2012年2月6日月曜日


東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 中間報告への意見 (2012/1/25ごろ送信)

全体的に
 東京電力からの報告書と内容、論調は類似している。
 同じ現象、データを分析しているので、そうなるのは仕方ない部分もある。た
だし、事故の当事者からの情報ばかりでなく、同様の解釈をしている。以下の点を望む。

 当時者からの情報をまずは報告書に盛りこむこと
 東電からの解釈をそのまま繰り返すのではなく、批判的にまとめること。
 地震による配管への影響がなかったと今の時点で断定すべきではない。

以下、報告書ページ番号  ③ 国民が持っている疑問に答える(納得性)。  地震による配管への影響はなかったのか? を追加すべきである。  原子力災害本部による報告書(原子力災害対策本部 2011a,b)、IAEA(IAEA 2011)、東京電力の報告書(東京電力 2011)などによると、地震での重大な損傷はなく、その後の津波によって電源喪失が生じたことが原因であるとしているようである。  しかし、東京電力の日誌(白板を撮影して文字起こししたもの)をみると 、例 えば1号機だけでも「14:58 M.COND真空破壊」「15:06 純水タンク・フランジ部(腕3本)漏洩確認」とある。また、日誌には入力されていないが白板には「15:20電機ボイラー蒸気漏れ」が報告されている 。柏崎刈羽発電所でも震度6強の地震によって3,000を超える大小の障害が生じた。現在、事故調査委員会 による検証が進行中であり、安易に津波を原因と結論づけるべきではない 。 東京電力「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所プラント データ集 4.運転日誌等 1・2号機 p.16」  http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/plant-data/f1_4_Nisshi1_2.pdf さらに Jnesの解析でも配管に0.3cm3分の亀裂が入った場合のシミュレーション結果と「有意な差はない」としている http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/800/28/004/231209-3-2.pdf ⑦ 起こった事象の背景を把握する。  これに関しては、6章 規制や基準設定に東京電力をはじめとした事業者の影響があったのではないか。検討すべきである。
例えば 平成23年度 原子力土木委員会  の下に
津波評価部会
活断層評価部会
構造健全性評価部会
地下環境部会
津波評価部会
津波評価部会委員名簿
原子力発電所の津波評価技術
確率論的津波ハザード解析
などがある。 その委員名簿も掲載すべきである。みてみると、下記の通り。
http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/list_23
顧問 駒田 広也 (財)電力中央研究所
委員長 当麻 純一 (財)電力中央研究所
幹事長 大友 敬三 (財)電力中央研究所
委員 赤松 英樹 東京電力(株)
委員 井上 大栄 (財)電力中央研究所  
委員 梶田 卓嗣 九州電力(株)
委員 金谷 賢生 関西電力(株)
  以下省略
 以下、電力会社およびその出資による電中研のメンバーが並んでいる。中立な
検討がされてきたとは考えにくい。このような基準設定のありかた自体も問題にすべきである。
・そもそもの原子力発電所の設置として、  同じ場所に6基  原子炉建屋内に使用済み燃料プールを設置  かつ重量物である燃料ブールを高所に設置  3号機と4号機を配管でつないだために3号機から4号機に水素がまわり爆発  など、  というリスク分散の発想がまったくない設計になっていたことも大きな誤り。  確率安全評価の際も 例えば同じカ所にn基設置されていた場合には事故発 生の確率は少なくとも(n/p)とすべきであった。 ・原子炉を廃止にする基準の不在  日本で廃炉されたのは東海、浜岡1号のみ。F1のような老朽炉はそもそも廃炉 にすべきであった可能性が高い。  廃炉にする基準がないことも背景として重要である。 ・情報公開の問題も指摘すべきである。  SPEEDI メルトダウン  最悪シナリオ   など国によるもの  東電によるもの   情報公開がされなかったことによって大きな不信、問題が生じている。この 点に言及すべきである。 ・原子力行政の縦割りの弊害  商用炉は経産省  研究炉は文科省  モニタリングは文科省  労働者については厚労省   など縦割りになっており、例えばJCOの事故時への対応などが共有されてい なかったのではないか。   ⑤ 責任追及は目的としない。  この委員会ではそうかもしれないが、原因を明らかにしたならば、責任追及は 別の機関で行うべきであることは明示すべきである。 ⑥ 起こった事故の事象そのものを正しく捉える。  委員のみの解釈ではなく、国民が判断できるようにヒアリングなどの議事録 も公開すべきである。もちろん社員名を必ずしもだす必要はない。   ⑧ 再現実験と動態保存が必要である。  動態保存  現場を保存、監視すべきである。  Web カメラで遠くからみているだけであり、1号機はカバーされてしまった。  さらに、4号機の壁が崩されていることなど、現状が保存されているとは言い がたい。委員会のみならず報道陣など含めて現場の撮影はしておくべきである。 ・その他
 津波の構造物への影響
 上空からの写真をみると海側の建物は津波後もさして破壊されていない。こ
のことをどう考えるのか。津波による原子炉、主要設備への影響を過大評価して
いるのではないか。
  
他の事例との比較
 柏崎刈羽も地震で4000弱の不適合(うちAs 10件)が生じた。それよりも古い
F1でも機器への損傷があった可能性を否定できるはずはない。
http://www.tepco.co.jp/nu/kk-np/incomp/2011/data/ruikei2312.pdf

・報告書の体裁など 資料も 巻末ではなく本文に入れるべき。 ・事務局のかかわりについて
 報告書は各省庁の担当者からなる事務局によるものと考える。事務局のメン
バー、特に報告書をまとめた者の氏名、所属も明記すべきである。

以上