逆転した。これは0-2才を含んでいない3市について無理矢理変数を導入したためと考えられる。ただし、線量パラメータは、いずれの場合も正で有意である。
 上記と同様、頑健性の検討を行った。上と同様、浪江を除いた場合のみ線量のパラメータは有意とならなくなった。6-10才の割合は抜け方によっては、有意にならない場合もあった。これは0-2才が含まれていないことを無視したためであろう。

表 環境省調査3市も含む(ウエイトなし、線量:3町は15mSv、3市は0mSv)
                      Estimate Std. Error z value Pr(>|z|)    
(Intercept)             -6.324      1.554   -4.07  4.7e-05 ***
log(1 + Thyroid.dose)    0.361      0.150    2.41  0.01599 *  
年齢別6.10p             -0.668      4.766   -0.14  0.88858    
fg.control               1.921      0.509    3.77  0.00016 ***
---
Signif. codes:  0 ‘***’ 0.001 ‘**’ 0.01 ‘*’ 0.05 ‘.’ 0.1 ‘ ’ 1
(Dispersion parameter for poisson family taken to be 1)
    Null deviance: 38.688  on 15  degrees of freedom
Residual deviance: 16.324  on 12  degrees of freedom
AIC: 85.56



5 まとめ
 本稿では情報公開クリアリングハウスさんの情報公開請求によって"はじめて"公開された、H23年の市町村別データ等を用いて分析を行った。サンプル数は13もしくは16市町村と小さいものの、全データを用いると、甲状腺線量(10才)と5.1mm以上の結節人数には、有意な"相関"がみられた。
 なお、浪江を除くと、有意ではなくなるが、同町は避難指示があいまいであったため、何度も避難し、かつ高線量地域に避難させられた割合も高くなっている(国会事故調報告書 第4部 被害状況と被害拡大の要因 (その1) | 国会事故調)。線量が高いと推定することには一定の合理性があると考えられる。
 参考までに、WHOの推定は当地で収穫された作物を継続して摂取するなど、過大に(安全側)に見積もられているらしいが、例えば全地域の被曝量を10分の1にしても、パラメータの有意水準は変化しないことに注意したい。

 この検査はH23年10月からH24年3月までに行われたので、福島原発事故から7ー12ヶ月しか経過していない。「チェルノブイリでは事故後4年から小児の甲状腺ガンが増加した」という報告からみると、早過ぎる感もある。ただし、ここでの従属変数はガンではなく「5.1mm以上の結節」である。医学的な観点からどうなのかは、筆者にはわかりかねるが、当時からみるとスクリーニング機器の性能は向上したのではないだろうか。前駆段階としての結節の発生を捉えたのかもしれない。いずれにしてもより精密な線量評価、分析が必要である。

 なお、結節のサイズヒストグラムをみると、(より線量が低いはずの)H24の方がサイズも大きく、H23よりもピークが右にずれているようにもみえる。それが有意な差なのかも、H23,24調査の対象者を併せて分析すればある程度のことがいえる可能性はある。

図表 結節のサイズ分布
H23 調査

出所)H23  (平成24年9月11日開催) 資料2 「甲状腺検査」の実施状況及び検査結果について →p.17 (3.8万人)
                H24 調査


 はじめにも述べたが、1時点でのデータを用いた分析であり、因果ではなく相関であることにくれぐれも注意されたい。

 最後に要望を述べる。

・予断をもたない検査、調査、診断、分析を
 「100mSv以下では、影響がみられない/影響はない?」という予断をもって調査が行われている感がある。そのような予断をもたず検査、調査、診断、分析をすべきである。
 なお、被曝者を対象としたLSSで100mSv以下に限定するとパラメータが有意ではなくなる、ということについては、下記にまとめたので参照されたい。
 → LSS(Life Span Study) 13報 被爆者データのRによる分析

・素早い分析を
 いずれにしても、このような分析は、ちょっと学んだことがあれば、すぐにでもできるはずである。H24についても市町村別の集計はされているだろう(電話で要望したが公開予定はないとのことであった)。公開が望まれる(自分で公開請求すればいいだけの話ではあるが)。
 ここでは公開された市町村レベルでの分析しかできなかったが、調査側には個人レベルでのデータもあるはずである。それを用いた分析を行うべきである。
 個人の線量と甲状腺調査は未リンクだというが、甲状腺調査の実施対象者は、H23年度は4万人である。多忙であることは理解するが、それらの個人線量の推定とリンクを優先すべきである。
 
・情報の公開
 繰り返すが、この情報は情報公開請求があってはじめて公開された。被災された方々への対応を最優先にすべきであることはいうまでもないが、市町村別レベル程度の情報は即座に公開すべき内容である。
 プライバシー云々を強調しているが、匿名化したデータは医学分野でも多く公開されている。例えば最近公開されたRad Res誌掲載の長崎大によるWBC測定では、個人レベルのスペクトル、避難経路が掲載されている。この他、米国も原子力関係従業者の匿名化個人データを公開している。広島大学では被爆者について公開している。→放射線関連データ源 - Togetter 参照)。
 個人のプライバシー保護は当然であるが、過度の非公開は隠蔽というイメージを与える。

・適切な調査、分析方法の検討
 togetter  福島県健康調査(基本、甲状腺)、環境省甲状腺調査について でまとめたように、福島県健康調査調査センターには未だ疫学担当の方はおられないようである。また、環境省の調査は、福島調査とは、まったく別々に行われている。このため、必要な変数が測定されておらず、年齢、性別、社会経済変数など、個人レベルでマッチングすることも困難な状況となっているようである。さらに、詳細な比較分析の予定もないという。適切な体制構築が必要である。



謝辞
市町村データを公開請求、公開された情報クリアリングハウスさん、@study2007さん、および H23年度福島県甲状腺検査市町村別結節割合と土壌汚染の関係について - Togetter でやりとりされている方々から多くを学んだ。謝意を表する。