2012年2月15日水曜日

食品の基準値導出について(pdf) へのコメント→下に問い合わせた結果も追加

1)パラメータの設定について
安全側に評価するとして、核種の存在比率については最大値を用いている。これについては評価したい。一方、土壌から農作物への移行係数(作物別)については、複数の作物がある場合には、「幾何平均」が用いられている(同pdf、p.5)。脚注にあるように、作物別の移行係数にはばらつきがおおきく、対数をとらないと正規分布にならないためである。

上記資料で引用されている放医研などのデータは発見できなかったが、旧原研の生物圏評価のための土壌から農作物への 移行係数に関するデータベース によると、Cs-コメの移行係数は196のデータがあり、最小で4e-5,最大で4.8e-1まで10000倍オーダーのばらつきがある(同,Table I-1)。このような場合には、幾何平均を用いると、リスクを過小評価する可能性が高くなる。最大リスクを想定するのであれば、最大値を用いる方が適切である。

この係数は、摂取量に重み付けられるが、穀物なども含む食料の大部分を含むものであり、幾何平均ではなく、最大値、中央値、幾何平均など、用いる値によって結果が大きくかわる可能性が高い。少なくとも、資料には下表に示されている程度の統計量を表示すべきである。


出所)落合透, 武田聖司, & 木村英雄. 2009..生物圏評価のための土壌から農作物への 移行係数に関するデータベース 日本原子力研究開発機構

2)感度分析の必要性
このようにパラメータの不確実性がある場合には、それらの値を変更したときにアウトプットがどの程度変化するのかを調べるべきである。このような作業は「感度分析」と呼ばれる。
パラメータの明示、それらを変化させたときの最大のリスクを明示した上でリスクもしくは基準値を決定すべきである。


蛇足?)パラメータの算出について
核種の対Cs137濃度比については、下記のような図が掲載されている。測定値を用いてその「傾き」から推定しているようにみえる。図にみられるようにこれらについては、あきらかに回帰モデルとしては不適切(最小二乗になっていなさそう)である。が、本文を読むと、比が最大になるものを用いたとあるので、回帰分析の結果ではなく、比が最大になる点のデータを用いているのだろう。
そうであれば、このような直線は不要である。いったい何を意味する直線なのだろうか?

出所)食品の基準値導出について(pdf)

追加)上記2点について担当者に問い合わせ。幾何平均について、文章からは上記のように解釈したが、担当者はその文章の上の4つの機関の最大値をというのもかかる=個別作物ごとには4機関のうち最大値を用いる。それを大分類にくくるときに幾何平均した。と解釈しているよう。感度分析したのか、あわせて確認依頼中。
いずれにしてもパラメータの基本になる情報は明示すべきである。

問い合わせへの返答) 私の記憶の中なので趣旨。
(担当課員) 担当した委員に確認したところ、ばらつきが大きいので確かに最大値を用いると大きな値になる可能性もある。そのため、幾何平均を用いている。それはよく用いられている妥当な方法である。
 感度分析はたしかに重要だが、パラメタが多数あるので、するかしないか検討が必要。
 10倍ぐらい値を振ってみたが規制値には大きな影響はなかった。
(私)重要な問題なのでそのエクセルシートの公開が必要なのではないか。
(担当課員)そのとおりであるが、公開はしていない。
   感度分析の必要性などについても検討したい。
(私)具体的に検討するとしたらいつになるか? 
(担当課員)検討したい。
ということであった。移行係数は上にあるように10^4オーダーの違いがあるので、10倍では不十分であるが、自前ですべて計算するのはなんなので、どうするかな。


1)パラメータの設定の続き
 同pdfの図1では土壌から農作物への移行しか考えていないが、大気中から直接表面に付着する。といった経路も無視できないはず。
 さらに、内部被曝線量係数(同pdf p.22 下に引用)は放射性物質の量を身体への影響に換算する重要な係数。ICRP72の値を使っている。年齢別だが男女別には値が設定されていない。
 被爆者データの固形ガン死亡率データ(Preston et al. 2003)では、30代での被爆者と比べると10代未満のリスク(ERR)は2.5倍になる。また、全体平均では0.47だが、男女別では女性の方が高くなる。しかし下記にあるように、男女別の値も設定していない。また年齢別にみても子供のリスクが過小評価されているようにみえる。
 (ICRP72ではもしかするとリスクの高い女性を想定しているのかもしれない。また、体内を要素に分割していじいじして計算するよう。これらは要確認)。
 いずれにしても、重要な問題なのでデータシートは公開してもらいたい。
出所)食品の基準値導出について(pdf) p.22

2012年2月6日月曜日


東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会 中間報告への意見 (2012/1/25ごろ送信)

全体的に
 東京電力からの報告書と内容、論調は類似している。
 同じ現象、データを分析しているので、そうなるのは仕方ない部分もある。た
だし、事故の当事者からの情報ばかりでなく、同様の解釈をしている。以下の点を望む。

 当時者からの情報をまずは報告書に盛りこむこと
 東電からの解釈をそのまま繰り返すのではなく、批判的にまとめること。
 地震による配管への影響がなかったと今の時点で断定すべきではない。

以下、報告書ページ番号  ③ 国民が持っている疑問に答える(納得性)。  地震による配管への影響はなかったのか? を追加すべきである。  原子力災害本部による報告書(原子力災害対策本部 2011a,b)、IAEA(IAEA 2011)、東京電力の報告書(東京電力 2011)などによると、地震での重大な損傷はなく、その後の津波によって電源喪失が生じたことが原因であるとしているようである。  しかし、東京電力の日誌(白板を撮影して文字起こししたもの)をみると 、例 えば1号機だけでも「14:58 M.COND真空破壊」「15:06 純水タンク・フランジ部(腕3本)漏洩確認」とある。また、日誌には入力されていないが白板には「15:20電機ボイラー蒸気漏れ」が報告されている 。柏崎刈羽発電所でも震度6強の地震によって3,000を超える大小の障害が生じた。現在、事故調査委員会 による検証が進行中であり、安易に津波を原因と結論づけるべきではない 。 東京電力「東北地方太平洋沖地震発生当時の福島第一原子力発電所プラント データ集 4.運転日誌等 1・2号機 p.16」  http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/plant-data/f1_4_Nisshi1_2.pdf さらに Jnesの解析でも配管に0.3cm3分の亀裂が入った場合のシミュレーション結果と「有意な差はない」としている http://www.nisa.meti.go.jp/shingikai/800/28/004/231209-3-2.pdf ⑦ 起こった事象の背景を把握する。  これに関しては、6章 規制や基準設定に東京電力をはじめとした事業者の影響があったのではないか。検討すべきである。
例えば 平成23年度 原子力土木委員会  の下に
津波評価部会
活断層評価部会
構造健全性評価部会
地下環境部会
津波評価部会
津波評価部会委員名簿
原子力発電所の津波評価技術
確率論的津波ハザード解析
などがある。 その委員名簿も掲載すべきである。みてみると、下記の通り。
http://committees.jsce.or.jp/ceofnp/list_23
顧問 駒田 広也 (財)電力中央研究所
委員長 当麻 純一 (財)電力中央研究所
幹事長 大友 敬三 (財)電力中央研究所
委員 赤松 英樹 東京電力(株)
委員 井上 大栄 (財)電力中央研究所  
委員 梶田 卓嗣 九州電力(株)
委員 金谷 賢生 関西電力(株)
  以下省略
 以下、電力会社およびその出資による電中研のメンバーが並んでいる。中立な
検討がされてきたとは考えにくい。このような基準設定のありかた自体も問題にすべきである。
・そもそもの原子力発電所の設置として、  同じ場所に6基  原子炉建屋内に使用済み燃料プールを設置  かつ重量物である燃料ブールを高所に設置  3号機と4号機を配管でつないだために3号機から4号機に水素がまわり爆発  など、  というリスク分散の発想がまったくない設計になっていたことも大きな誤り。  確率安全評価の際も 例えば同じカ所にn基設置されていた場合には事故発 生の確率は少なくとも(n/p)とすべきであった。 ・原子炉を廃止にする基準の不在  日本で廃炉されたのは東海、浜岡1号のみ。F1のような老朽炉はそもそも廃炉 にすべきであった可能性が高い。  廃炉にする基準がないことも背景として重要である。 ・情報公開の問題も指摘すべきである。  SPEEDI メルトダウン  最悪シナリオ   など国によるもの  東電によるもの   情報公開がされなかったことによって大きな不信、問題が生じている。この 点に言及すべきである。 ・原子力行政の縦割りの弊害  商用炉は経産省  研究炉は文科省  モニタリングは文科省  労働者については厚労省   など縦割りになっており、例えばJCOの事故時への対応などが共有されてい なかったのではないか。   ⑤ 責任追及は目的としない。  この委員会ではそうかもしれないが、原因を明らかにしたならば、責任追及は 別の機関で行うべきであることは明示すべきである。 ⑥ 起こった事故の事象そのものを正しく捉える。  委員のみの解釈ではなく、国民が判断できるようにヒアリングなどの議事録 も公開すべきである。もちろん社員名を必ずしもだす必要はない。   ⑧ 再現実験と動態保存が必要である。  動態保存  現場を保存、監視すべきである。  Web カメラで遠くからみているだけであり、1号機はカバーされてしまった。  さらに、4号機の壁が崩されていることなど、現状が保存されているとは言い がたい。委員会のみならず報道陣など含めて現場の撮影はしておくべきである。 ・その他
 津波の構造物への影響
 上空からの写真をみると海側の建物は津波後もさして破壊されていない。こ
のことをどう考えるのか。津波による原子炉、主要設備への影響を過大評価して
いるのではないか。
  
他の事例との比較
 柏崎刈羽も地震で4000弱の不適合(うちAs 10件)が生じた。それよりも古い
F1でも機器への損傷があった可能性を否定できるはずはない。
http://www.tepco.co.jp/nu/kk-np/incomp/2011/data/ruikei2312.pdf

・報告書の体裁など 資料も 巻末ではなく本文に入れるべき。 ・事務局のかかわりについて
 報告書は各省庁の担当者からなる事務局によるものと考える。事務局のメン
バー、特に報告書をまとめた者の氏名、所属も明記すべきである。

以上

2012年2月5日日曜日

乳及び乳製品の成分規格等に関する省令 へのパブリックコメント(2012/2/4送信)


1.子供への影響を考慮した規制値の設定について
これまでの知見(参考資料参照)からすると子供のリスクは大人の3-10倍となる。また、年間被曝量1mSv程度の原発労働者の分析でも固形ガン死亡リスクが上昇することが見いだされている。
これらはいずれも外部被曝に注目したものであり、食 品による内部被曝は、さらに重大な影響を与える可能性がある。これらから、子供の年間被曝量を1mSvに押さえ るという基準は甘すぎる。
少なくとも、水と同じ1/10mSv程度に抑えておく べきである。 そうすると、いずれの食品についても、提案された値の1/10=5Bq/kg程度とするのが妥当である。

2.関連法体系の整備
規制値にのみ言及しているが、食品衛生法では
http://www.houko.com/00/01/S22/233.HTM
表示、監視、検査、罰則について規定している。
放射線という特殊な状況であるため、今回の基準が達成されているかを監視、検査する体制を事業者等に課すべきである。 特に表示については義務化させることが望ましい。

参考資料
・被爆者データの分析
・固形ガンによる死亡リスク(ERR)
 0-9才で被曝した者は成年で被曝した者の2.5倍 (下記Fig3)
Preston et al. (2003), "Studies of mortality of atomic bomb survivors. Report 13. Solid cancer and noncancer disease mortality: 1950-1997," Radiation Research, 160 (4), 381-407.

・同、 罹患リスク  
(0-9才) のデータは公開されていないが、 10代で被曝すると ERRは3倍 程度(下記Fig4)
部位別にみると膀胱ガン1.32  甲状腺1.2 その他 1.65 と極めて高くな る(TABLE 11)。言うまでもなく死亡数よりも罹患数の方が多い。
Preston et al. (2007), "Solid Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors: 1958–1998," Radiation Research, 168 (1), 1-64.

・白血病
年齢別の推定値ではないが、白血病全体で1.55  CMLでは6.39に達する。
Richardson et al. (2009), "Ionizing radiation and leukemia mortality among Japanese Atomic Bomb Survivors, 1950-2000," Radiation Research, 172 (3), 368-82.

100mSv以下では不確実だという言明が流通しているが、上記論文ではいずれ も線形仮説(もしくは2次項を導入したもの)を支持している。

・平成22年3月 原子力発電施設等放射線業務従事者等に係る疫学的調査
この調査の対象の原発従事者の一人当たりの平均累積線量は13.3mSv(報告書 p.32合計列によれば10年以上勤務はこのうち28.2%)。
概ね年間1mSv程度を被曝。
それでも、 全新生物、肝臓がん、肺ガン、非ホジキリンパなどでは被曝量とと もに、死亡率は上昇。労働者は当然、成年以上で有り、子供への被曝の影響はさら に大きくなると推測するのが妥当。
以上

2012年2月1日水曜日

低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書 の問題点 その(1)


1.はじめに
 (低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ, 2011)が提出した報告書(以下WG報告書)には、さまざまな問題があるが、ここでは「2.1 現在の科学でわかっている健康影響(1)低線量被ばくのリスク」の問題点を指摘する。

2.同報告書の記述

・「低線量被ばくによる健康影響に関する現在の科学的な知見は、主として広島・長崎の原爆被爆者の半世紀以上にわたる精緻なデータに基づくものであり、国際的にも信頼性は高く、UNSCEARの報告書の中核を成している。
)広島・長崎の原爆被爆者の疫学調査の結果からは、被ばく線量が100 ミリシーベルトを超えるあたりから、被ばく線量に依存して発がんのリスクが増加することが示されている[](同報告書, p.4,下線は引用者による。)
  
 ここで引用されている[1]とは下記の論文である。
 Preston, DL, Y Shimizu, DA Pierce, A Suyama, and K Mabuchi (2003), "Studies of mortality of atomic bomb survivors. Report 13. Solid cancer and noncancer disease mortality: 1950-1997," Radiation Research, 160 (4), 381-407.

3.上記部分の問題点
 この部分について、(1)初歩的な誤り、(2)低線量での線形仮説を支持する研究結果の無視の無視、(3)その他のガン、ガン以外の疾病の無視、(4)罹患(発症)の無視という4つの問題点を指摘する。

(1)初歩的な誤り
 WG報告書では「発がんのリスク」とあるが、上記の(Preston et al.  2003)はタイトルにあるよう「発ガン(罹患)incident[1]」ではなく、mortality(死亡率)を分析している。incidentの分析を行ったのは1958–1998年のデータを用いた(Preston et al., 2007)である。後述するようにガンに罹患した者の一部が死亡するので、母数としても、また過剰相対リスクも罹患の方が大きい。発ガン(罹患)と死亡の区別は明確に行うべきである。

(2) 線形仮説を支持する研究結果の無視
 WGが引用した(Preston et al., 2003)は、以下に紹介するように100mSv以下までを含む閾値なしの線型モデルが適切であると結論づけている。つまり、「被ばく線量が100 ミリシーベルトを超えるあたりから、被ばく線量に依存して発がんのリスクが増加する」という閾値を想定した報告書の記述は誤りである。

 以下、(Preston et al., 2003)の結果、関連研究を紹介する。彼らは、次式のポアソン回帰によって分析した。 
λ0(s,a,e)[1+ρ(d) ks exp(θe+γlog(a))]
 ここで、λ0はベースラインであり、性別s、被爆時年齢a(調査時)到達年齢eの関数である。被曝量dについては、放射線の影響が直線的なのかを確認するために以下の5種類の定式化を行った。

 線量にかかるパラメータβは「過剰相対リスク (excessive relative risk)」と呼ばれ、被曝量が1Sv増加したとき増加する死亡数の割合を示している。以下、このパラメータのことをERRと表示する。

 推定した結果、単純な線形の関数を否定する証拠は得られなかったとしている[2]。下の図は線形モデルの推定結果とノンパラメトリックな推定値をあわせて示したものである。線型モデルの傾き、つまり過剰相対リスクERRは0.47であり、1Sv被曝すると(死亡者のうち)固形ガンで死亡する者の割合が(被曝しない者と比べて)47%増加することを意味する。
 ノンパラメトリックな推定値(黒い点)をみると2Svを越える部分で平坦になる傾向があるが、直線からの乖離は統計的には有意ではないとしている。さらに、低線量部分では、黒い点が直線よりも上に来ておりリスクが高いようにみえる。このため、被曝量0.12Sv(120mSv)以下のサンプルに限定して推定したところ過剰相対リスクERR=0.74となった[3]。ただし、90%信頼区間は(0.1,1.5)であり、全領域を用いた推定値0.47をこの区間に含んでいる。このため、全体の傾向と有意に異なるとはいえず、ある線量を超えると急に傾きが変化する「閾値」があるとはいえないとしている[4]
図表 被曝線量-反応関数の定結果(固形ガンでの死亡)
直線:線型モデルでの固形ガンによる死亡の推定結果
:ノンパラメトリック推定値
出所) (Preston et al., 2003) Fig.2

 (Preston et al., 2003)は死亡について分析したが、(Preston et al., 2007)は、寿命調査 がん「罹患」率データ(1958-1998)を用いて同様の分析を行った[5]。固形ガンについて、非線形パラメータγは有意ではなく、線形モデルがよくあてはまるとしている[6]。さらに0から0.15Gyの区間で推定しても有意な線量パラメータが得られ、この低線量領域における傾向は全領域での傾向と一致していたという[7]。参考までにいくつかの閾値を仮定して閾値モデルを推定したところ0.04Gyとしたモデルのあてはまりが最良であった。ただし、モデルのあてはまりは線形モデルの方が良好であった[8]
図表 被曝線量-反応関数の定結果(固形ガンの罹患)1958−1998
太い実線は、被爆時年齢30歳の人が70歳に達した場合に当てはめた、男女平均過剰相対リスク(ERR)の線形線量反応を示す。太い破線は、線量区分別リスクを平滑化したノンパラメトリックな推定値であり、細い破線はこの平滑化推定値の上下1標準誤差を示す。

 この他、これらよりも古いデータを用いているが(Pierce, et al., 1996; Pierce & Preston, 2000)でも低線量領域で被曝によってガンによる死亡、罹患率が有意に増加することを見いだしている。
 なお、これらの研究は複数のモデルをあてはめているものの、モデル全体の適合度指標が明示されていないという問題がある[9]。これに対して、(Richardson et al., 2009)は、白血病について同様の分析を行い、AIC(赤池の情報量基準)によってモデル選択を行った。この結果、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性については線形モデル、急性急性骨髄性白血病、白血病全体については1次および2次の項を導入したモデルのあてはまりが最良であったという。つまりいずれについても閾値モデルは採用されていないのである。

 WGの会合に専門家として招待された児玉和紀氏(放射線影響研究所主席研究員)はこの(Preston et al., 2007)の共著者である。しかし、同WGの報告では、上記のグラフを引用しつつも低線量での影響があることを示すものではないとしている[10]

(3)その他のガン、ガン以外の疾病の無視
 これらは固形ガン全体についての分析結果だが、(Preston et al., 2003)14部位別の推定を行い、10部位について正で有意なパラメータが得られている (下の図参照)。最もリスクが高い膀胱bladderガンでは症例数は少ないもののERR=1.25程度となっている。

図表  部位別の過剰相対リスク(死亡)
は点推定値、線は95%信頼区間。
出所) (Preston et al., 2003) Fig.4に加工。

 さらに、彼らは心臓病、脳卒中、呼吸器疾患などによる死亡についても推定した。その結果、ERR0.14前後と低いものの正で有意な値が得られている。
 また、(Richardson et al., 2009)は白血病について推定し、症例数は少ないものの[11]慢性骨髄性白血病で6.39、急性リンパ性で3.7、白血病全体でも1.55という有意な推定値を得ている。

 放射線による影響は成長の阻害など多岐にわたる(放射線影響研究所, 2007)WGは固形ガンによる死亡のみに注目しているが、他のリスクについても注目すべきである。

(4)罹患(発症)の無視
 ここまでは「死亡」に注目したが、罹患してから死亡するのであって、罹患の方が症例数が多く、統計的検定力が高まることが期待される。(Ron et al., 1994)によると、1987年時点のデータで固形ガンの罹患数8,612件、死亡数は6,887件が登録されていた。それぞれについて推定し、死亡のERR0.47であるのに対して、罹患のERRの方が0.65と高いことを示した[12]。彼らは部位別にも推定しているが、多くの部位で死亡率よりも罹患率のERRの方が高くなっている。

 なお、死亡については(Preston et al., 2003)、罹患については(Preston et al., 2007)の方が後に行われたため、症例数も多い。それぞれ固形ガンについてのERRを0.47/Sv0.47/Gyと推定している。ただし、線量について前者はDS86、後者はDS02を用いているため直接の比較はできない。これについて(Preston et al., 2004)は、固形ガンによる死亡について、それぞれの線量を用いたERRを推定した。DS86では0.45/SvDS02では0.42/Svであり、後者の方が値を低めに評価する傾向がある。線量評価方法が異なるが数値が同じということは、DS02を用いた罹患率の方がERRが高いことを示唆している。
 このように、罹患率の方が症例数が多いだけでなく、過剰相対リスクも大きいのである。死亡にのみ注目すべきではない。

4. まとめ
 ここでは、WG報告書「2.1 現在の科学でわかっている健康影響(1)低線量被ばくのリスク」の問題点を指摘した。同報告書では、広島、長崎の被爆者データの信頼性が高いといいつつも、「低線量での線形仮説を支持する研究結果の無視」「その他のガン、ガン以外の疾病の無視」「罹患(発症)の無視」といった問題を指摘した。死亡だけでなく罹患すること自体もリスクであること、ガンだけでなく他の疾病もリスクであることを考えると、これらを無視しているWG報告書はリスクを低く評価しているといわざるを得ない。

 WG報告書では次の節で長期的な被曝のリスクについての知見を紹介しているが、国内外の原子力・核施設従業者調査の結果を無視している。さらに、ここで引用した研究群についても、低線量に限定して分析することや、ほとんどの研究で複数のモデルを推定してもモデル選択の統計量が示されていないこと、相関の高い線量の1次項と2次項を同時に入れて推定していること、さらにはモデルそのものの定式化など、方法論的な問題がある。これらについては、別の機会に報告する[13]

参考文献
Hamaoka, Y. 2011. A Search for Better Dose-Response Function. Paper presented at the 14th International Congress of Radiation Research, Warsaw, Poland.
Pierce, D. A., & Preston, D. L. 2000. Radiation-related cancer risks at low doses among atomic bomb survivors. Radiation Research, 154: 178-186.
Pierce, D. A., Shimizu, Y., Preston, D. L., Vaeth, M., & Mabuchi., K. 1996. Studies of the mortality of atomic bomb survivors. Report 12, Part I. Cancer: 1950-1990. Radiation Research, 146: 1-27.
Preston, D., Shimizu, Y., Pierce, D., Suyama, A., & Mabuchi, K. 2003. Studies of mortality of atomic bomb survivors. Report 13. Solid cancer and noncancer disease mortality: 1950-1997. Radiation Research, 160(4): 381-407.
Preston, D. L., Pierce, D. A., Shimizu, Y., Cullings, H. M., Fujita, S., Funamotoa, S., & Kodama, K. 2004. Effect of Recent Changes in Atomic Bomb Survivor Dosimetry on Cancer Mortality Risk Estimates. RADIATION RESEARCH, 162: 377-389.
Preston, D. L., Ron, E., Tokuoka, S., Funamoto, S., Nishi, N., Soda, M., Mabuchi, K., & Kodama, K. 2007. Solid Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors: 1958–1998. Radiation Research, 168(1): 1-64.
Richardson, D. B., Sugiyama, H., Nishi, N., Sakata, R., Shimizu, Y., Grant, E. J., Soda, M., Hsu, W. L., Suyama, A., Kodama, K., & Kasagi, F. 2009. Ionizing radiation and leukemia mortality among Japanese Atomic Bomb Survivors, 1950-2000. Radiation Research, 172(3): 368-382.
Ron, E., Preston, D. L., Mabuchi, K., Thompson, D. E., & Soda, M. 1994. Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors. Part IV: Comparison of Cancer Incidence and Mortality. Radiation Reseach, 137: 98-112.
低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ. 2011. 低線量被ばくのリスク管理に関するワーキンググループ報告書: http://www.cas.go.jp/jp/genpatsujiko/info/news_111110.html.
放射線影響研究所. 2007. 放射線影響研究所要覧 http://www.rerf.or.jp/shared/briefdescript/briefdescript.pdf.




[1]放射線影響研究所では、incidentの訳として罹患()という語を用いている。なお、罹患と死亡のリスクを比較するには絶対リスク評価の方がわかりやすいが、WG報告書で扱われている相対リスクに注目してコメントする。
[2] "There is little evidence against a simple linear dose response, with the only apparent curvature being a flattening for those with dose estimates above 2 Sv that is not statistically significant (. 0.5). ,(Preston et al., 2003, p.386)"
[3] このように分析範囲を限定すると推定値の標準誤差が大きくなり、係数が0であるとい帰無仮説が棄却されにくくなるという問題がある。範囲設定の任意性も問題である。これらについては別の機会に論ずる。
[4]Direct assessment of the radiation-associated solid cancer risks at low doses in the LSS indicates a statistically significant increase with dose when analysis is restricted to survivors with dose estimates less than about 0.12 Sv. The ERR per Sv estimate over this range is 0.74 (90% CI 0.1; 1.5). There is no indication that the slope of this dose–response curve over this low-dose range differs significantly from that for the full range (P . 0.5) and no evidence for a threshold. ,(ibid., p.386)”
[5] Preston et al.. (2003)では線量についてDS86が用いられたが、Preston et al.(2007)ではDS02という修正された方法が用いられている。このため推定値については直接の比較はできない。また、被曝量の単位についても前者ではSv、後者ではGyが用いられていることに注意。Preston et al.(2004)によると、固形ガンのERR(男女平均)DS86では0.45/SvDS02では0.42/Svとされている。
[6] "The circles indicate the ERR at the mean dose in each of 22 specific dose categories. It can be seen that the linear dose response fit the data well. There was no significant linear-quadratic non-linearity in the dose response over the 0- to 2-Gy dose range (P=0.09). (Preston et al., 2007,p.10)"
[7] “There was a statistically significant dose response in the range of 0–0.15 Gy (P=0.06), and the trend in this low-dose range was consistent with that for the full dose range (P >0.5). (ibid., p.10)”
[8] “Based on fitting a series of models with thresholds at the dose cutpoints in the person-year table, the best estimate of a threshold was 0.04 Gy with an upper 90% confidence bound of about 0.085 Gy. However, this model did not fit significantly better than a linear model. (ibid., p.10)”
[9]全般的にモデルに投入したパラメータの推定値、統計検定量などが明示されていないという問題がある。
[10] 児玉和紀「原爆被爆者における低線量被ばくの影響
[11] Preston et al.(2004)も白血病の推定を行ったが、なぜかERRではなくEARモデルのみを用いている。
[12] 線量はともにDS86である。
[13] Hamaoka(2011)ではポアソン回帰だけでなく、負の二項分布、zero-inflatedモデルなどを適用した。

2012年1月23日月曜日

放射線影響研究所のデータについて


  • 下記に示すようにデータが公開されているので、自分で再分析している。そのためにまとめている、各データの特徴、findings。



    • ここには(広島、長崎被爆者)寿命調査(Life Span Study)以外の分析結果も含まれている。
    • 寿命調査については、1998年までのデータの分析結果が中心
  • 結果についての私見
    • 冗長になるのではじめに個人的な見解をまとめておく。以下に示されている事実を放射線影響研究所の(自称?)専門家はなぜ明示しないのか?
      • 参考)目立つところで下記のWG
      • 子供ほど影響される。
        • 例 固形ガンの過剰相対リスク(ERR)は30才で被曝した場合の2.5倍(Preston et al.,2003)。下記の図2参照。
      • ガンによる「死亡」よりも「罹患」に対して放射線は影響を強く与える。
        • 固形ガンについての死亡の分析結果ERR=0.47が多いが、罹患だとこれが0.67に上昇(Ron et al. 1994)。ガンで死亡する前に罹患する。罹患を無視すべきではない。
      • 白血病の無視
        • 白血病だと発症数は少ないもののERRの値は高い。白血病全体で罹患のERRは3.9。急性リンパ白血病のERRは10.3(Preston et al.1994)
      • ガン以外の疾病への影響もある。
        • 上記の概要にあるように、ガン以外の疾病、発育、知能などへの影響があることも判明している。
      • 喫煙による影響と比較する。
        • 喫煙を考慮した分析でも被曝の影響は有意である。喫煙は自分で好んでするもの。否応なく被曝させられた者のベネフィットなしのリスクと比較すること自体が無意味。ついでにいえば、喫煙と放射線の交互作用は9と大きい( Furukawa et al.2010)
      • 閾値モデルは支持されていない。
        • 以下に紹介するように 線量の1次項のみ、2次項のみ、1次+2次、ノンパラ、閾値モデルで推定され比較されているが、閾値モデルが支持されたものはない。
      • 100mSv以下でも有意になるという研究はある(Pierce and   Preston 2000)。13報(Preston et al., 2003),でも10mSv以下に限定して分析した場合のERRのp値は0.15。慣習でp=0.05もしくは0.10が用いられているがこれらはあくまで慣習。AICなどより正確な判定をすべきである。
        • 100mSVの領域は不明である、というべきではない。不明な場合にはリスクを重視すべきである。
      • 被曝(したことによる)ストレスによる影響を指摘する者もいるが、そのような分析は下記の文献および上記の概要にも示されていない。証拠のともなわない議論はすべきではない。
      • これ以外にも原発従業者をはじめとした低被曝データで、線量が有意になる例も見いだされている。それらに言及しないのはなぜか?


2)寿命調査データ
    • ここから必要なものを選んで住所などを入力するとダウンロードできる。
      • 公開されているのは寿命調査のみ。その一部の方を対象とした健康調査(喫煙なども質問)も行われているが、データは公開されていない。
    • コホート(年齢、性別、被爆地など)に集計されているので、それを踏まえた分析が必要。
  • 公開されているデータは下記の特徴の組み合わせ
  • 罹患率 incidenceか死亡率 mortalityか
    • 罹患して死亡されるので、罹患率の方がベースラインの割合は高くなる。
  • 死因、原因
    • ガン cancer
      • 固形ガンsolid cancer/白血病 leukemia
    • ガン以外 non-cancer
  • 線量評価方法 DS02 - 用語集 - 放射線影響研究所
    • T65DR 
    • DS86
    • DS02
  • 分析対象
    • 原爆投下時市外にいた方をどう扱うか。
    • 4Gy以上をどう扱うか。
3)分析について
  • 外部比較
    • 被爆者以外との比較 下記の研究ではされていない。
  • 内部比較
    • Epicureというソフトを用いて分析しているが、基本はポアソン回帰モデル。
      • ベースとなる死亡率*(γ*d)
    • のようなモデルを推定。dは被曝線量。上式のγが正で有意ならば、被曝線量とともに死亡率が増加するということになる(厳密には因果ではないが)。
    •  上記では線形を仮定しているが、下記のような定式化をして比較しているものもある。
      • γ1*d+γ2*d^2
      • 線量カテゴリダミーを用いる。
      • β(d-d0) としてd<d0のときには0とする閾値モデル
  • 最近の論文ではベイズ推定もされていたような気がするが見失ってしまったので下記には含まれていない。
  • 健康調査と組み合わせて、特に喫煙を考慮した分析も行われている。


4)各データのダウンロード先へのリンクと主要な結果。括弧内はファイル名。
  • 以下特に記さなければ過剰相対リスクの線量反応関数の推定結果(上式のγ:ERRと表記。研究によっては%で表示されているものもあるが割合にした(例 10%=0.1)。また、この人たちはGyを用いることが多いがそんなにはかわらないので、Svで示した。
  • 寿命調査第10報 がん死亡率データ、1950-82年 (r10cancr.dat)
  • 寿命調査第11報 死亡率データ、1950-85年 (急性影響について分類した死亡率データを含む)  (cmds86.r11) 線量はT65DR
  • 寿命調査 がん罹患率データ、1958-1987年  (tr87data.dat  ds86adjf.dat  hema87.dat) 線量はds86
    • Preston, Dale L. , Shizuyo Kusumi, Masao Tomonaga, Shizue Izumi, Elaine Ron, Atsushi Kuramoto, Nanao Kamada, Hiroo Dohy, Tatsuki Matsui, Hiroaki Nonaka, Desmond E.  Thompson, Midori Soda, and Kiyohiko Mabuchi (1994), "Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors. Part Ill: Leukemia, Lymphoma and Multiple Myeloma, 1950–1987," Radiation Reseach, 137, S68–S97.
      • 1950-87データ白血病などの罹患について分析。concave upward(上に反った非線形な関係)。白血病全体ではERR=3.9.急性リンパ白血病Acute Lymphocytic Leukemiaでは10.3。
  • 寿命調査第12報 死亡率データ、1950-1990年 (第1部: がん、第2部: がん以外) (r12canc.dat r12leuk.dat) 線量はDS86
    • Preston, Dale L. , Shizuyo Kusumi, Masao Tomonaga, Shizue Izumi, Elaine Ron, Atsushi Kuramoto, Nanao Kamada, Hiroo Dohy, Tatsuki Matsui, Hiroaki Nonaka, Desmond E.  Thompson, Midori Soda, and Kiyohiko Mabuchi (1994), "Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors. Part Ill: Leukemia, Lymphoma and Multiple Myeloma, 1950–1987," Radiation Reseach, 137, S68–S97.
      • 1950-87データを用いて白血病について推定。白血病全体では線量の1乗項だけでなく2乗項も有意。つまり上に反った形の線量反応関数。
    • Ron, Elaine, Dale L.  Preston, Kiyohiko Mabuchi, Desmond E.  Thompson, and Midori Soda (1994), "Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors. Part IV: Comparison of Cancer Incidence and Mortality," Radiation Reseach, 137, 98-112.
      • ガンの罹患と死亡について過剰相対リスクを推定。(罹患して死亡するので、ベースラインは罹患率の方が高いのが当然だが)、過剰相対リスクも罹患率の方が高い。
      • 例)全固形ガン 罹患率 ERR=0.65   死亡率 ERR=0.47
    • Pierce, D.A., Y. Shimizu, D.L.  Preston, M. Vaeth, and K. Mabuchi. (1996), "Studies of the mortality of atomic bomb survivors. Report 12, Part I. Cancer: 1950-1990," Radiation Research, 146, 1-27.
    • Shimizu, Y, DA Pierce, DL  Preston, and K Mabuchi (1999), "Studies of the mortality of atomic bomb survivors. Report 12. Part II. Noncancer mortality: 1950-1990," Radiation Research, 152 (4), 374-89.
  • 寿命調査第13報 がんおよびがん以外の疾患による死亡率データ 1950-97 (R13mort.dat) 線量はDS86
      • Preston, DL, Y Shimizu, DA Pierce, A Suyama, and K Mabuchi (2003), "Studies of mortality of atomic bomb survivors. Report 13. Solid cancer and noncancer disease mortality: 1950-1997," Radia Res, 160 (4), 381-407.(公開されている報告書では最新の結果なので引用されることが多い)。
        • 固形ガン全体についてのERR=0.47/Sv。線形性を疑う推定結果は得られなかった:Fig2。
        • "There is no indication that the slope of this dose–response curve over this low-dose range differs significantly from that for the full range (P . 0.5) and no evidence for a threshold.(p.396)"
        • 被曝時年齢が若いほどリスクが高い(Fig.3では30才で被曝した者の2.5倍:Fig3)
        • 部位別にも推定。最も高いBladderではERR=1.25(Fig4)。
        • 低線量での影響をみるために、分析する範囲を変更(Table 4)。下記のように、100mSv以下では有意ではなかった。
          • 0-5mSvを用いたときはERR=0.93(ただし標準誤差SE=0.85でp=0.15。5%水準で有意ではない)
          • 0-100mSvとしたときはERR=0.64(ただしSE=0.55でp=0.30:5%水準で有意ではない)。
          • 0-125mSvとしたときはERR=0.74(ただしSE=0.38でp=0.025:5%水準で有意)。
        • ガン以外についても推定。 ERR=0.14で有意であった。
    • DS02リスク推定:固形がんおよび白血病死亡率データ (DS02can.dat) 線量はDS86とDS02
        • Preston, Dale L. , Donald A. Pierce, Yukiko Shimizu, Harry M. Cullings, Shoichiro Fujita, Sachiyo Funamotoa, and Kazunori Kodama (2004), "Effect of Recent Changes in Atomic Bomb Survivor Dosimetry on Cancer Mortality Risk Estimates," RADIATION RESEARCH, 162, 377-89.
          • 1950-2000のデータを用いてDS86とDS02を用いたリスク推定結果を評価。大きな差はなかったという結論。死因については、全体、ガン、うち固形ガン/造血ガン/白血病の大分類。
        • 図1. DS02とDS86による白血病のノンパラメトリックな線量反応、1950-2000年。被爆時年齢20-39歳の人の1970年における男女平均リスク。
        • Richardson D, Sugiyama H, Nishi N, Sakata R, Shimizu Y, Grant EJ, Soda M, Hsu WL, Suyama A, Kodama K, and Kasagi F. (2009), "Ionizing radiation and leukemia mortality among Japanese Atomic Bomb Survivors, 1950-2000," Radiation Research, 172 (3), 368-82.
          • 1950-2000データで白血病による死亡を分析。
      • 寿命調査 がん罹患率データ、1958-1998年 (lssinc07.*) 線量はDS02
          • "当該データの公開準備を進める際、当該データセットの以前のバージョンでは被爆者の合 計遮蔽カーマ推定値が4 Gyよりも上か下かについての層化が正確に行われていないことが判 明した。以前に行われた解析ではこの因子を用いなかったため、症例数や人年に対するこの 過誤の影響はなく、リスク推定にもほとんど影響がないので、補正した人年表のみを公開し ている。補正したデータセットを公開することによって、ユーザーは希望すれば、高カーマ 群について自分で適切に層化(または無視)することが可能である。(同ファイルの説明)
        • Preston, D. L., E. Ron, S. Tokuoka, S. Funamoto, N. Nishi, M. Soda, K. Mabuchi, and K. Kodama (2007), "Solid Cancer Incidence in Atomic Bomb Survivors: 1958–1998," Radiation Research, 168 (1), 1-64.
          • 固形ガンについて閾値モデルを推定したら閾値は4mSvとなった。ただし線型モデルの方があてはまりは良好。0-150mSvの範囲で有意となった。
          • 放射線審議会での報告資料および下記のグラフを参照。
          • LSS集団における固形がん発生の過剰相対リスク(線量別)、1958-1998年。
          • 太い実線は、被爆時年齢30歳の人が70歳に達した場合に当てはめた、男女平均過剰相対リスク(ERR)の線形線量反応を示す。太い破線は、線量区分別リスクを平滑化したノンパラメトリックな推定値であり、細い破線はこの平滑化推定値の上下1標準誤差を示す。
          • 図2. 1 Gy被曝による固形がんの過剰発生リスクに及ぼす被爆時年齢ならびに到達年齢の影響。左図は過剰相対リスク(ERR)、右図は過剰絶対リスク(EAR)による表示。
        • Pierce, D.A. and D.L.  Preston (2000), "Radiation-related cancer risks at low doses among atomic bomb survivors," Radiation Research, 154, 178-86.
            • 2000年の論文なので上のデータとは若干異なり、1958-94のデータ。DS86を用いていると考えられる。0.5Sv以下、爆心地から3km以内の者に限定して分析。アブストラクトによると100mSv以下でも有意なリスクがあるという。
        • 寿命調査 循環器疾患死亡率データ、1950-2003  (lsscvd10.*) 線量はDS02
          • Shimizu, Yukiko, Kazunori Kodama, Nobuo Nishi, Fumiyoshi Kasagi, Akihiko Suyama, Midori Soda, Eric J Grant, Hiromi Sugiyama, Ritsu Sakata, Hiroko Moriwaki, Mikiko Hayashi, Manami Konda, and Roy E Shore (2010), "Radiation exposure and circulatory disease risk: Hiroshima and Nagasaki atomic bomb survivor data, 1950-2003," Bmj, 340.
            • 上のデータと健康調査を組み合わせて、喫煙などの影響も考慮した分析。
            • 8.6万人のコホートデータを用いたポアソン回帰。線形、2次項もいれたもの、閾値を入れたものβ(d-d0) としてd<d0のときは0 も推定。
              • Strokeについては2次項を入れたモデルのあてはまりがよい。参考までに線形モデルのERR=0.09
              • Heart diseaseについては線形モデルのあてはまりがよい。ERR=0.14。閾値モデルでもd0=0としたものが最良だった。
            • 1978年に行った5.2万人の健康調査から喫煙、飲酒、BMIなども取り入れて、個人レベルでハザード分析。上のサンプルの一部なのでERRは若干変わる。
              • StrokeのERR これらを考慮しない場合は0.081、考慮しても0.072
              • Heart diseaseのERR これらを考慮しない場合は0.122、考慮しても0.123とたいしてかわらない。ただし、これら交絡因子の影響の推定値は示されていない。
            • Discussionのあたりでは500mSV以下に限定すると有意ではなくなるので、低線量では不確実性が残るとしている。
          • 公開されているデータはこれが最新。寿命調査13報は上記のように2003年に公開された。それから8年経過するがまだ寿命調査14報は公開されていない。
          • 2012/4追記
            • 2012年に公開された。線量がDS02になり、Gyで扱われているが、結果について大きな変化はなさそう。
                   被爆者者の死亡率に関する研究、第14報、1950-2003 










        • 健康調査
          • いずれも肺ガンに喫煙の影響を取り入れたもの
            • Pierce, D.A., G.B.  Sharp, and Mabuchi.K. (2003), "Joint effects of radiation and smoking on lung cancer risk among atomic bomb survivors.," Radiation Research, 159, 511-20. 
            • Furukawa, Kyoji, Dale L. Preston, Stefan Lönn, Sachiyo Funamoto, Shuji Yonehara, Takeshi Matsuo, Hiromi Egawa, Shoji Tokuoka, Kotaro Ozasa, Fumiyoshi Kasagi, Kazunori Kodama, and Kiyohiko Mabuchi (2010), "Radiation and Smoking Effects on Lung Cancer Incidence among Atomic Bomb Survivors," Radiation Research, 174 (1), 72-82.


              • 1958-99の肺ガン罹患率に喫煙の影響を考慮した分析。喫煙と被曝量の交互作用を導入した一般化交互作用型のモデルがあてはまり最良。それによると、放射線のERR=0.59と有意(男性の方が0.9と高い)。これに対して、喫煙のERR=4.69/年50箱。これらの交互作用項は9.20

          5)感想など
          • 分析もしくは結果の見せ方の問題
            • モデルの説明変数には性別、都市なども入れてあるが、それらの推定値、検定結果などを示していない。
            • 複数モデルの適合度の比較を行い、例えば線形モデルが最良であったと記述されているが、Furukawa et al.(2010)を除くと具体的な適合度指標が示されていない。
            • 推定結果を文章の中に書くのではなく、表にまとめてもらいたい。
            • 分析のみで、例えば発症のメカニズムなどについての考察がない。
              • ICRR2011会議で、上記の児玉氏や若手の研究者に白血病では上に反った形状、固形ガンでは下にそった形状になるのはなぜか、と質問したが、両名ともメカニズムはわからないとのこと。
            • 高線量被爆者には若年層が多い。また、各セルには0が多いのでポアソン回帰が不適切になる可能性もある。といったことを考慮していない。
              • それを考慮したのが私の分析。
              • Hamaoka, Yutaka (2011), "A Search for Better Dose-Response Function," in 14th International Congress of Radiation Research. Warsaw, Poland.
                再推定なども行っているがそれは別途まとめる。











          2011年10月20日木曜日

          長期被曝による白血病死亡リスクのメタ分析  (



        • Daniels and
        •  Schubauer-Berigan 2011) ここから全文へリンク



        • 白血病(慢性リンパ性:CLLを除く)による死亡と放射線被曝量との関係をメタ分析した論文。以下はその概略。

          71の先行研究を見いだした。それらのうち下記4条件を満たしている23の研究についてメタ分析した。

          • (1)白血病(慢性リンパ性:CLLを除く)による死亡と放射線被曝量との関係を分析してある。
          • (2)データ収集が、コホート=同じ人々を長期的に観察する)もしくは、バイアスのないケースコントロール(発病した人についての情報を収集する)研究である。
          • (3)個人レベルの線量が測定されている。
          • (4)線量D-反応の係数が報告されている(RR=1+ERR(D))。

          23の研究一覧(リンク)のAverage doseが各研究の調査対象者の平均被曝量(γ線の場合1mGy=1mSvと考えてよい)。大きいものもあるが、ほとんど100mSvよりも大幅に低い)。
          Casesが白血病での死亡(もしくは発生)数。
          Effect size (ERR at 100 mGy)が、上記の線量-死亡数の係数。通常は死亡数/Sv で表示するが、 (ERR at 100 mGy)とあるので、この値は症例数/Svを10=100/1000で割ったものかもしれない。
           
          表にみられるように、研究によって値が異なるので、メタ分析した。その結果、超過リスク係数は0.19となった(95%信頼区間は 0.07 ~0.32つまり少なくとも5%水準で有意)

          なお、異なる研究が、同じ対象を分析していることもあるが、そのような重複も調整。さらに、公刊バイアス(効果が検出された論文の方が公刊されやすい)なども考慮しても有意であった。
          ちなみに日本の原爆被爆者データからの推定値は0.15であり、類似した値である。 (放影研 によるリスク推定値)


          参考)メタ分析
          上記にリンクした表のように、おなじような分析をしても、研究によって結果が異なることがある。それぞれ別に解釈するのではなく、それらの研究を総合して、結果をまとめるための方法。

          二つの研究の係数が下記の通りであったとする。

          研究1 係数 0.01  サンプル数 1000
          研究2 係数 0.1   サンプル数 500

          最も簡単なのは下記のようにサンプル数を重みとして係数を加重平均する方法。
          総合化した係数=(0.01*1000+0.1*500)/(1000+500)

          推定値の標準誤差(信頼区間)の情報がわかっている場合は、その逆数を用いる。

          この論文では、数式にあるように研究内での分散と研究間の分散の2乗和の逆数を用いている。

          さらに、各研究の係数を被説明変数として、研究の特徴をコーディング(この例だと原発労働者か、軍事核設備労働者か 加法モデルか乗法モデルか等)して説明変数、サンプル数もしくは推定値の分散の逆数を重みとした回帰分析を行うこともある。